依然コロナは猛威を振るっていますが、1,2年前よりは、皆さんの「心の抗体」が出来てきたのか、今年は旅行に出かける方が多いようです。
中には「2,3年ぶりにご実家に帰省する」という方もいらっしゃるでしょう。
さて、本日はズバリ「相続」のお話です。
夏休みや年末年始など、親、兄弟姉妹が集まるタイミングは「相続」について話し合う絶好のチャンスでもあります。
しかしながら、この話・・・
なかなか切り出すのが難しいテーマでもあるのです。
「お前、俺の財産をあてにしているのか?」
「私が死ぬのを待ってるの?・・・」
親御さんにそう思われてしまうのではないかと考え、何となく先延ばしになっている。
そんなご家庭も少なくありません。
「相続について、どうすれば上手く話せるか?」
そう相談されることも多いので、今回は「親への話し方」という点を考察していきたいと思います。
なお、本題に入る前に、そもそも論になってしまうのですが、
本当に相続税がかかるのか?
というチェックが意外と大事です。
子供世代が「相続税がかかる」と気に揉んでいても、いざ蓋を開けてみたら「全然かからなかった」ということも多く、勇気を振り絞って相続の話を切り出してみたら、結果、相続対策なんて全く必要なかった、というようことも少なくないのです。
注:「大丈夫だろう」と思っていて、実際にはもの凄い額の相続税金額が課税されたという「逆のパターン」もあります。
ここで抑えておきたいポイントは3つ。
1 相続税の配偶者控除
2 小規模宅地の特例
3 相続税の基礎控除
相続の話をする場合、最低でもこの3つの予備知識は学んでおきましょう。
本稿はそれぞれの詳細を解説するものではないので、詳しいことは専門サイトにお任せしますが、簡単に触れると、1の相続税の配偶者控除は、配偶者(お父さん死亡時のお母さん)が相続した場合、
1億6,000万円、もしくは法定相続分までは税金がかからない
というものです。
そのため、配偶者がいれば相続税は「かなり」安くなります。
2の小規模宅地の特例は、亡くなった方が遺した不動産(土地)に引き続きご家族(配偶者や子供)が居住していれば「その価値を最大80%オフにしてくれる」というもので、これを使えば相続税上のご実家の価値は大きくディスカウントされます。
そのため
「うちの実家。駅前で広いから2,3億円はするだろう・・・相続税大変だな・・・」
などと思っていても、この特例を使うことにより相続税がほとんどかからなかった、というようなことも結構あるのです。
最後の3は、相続税の基礎控除です。
中にはこれすら知らずに相続税を心配しているような方もいるので、念のため抑えておきます。
相続税には「基礎控除」というものがあり、次の式で計算します。
3,000万円 + 600万円×法定相続人
例えば、残されたご家族が、お母さん、子供2人だとすれば、
3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円
となり、相続財産が、これ以下の場合、税金はかからないということになります。
以上3つの制度。
1の配偶者控除、2の小規模宅地、3の基礎控除を利用すれば、市場価値では2,3億円の資産があるような方でも、実際には「ほとんど税金かからなかった」というようなこともあり得ます。
ここから、あることが言えますね。
それは、
「お母さんが生きているうちはゴチャゴチャ言わない方が良い」
ということです。
資産が10億円も20億円もあるというなら話は別ですが(このクラスなら、だいたいは税理士などがしっかり対策してます)、そこまでの規模でなければ、とりあえずお母さんさえいればそこまで心配することはありません。
このことを知らずに、相続の話を切り出すと、冒頭で述べたように
「お前、親の金をあてにしてるのか!!」
なんて叱責を受けることになりかねませんので、気をつけて下さい。
しかし、お母さんだけ(もしくはお父さんだけ)になってからは、要注意です。
俗に言う「二次相続」です。
配偶者控除がなくなり、更には子が遠いところに住んでいて、家を継げないような事情があれば、小規模宅地の特例も使えないので、相続のリスクが一気に増えます。
また、家族の「重し」である親がいなくなることで、兄弟姉妹の丸出しの欲が噴出し、揉める事例が増えるのも、この二次相続です。
このようなケースこそ、ちゃんと事前に話をし、何をどうするかあらかじめ決めておかないといけないのですが、では一体どのように話を切り出せば良いのでしょうか?
経験上、以下の4つが重要かと思います。
1 兄弟姉妹間で「検討する」ことの合意を取る
2 代表して誰かが親と1対1で話をする
3 その際、一般的な事例を挙げ、相続対策の必要性を説く
4 専門家に任し、出来れば遺言書を作る
まず、親御さんに何かを言う前に、兄弟姉妹間での合意を取っておいた方が良いです。
誰が1人が先行して相続の話を切り出すと、他の兄弟姉妹が「抜け駆けか?」と疑心暗鬼になり、その後、感情面でのシコリを残すことになりかねません。
資産家の場合、お子さん世代が「自分もそれなりには貰えるだろう」と思っている場合が多く、誰か1人が先走るとバランスが崩れてしまうのです。
そのため、兄弟姉妹の誰か(基本的には長男長女などの第一子の方がまとまる)が、他の兄弟に
「将来もめないために、そろそろ相続の話をしておきたい」
と話を通しておいた方が良いでしょう。
見落としがちですが、意外と大事な前処理です。
次に親御さんに話すタイミングですが、兄弟姉妹の代表者1人が「さり気なく」、「そういえば」という程度で話を始めます。
逆に一番良くないが、複数の兄弟姉妹で「母さん!!そろそろ相続を!!」と迫るようなやり方です。
このようなことをすると、親御さんの態度を硬化させかねません。
それに「子供たちのために資産を遺してあげたい」と思っているのに、まるでそれを急かされているようで、かわいそうでもあります。
相続の話は、死の話に直結することなので、やはりそこはオブラートに包んであげて欲しいところです。
ただ、実際にはこれが一番むずかしいし、度胸がいる場面ですね。
そこで、やや話しやすい方法としては、3の「一般的な事例」を用いることをお勧めします。
先輩や同僚など身近な人で「相続税が大変だった」、「兄弟間で揉めたらしい」などの例を世間話程度にして「兄弟姉妹で揉めたくないので、うちもちゃんと考えて欲しい」とお願いする流れです。
この方がやや言いやすいかもしれませんね。
そして、4専門家に任す。
はっきり言って相続対策は素人には無理です。
税金なら税理士、法律なら弁護士、その手前の各家族間の調整ならFP(ファイナンシャル・プランナー)など、どのタイプがハマるかはケースによっても異なりますが、まず軽い相談ならFPあたりが手軽で、そこから実務は税理士、弁護士などつなげていく方が良いかもしれません。
先の話の流れの中で「専門家を紹介されたので、一度会ってみれば?」と誘導し、それ以後は丸投げしてしまう方が良いでしょう。
あとは関係者の主張を整理しながら、よしなにやってくれます。
そして、出来れば全てのアウトプットとして遺言書、それも法的な効力が最も高い公正証書での遺言書として残しておくことがベストです。
なかなか重いテーマではありますが、大事なことでもあります。
もし気になっていらっしゃるのであれば、お盆に帰省した時などに話し合って頂ければと思います。
なお、私もFPとして数多くの事例に対応して来ました。
ご家族間の本音を引き出し、粘り強く利害調整するタイプです。
何かあればご連絡下さい。
ご連絡はコチラから
本日のコラムでした。
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