ワールドカップで選手が怪我をしたら誰が補償するのか?


やはり今週はこの話題に触れないわけにはいかない。

そう

2022 FIFAワールドカップ カタール

ドイツとスペインに挟まれ「死の組」と言われていたグループEにおいて、何と日本が首位通過。こんなこと、誰が予想していただろうか!!

「奇跡」に日本中が湧いている。

ワールドカップは、シーズンを通じて競われるクラブチームの試合より、一戦、一戦が重い。

予選リーグですら、たったひとつの勝敗、引き分けが運命を分け、実際あのドイツですら得失点差に涙を飲んだ。

そして、本戦に進めば、1回負ければそれで終わり。

そのため、国の威信、国民の期待を一身に背負う代表チームのメンバーは、プライドと誇りをかけ、全身全霊で戦う。

時にチームの勝利のために我が身を顧みずにプレーする姿に全世界が感動し、熱い視線を送る。

しかし、一部の業界の人だけは

「あんまり頑張り過ぎないで!!絶対怪我しちゃダメだからね・・・」

とヒヤヒヤしながら見守っている。

そう、保険業界だ。

理由はクラブチームがかける「貸出保険」

本日はそんな話。

まず、貸出保険の話をする前に、皆さんがお好きな「年俸」の話に触れておきたい。

ワールドカップに出るような選手は物凄い大金を稼ぐ。

日本代表だけでも、こんな感じ。

南野 拓実 ASモナコ       6億6,000万円

冨安 健洋 アーセナル        2億9,000万円

久保 建英 レアル・ソシエダ  2億6,000万円

柴崎 岳  レガネス        2億4,000万円

板倉滉   ボルシア           2億2,000万円

余談ながらドイツ戦、スペイン戦で同点ゴールを決めた堂安律選手は、9,700万円と意外と安い。

更に世界的なスーパースターともなると、

1位 クリスティアーノ・ロナウド 137億円

2位 リオネル・メッシ      121億円

3位 ネイマール         109億円

と桁違い。

なお、4位はキリアン・ムバッペの46億円で「ビック3」に比べると半分以下となるので、いかにこの3人が突出しているかが分かる。

これらの給料は各選手が所属しているクラブチームが負担しており、各国のサッカー協会は一円も支払っていない。

だが、それぞれの国のサッカー協会には「代表チームの招集権」がある。

実はこれが様々な問題を巻き起こす。

各国のサッカー協会、そしてその最高機関であるFIFA(国際サッカー連盟)は今回のワールドカップやその予選を始め、欧州選手権、アジア選手権など「代表チーム」で様々な興行をうち、これは各国のサッカー大きな収益源となっている。

このような状態については随分前から「フェアではない」という議論があり、2000年代の後半あたりから、代表に招集した選手については「FIFA・各国サッカー協会→各クラブ」に対して、一定のギャランティが発生する仕組みになっている。

但し、基本的には「選手一人あたり一日いくら」という計算方法であり、クラブからすれば

「ないよりはマシだけど、高給取りの選手だと割が合わない」

という感じらしい。

そして、最悪なのが「怪我」

代表チーム、特にワールドカップという大舞台では「国を背負っている」というプレッシャーもあり、選手たちはどうしても無理をしてしまう。

実際、今回の大会でもネイマールが靭帯を損傷したことが報じられ、これなどもクラブチームからすれば「たまったもんじゃない」というところだろう。

ネイマールの年俸109億円と言えば、ピカソやゴッホの作品が買えるほどの金額であり、クラブチームからすれば、

ピカソを貸してやったのに、傷をつけられた!!

という感じ。

実際、過去にもワールドカップでの選手の怪我の責任の所在を巡って、クラブチームが各国のサッカー協会を訴えるという事例が数多く発生している。

だが、相手が富裕なヨーロッパのサッカー協会ならまだしも、アジアやアフリカのサッカー協会では「金がない」ので話にならない。

仮に訴訟に勝ったとしても、無い袖は振れず、やるだけ無駄ということ。

なお、日本サッカー協会ですら文京区本郷の本部ビルを売却し、トヨタ本社での「間借り」を検討しているくらいの金欠であることから、その他の国は推して知るべしだろう。

そのため、現在ではクラブチームが「貸出保険」をかけることが主流で、チームにとって大事な選手は代表チームに送り出す前に

「怪我をしてプレー出来なくなったら保険金いくら」

という形で保険会社と契約をしていることが多い。

報道されている例で言えば、マイケル・オーウェン(イングランド代表)が2006年のワールドカップで故障をした際には、当時所属していたニューカッスル・ユナイテッドが1000万ポンド(日本円で16億5,000万円)を受け取ったそうだ。

今回のワールドカップでもおそらく、全世界で何十、何百億円という「保険料」が動き、選手の故障によって、何十、何百億円という「保険金」が支払われることだろう。

選手の保険を受けた保険会社からすれば、怪我をしたら大金を支払う羽目になるわけで、

「頼む!!無茶しないで!!キャー!!」

と、祈るような気持ち(別に意味)で試合を見ているのだろう。

本日のコラムでした。

 

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12月 3rd, 2022 by