3.11から12年。震災が産んだ鬼っ子「太陽光投資」を考える


2023年3月11日。

東日本大震災からちょうど12年が経過したことになる。

「あの日」

誰にとっても衝撃的で、そして悲しい記憶だったはずだが、それでもその意識は年々薄れてしまう。

実際、本稿を書いている3月11日の夜20時、テレビのチャンネルを回してみても目に留まるのはWBCの中継で、そんなキラーコンテンツに対して「どうせ勝てない」とばかりに他局では投げやりなバラエティーが並ぶ。

震災を扱っている番組はない。

さて、一気に話は世俗にまみれるが、三浦瑠璃氏のご主人の逮捕が世間をにぎわせている。

現時点では容疑であり、何も確定していないが、その内容としては

・開発出来る見込みがない大規模太陽光発電設備への投資を募り

・その資金を勝手に流用した「業務上横領罪」

とのこと。

しかし、特捜が動いている以上、単純な投資詐欺などではなく、その裏には政財界の癒着があるのだろう。少なくとも特捜はそう見ているはずだ。

震災と太陽光投資詐欺。

一見、全く関係のないこの2つは根っこの部分で深く繋がっている。

話は2012年に遡る。

当時、私は外資系の生命保険会社にいたが、太陽光発電開発業者とも極めて親密に付き合っていた。

その前年、2011年に発生した東日本大震災により、福島第一原発にメルトダウンが発生。

「原発恐怖」が蔓延し、日本のエネルギー政策は一気に再生可能エネルギー(主に太陽光)に傾く。

だが、当時のことを思い出すと、これ自体は仕方がないことだと思う。

それくらい福島第一の爆発シーンはインパクトがあった。

時の首相は民主党 菅直人。

太陽光推進のための法案を次々に通し、その集大成としてFIT(固定価格買取制度)が開始する。

後手後手にまわった東日本大震災で低迷していた支持率を上昇する意味もあったのかもしれないが、そこにソフトバンクをはじめとする経済界の人間が群がり、

・1KW 40円

・その価格を20年間固定

といういうあり得ない条件が制度化されたのである。

はっきり言えば「ヒステリー」だ。

この国、この国民の習慣病のようなもので、何も深く考えず、目の前の解に飛びつく。

原発怖いよね・・・太陽光エコだよね・・・

1KW40円?よく分からないけど良いんじゃない!!

そんなロジックで導入されたFITは、当時も今も電力価格の上昇に一役も二役も買っている。

負担するのはもちろん国民だ。

そして投資家はそんな「ビジネスチャンス」を見逃さない。
(おこぼれに預かった私も含め)

当時、太陽光発電設備はバカ売れし、私も顧客のために随分とそれを斡旋した。

そのために開発業者とも付き合い、案件を紹介し、お礼にあちらからも保険の紹介などをうけwin-winの関係だった。

また、

「これは良い案件ですよ。いつものお礼に一つどうですか?」

そう言われ、鹿児島県内の発電設備も一つ購入した。

その頃、1KW40円、20年保障の「太陽光発電設備」は投資家たちが奪い合っており、よほどのコネがなければ手に入れることが出来ない。

ありがたい申出ではあるので買うには買ったが、それでも現地を訪れ心中は複雑だった。

まず、広大な土地にパネルを並べているが、その総発電量は1000KW程度だと言う。(私が取得したのはその一部。マンションの区分所有に似ている)

1000KWは一般家庭200世帯程度の電気をまかなえるレベルでしかない。

到底、原発の代わりになるような代物ではないことは、当時から分かりきっていた。

また、木を伐採し、山の中にパネルを並べ「これが本当にエコなのか?」という素朴な疑問をある。

そして、この頃から、太陽光投資には政治家の影が付きまとっていた。

曰く

「自民党のA先生のところ案件を持ち込めば言い値で買ってくれる」

こんな話。

実際、A先生に設備を販売した業者の話も聞いた。

ここでは具体的な名前は出さないが、九州地方を地盤とする誰もが知る大物だ。

逆説的に「政治家が買っているのだから、太陽光投資は安全だ」そんなセールストークもあった。

当時、自民党は野に下っており、民主党の震災対策を批難していたが、裏では「民主党の失策」を逆手に取って、太陽光設備を買い漁っていたのである。

政治家が太陽光を利権化し、遠まわしに国民から搾取する。

日本の太陽光政策はこんな形でスタートした。

そのため、今でも太陽光投資には「B先生肝いりの」とか「C先生が間に入って」などという話が多い。(本当かどうかは別として)

一時期ほどの勢いはなくなったにせよ(現在の買取金額は1KW10円前後。40円がいかに凄いか分かる)、固定金額で長期間買取を「約束」してくれるという仕組みは他の投資にはない特徴で、だからこそ「利権化」しやすい。

三浦瑠璃さんのご主人の投資話も似たようなものだろう。

個人的には「上手く利用されたのかな?」とも思っている。

 

震災から何を学ぶべきか?

原発は確かに怖い。

それは当時、あの爆発映像を見た人の率直な感想で、その感情はどこかにこびりついている。

一方、太陽光だけで電力が賄えないことは明確であり(2021年度で全体の9.3%)、実際、今の日本は海外から輸入しているLNG(液化天然ガス)や石炭による火力発電に頼っている。

CO2を大量に排出する火力発電は全くエコではないし、そしてLNGは円安とウクライナ戦争により高騰。

結果、電気代もあり得ないほど上がり、毎月数兆年の貿易赤字を積み上げ、日本の「富」は流出を続けている。

震災から何を学ぶべきか?

投資したから分かる。

太陽光など、絶対解にはなりえない。

あの悲劇から12年。

我欲だけの政治家に任せず、そろそろ冷静に議論をするべきだと思うのだが・・・・

本日のコラムでした。

 

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3月 11th, 2023 by