誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 前編


みかづきナビ(運営:おあばコンサルティング)代表の加藤です。

本日は民間の介護保険のお話です。

「介護保険」と言うと、一般的には国の介護保険制度を指しますが、それを補助する形での民間の保険会社が販売する介護保険商品もあります。

ややこしいことに、どちらも「介護保険」と呼ばれてるため、これらを混合して考えてしまう方も多いですが、これは全くの別物です。

あくまでメインは国(公的)の介護保険制度であり、民間の介護保険はそれらを補助するものです。

ここでは便宜的に「公的介護保険」、「民間介護保険」と呼ぶことにしましょう。

まずは、介護のメインである公的介護保険の概要を理解することが重要です。

この点を理解していないと、実態を理解せず「介護怖い!!」と、単にイメージだけで民間の介護保険などに加入することになります。

何事もお勉強です。

あまり面白い話ではありませんが、しっかりと理解するべきポイントです。

では始めましょう。

公的介護保険は40歳以上の人が加入する制度で、会社員の方などは40歳を期に給与から天引きされる社会保険料が増額されているはずです。

それらを原資として提供される公的介護保険には、様々なメニューが用意されており、代表的なものとしては、自宅に介護士や看護士が来てくれる訪問介護・訪問看護や、施設などに通う通所リハビリテーション(デイケア)などがあります。

それぞれに料金が決まっており、利用者は毎月その利用料を支払うのですが、実際にいくら払うのか?ということは、その利用者の状況によって変わります。

「状況」とは、どの程度の介護が必要か?という健康状態と、その方の収入です。

健康状態は「要介護度」というランクで判別されます。

一番軽い状態が要支援1、次に要支援2、更に状態が悪くなると要介護1、2、3、4、5となりますので、全部で7ランクあるということです。

これらのランクの決定は、各自治体に委ねられています。

自治体の調査員が来て、日常生活のあれこれについて色々質問し、どのレベルの介護が必要なのかを決めるのですが、どうしても自治体によって「審査の軽重」が出てきます。

A市はすぐにこちらの言い分を認めてくれるが、B市はなかなか認めてくれない、というようなことです。

その自治体の財政の問題も大きいとも言われていますが、それとは別にたまたま来た調査員の資質であることもあります。

始めから「老人は嘘つきばかりだ」と疑ってかかるような人も実際にはいるので、残念ながら運の要素もあるのです。

こればかりはやってみないと何とも分からないという話ですが、本当に深刻な状態になっているのに「認めない」ということはないので、その点は安心して下さい。(多いのは要支援1なのか2なのか、という軽い状態で見解が分かれることが多いです)

そして、それぞれのランクに応じて限度額が変わります。

限度額は以下の通りです。

要支援1   50,320円/月
要支援2 105,310円/月

要介護1 167,650円/月
要介護2 197,050円/月
要介護3 270,480円/月
要介護4 309,380円/月
要介護5 362,170円/月

なお、この限度額はあくまで「公的介護保険」で支給される額の上限ですので、これを超えたとしても自費で支払う分には全く問題ありません。

次に収入です。

結論から言えば、収入が多ければ多く(3割 or 2割)負担し、収入が少なければ少ない(1割)負担しかないということなのですが、この判別方式は意外と複雑で、独り身(単身世帯)なのか、夫婦(2人以上世帯)なのかによっても変わってきますので、その詳細については他に譲ります。

ざっと言えば、世帯の収入が年金だけなら、ほとんどの方が1割で、働いていたり(介護状態でも、自分の会社からの役員報酬がある、等)、不動産収入などがあるような方は2割、3割になるような感じです。

例を挙げてみましょう。

たとえば要介護2の場合、毎月197,050円を使うことが出来ますが、ある月の利用量が18万円だったとしましょう。イメージで言えば、週2回ヘルパーさんが、週1回看護師さんが来て、週に1回、通所ケアに通うとこれくらいの金額になります。

そして、実際の利用者は1割負担であれば18,000円、2割負担であれば36,000円、3割負担であれば54,000円を支払うことになるわけです。

さて、ここまで話を聞いて、どのような感想をお持ちになったでしょうか?

ある人は「介護って言ってもそんなにお金かからないのだな」と思ったかもしれませんし、ある人は「そんな状態になってもお金取られるのか・・・」と心配になったかもしれません。

但し、総じて言えるのは「ビックリするほどのお金はかかりませんよ」ということです。

仮に毎月30万円の介護サービスを利用し、2割負担だったとしても、毎月の支払いは6万円。

年間72万円です。

介護の期間(介護状態になってから亡くなるまで)は統計データ上、平均5年、長くて10年と言われているので、

72万円×5年分~10年分 =360万円~720万円

が手元にあれば、ある程度のレベルの介護は受けられることになります。

介護はお金がかかる!!

そう思っている方も多いかと思います。

実際、360万円も720万円も少額な金額ではありませんが、老後までに貯めれば良いのであれば、そこまで高いハードルではありません。

そして、何よりも大事なのは「介護の見える化」なのです。

漠然とした不安感だけでなく、しっかりとした数字と統計に裏付けされた金額を把握することで、介護の問題は一気に見通せるようになってきます。

では次回は、これらの「介護のお金」を用意するのに、民間の介護保険は有効なのか?その点を検証したいと思います。

誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 中編

誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 後編

 

筆者紹介

1級FP技能士・宅建士 加藤 圭祐

あおばコンサル代表(みかづきナビ運営会社)

相続、介護、老後の資産運用に関するご相談は

infp@mikazuki-navi.jp

までご連絡下さい。

 

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3月 31st, 2024 by