クリニック開業における保険加入のイロハ


本日はクリニック、歯科クリニックに開業時に加入しておいた方が良い保険についてお話します。

弊社にはドクター、歯科医師のお客様が多いですが、それらの方が独立して自身でクリニックを開くことがあります。

そのような際、

「何の保険に入ったら良いのか?」

と相談を受けるのですが、私は以下の4つの保険の検討をご提案しています。

1 火災保険

2 医師賠償保険・歯科医師賠償保険

3 死亡保険

4 経営者賠償責任保険

それぞれについて解説していきます。

 

 

1 火災保険

クリニックを開業する際、始めから物件を購入する方は少数派で、多くは賃貸です。

そして、その契約時には火災保険への加入が必須となります。

クリニックから火災を発生させてしまった場合、家主に迷惑をかけてしまうので、契約時までに入る必要があるのです。

このような時、

「不動産仲介から斡旋された火災保険」

に入っていることが多いようです。

開業時には、設備、内装、人材募集、広告、各役所への届け出、などなどやることが膨大にあるので、火災保険を吟味している時間はありません。

そのため「面倒なので不動産屋に任せる」ということになるのでしょう。

しかし、仲介の不動産会社は保険のプロではありませんから、通り一片の補償内容であり、火災水害、風災(台風)などはカバーされていますが、他の細かい部分は省略していることがほとんどです。

契約時に「ドクターから質問されて面倒なことになる」もしくは「高い!!と文句を言われる」のが嫌なので、内容をシンプルにする傾向があるのです。

しかし、後から振り返ると「絶対に付けておいた方が良い」というものがあります。

私が思うのは、

・什器の破損汚損補償

・休業補償

の2つです。

特に什器の破損汚損は付けておいた方が良いでしょう。

什器とは「物」のことで、クリニック内にあるすべての器具、機械を指します。

なお、大変ややこしい話ですが、これらが火災や床下浸水などで故障した場合には、通常の火災保険で補償されます。

原因が火災、水災だからです。

しかし、手元のミスで落としてしまった、患者さん(お子さんなど)の突発的な行動で壊してしまった、等々の事故では対象外です。

このような時にも保険金の支払い対象となるのが「破損・汚損」です。

このオプションを付けておくことで、火災、天災以外の偶発的な事故でも、その損害をカバーできるようになるのです。、

そして、クリニックの火災保険にはこの破損・汚損が付いていないことが多いです。

「開業した時に契約した火災保険を何となく続けている」

というお話を良くお聞きしますが、火災や水害などは滅多に起こるものではありません。

対して、院内での偶発的な事故は日常的に発生します。

「保険を使いこなす」という点では、破損・汚損は付けておくべきです。

次に休業補償ですが、こちらは先の「破損汚損」より優先順位は下がりますが、出来れば付けておいた方が良いでしょう。

クリニック内には様々な設備、機器、什器があり、その中には代替出来ないものもあります。

「これが動かないんじゃクリニック開けないよ・・・・」

そんな臨時休業を強いられた場合でも、1日30万円などの補償を受けられるのが休業補償です。

保険料もさほど高いものではないので、付けておいた方が無難です。

 

2 医師賠償保険・歯科医師賠償保険

これは説明の必要はないでしょう。

医師・歯科医師として何か事故を起こした場合の賠償を肩代わりしてくれる保険です。

勤務医時代は勤務先病院で取りまとめて加入手続きをとってくれていますが、独立すると自身で手続きする必要があります。

過去に1件だけ「入っていない」という歯科医師がいましたので、忘れないように申し込んでください。

 

3 死亡保険(借入金対策)

多くの場合、開業時には多額の借金をします。

診療科によっても異なりますが、多いと数億円の借金を負うこともあります。

クリニックというのは、非常に「属人的」なビジネスであり、基本的には「院長ありき」です。

特に開業したばかりの頃はその傾向が強いです。

仮に院長が死亡したら?

院長の代わりになる人間を見つけるのは容易ではなく、多額の負債だけが残ります。

もちろん「死んだら知らん。後は野となれ山となれ。」というようなことをおっしゃるドクターもいますが(この点、ドクターは非常識な方が多い笑)、残された家族からすればあまりに無責任な話です。

そのため「借入金」くらいは生命保険に入っておいた方が良いです。

原則的に借入金は「時間の経過と共に減っていく(返済がすすむため)」ので、それに対応して保険金も減っていく商品があります。

1年目で亡くなったら1億円、2年目なら9,000万円、3年目なら8,000万円、というようなイメージです。

このような「借金対策用」の保険は保険料も安く、年齢や健康状態にもよりますが、保険金1億円で毎月1万円程度で済みます。

また、その保険料は全額クリニックの経費にもなるので「万が一のため」に入っておいた方が安心です。

 

4 経営者賠償責任保険

これ、意外と見落としがちなポイントです。

開業は「経営者になる」ということであり、今までは人に使われていた立場から「人を使う」立場になることを指します。

クリニックの規模にもよりますが、最低でも2,3人のスタッフを雇うことになり、その労務管理も院長の仕事となります。

人を使うようになると、思い通りにならないことも多く、また全ての責任を負う院長と、一介のスタッフでは考え方、行動も違うため、当初はイライラすることも多いようです。

しかし「全ての責任」の中にはスタッフに対するものもあります。

その一例をお話します。

なお、ここで挙げる事例は「最悪のケース」です。

しかし、あり得ない話でもありません。

例えばこんな話。

院長とスタッフの仲は良好。

だが、ある古株のスタッフが院長には見えないところで、下のスタッフをいびり、結果、あるスタッフが精神を病んでしまった。

もしくは、アルバイトの医師が非常に横柄な性格で、特定の看護師を目の敵にして攻撃。

その看護師が通勤中、衝動的に自殺をしてしまった。

残念ながらこのような話は掃いて捨てるほどあります。

そして、昨今ではこれらのことが訴訟に発展してしまうことが少なくないのです。

「私がうつ病になったのはクリニックのせいだ」

「娘(もしくは息子)が自殺したのは、クリニックの激務のせいだ」

このような訴訟では、原則的に労働者が有利で、クリニック(法人)は圧倒的に不利です。

訴えられたら負けると思っていた方が良いでしょう。

仮にスタッフが亡くなった場合、想定される賠償額は1億円を超えます。

このような場面で、賠償額を肩代わりしてくれるのが経営者賠償保険です。

この保険は単体で契約するものではなく、労災上乗せ保険という商品のオプションとして提供されています。

労災上乗せ保険は、労災事故(仕事中の事故)が発生した場合、国の労災に「上乗せ」する形で補償するもので、従業員のために入る保険なのですが、そのオプションとして経営者賠償責任があります。

人の出入りが多いクリニックにおいては、スタッフの福利厚生を重視するところは少ないのですが、弊社のお客様では、この経営者賠償保険に入ることを主目的に、労災上乗せ保険に入っているクリニックが多いです。

労災上乗せ部分(従業員向け)の補償は最小構成にして保険料を抑え、そこに経営者賠償責任保険を付けるという構成です。

最近では労働問題を専門に扱う弁護士が「成功報酬」で仕事を請け負うため、訴訟が「手軽」になっているという背景もあります。

頻繁に起こることではありませんが、もし起こってしまった場合、本当に大変なことになります。

高額の賠償金もさることながら、今まで一緒に働いていた「仲間(もしくはその家族)」から訴えられるという精神的な負荷は相当なものでしょう。

その点からも経営者賠償責任保険は必須と言えるかもしれません。

 

以上、開業時に入るべき保険について解説をさせて頂きました。

ドクターにとって開業は人生で一番の挑戦であり、その道は平坦ではありません。

弊社がそのサポートをさせて頂ければ幸いです。

ご相談は

info@mikazuki-navi.jp

までご連絡下さい。

日本全国、メール、zoom、LINE、ご面談などで対応可能です。

 

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7月 14th, 2024 by