高橋洋一 vs ひろゆき 「近隣窮乏化」とは?


なかなか面白いカードだ。

高橋洋一 vs ひろゆき。

口喧嘩と屁理屈では一歩も引けを取らない両者の一戦は思わぬ形で始まった。

高橋氏が「1ドル300円でも問題ない」と言ったことに、ひろゆき氏が反応。

燃料費・肥料代・輸送費が2倍、輸入品の価格は2倍以上。電気代も上がる。
国内向けで働く人・公務員・年金受給者の手取りは変わらないので、実質的に半額で暮らす。ホントに学者?

これに対して、高橋氏が反論として持ち出してきたフレーズが「近隣窮乏化」

「中学で習わなかったのか?」という氏一流の嫌味を添えてお返ししたのだが、それに対し、ひろゆき氏は沈黙を守っている。

さて、近隣窮乏化。

私も中学で習った記憶がない。

知らない言葉は調べる。

一応、そういうことにしているので、サクッと調べてみた。

と言っても、どこかのアナリストが書いた文章と、いつものwikipedeiaを読んだだけだが・・・

近隣窮乏化とは正式には「近隣窮乏化政策」と言い、自国の通貨を切り下げることで

・輸出の増大、輸入の減少

・国内産業の育成

を達成できる政策を指す。らしい。

具体的に考えてみよう。

日本円は少し前までは1ドル120円だったが、それが最近では1ドル160円まで「安く」なっている。

まさに近隣窮乏化の条件が揃っている。

例として貿易の花形である「車」で説明してみたい。

ここに日本円で480万円の車があったとする。

それを輸出しようとした場合、1ドル120円であれば相手は4万ドルを支払わなくてはいけない。

しかし、1ドル160円になれば3万ドルで済む。

同じ物なのに1万ドルも安く買えたことになるので、この車の「競争力」は相当に高くなる。

結果、輸出は増える。(輸出の増大)

対して、輸入。4万ドルの車を輸入しようとした場合、1ドル120円であれば480万円で済むが、160ドルであれば640万円を払わなくてはいけない。

国内には同等レベルの車が500万円前後で売っていると仮定しよう。

そうなると必然的に500万円の国産車を選ぶ人が増える(輸入の減少、国内産業の育成)

昨今の実際の例で言えば「ミートショック」がこれにやや似ている。

海外産の牛肉や豚肉が、円安によって値上がりし、国内産の価格とほとんど変わらなくなり、結果、国内産の需要が高まっているわけだ。

つまり、自国の通貨安(円安)は経済にとってプラスという論理で、これ自体は非常に分かりやすい。

が、私が見たドキュメントの範囲では「近隣窮乏化政策」は現在では否定されている。

まず、この論理で言えば、意図的に自国の通貨安を誘導することは、貿易相手国の経済を悪化させることになる。

そして、相手国も対抗処置として自国通貨の切り下げや関税引き上げなどを行うため、それらの競争は結果的に両国の経済を疲弊させる。

そのため近隣窮乏化政策は

「失業の輸出(相手国の経済が悪化し失業者が増えるため)」

とも呼ばれており、現代では悪手とされているそうだ。

なお、そもそもが近隣窮乏化政策自体、1930年代に流行した手法であり、当時はまだ金本位制であったことから現代とは前提が異なるし、また、今回の円安は自国で誘導したことでもなく、今まで「円を刷り過ぎ」てしまった故の現象だ。

つまり狙ってやったわけでもなく、むしろ過度な円安に政府も国民も困っている。

そのような中で「1ドル300円でも問題ない」と言い放ち、それを指摘されると「近隣窮乏化」などというカビが生えた単語(かつ、「えっ?知らないの?」とマウントが取れる単語)で煙に巻くあたり、流石、高橋氏だ。

なお、少々矛盾しているが、私自身は高橋洋一先生を敬愛している。

氏のyoutubeチャンネル(高橋洋一チャンネル)は仕事中BGM代わりにかけていて、政治、経済、芸能、文化など、高橋先生の幅広い知識・経験には本当に驚かされる。

だが、経済政策に関してだけは何とも胡散臭いと言うか、

「お金なんてもっと刷れば良い」

「消費税は減税すれば良い」

など、MMT理論(モダン・マネー・セオリー)の旗振り役&財務省陰謀論的な言動が目立つ。
(MMTについては以下コラム参照)

最近よく聞く「MMT(近代貨幣理論)」をご存知ですか?

今回もひろゆき氏の至極まともな指摘に「まともに答えない」という変化球で応じているあたり、先生の怪しさを増強している。が、これもまた彼の魅力の一つでもあるのだ。

本日のコラムでした。

 

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7月 19th, 2024 by