生命保険業界から見る、自民党総裁候補総評


おじさんになると政治に興味が出てくるよ

若い頃、「おじさん達」がそう言っていて「そんなもんか」などと思っていたが、実際に自分がおじさんになると、本当に「そんなもん」だった。

さて、そんなわけで自民党総裁選から目が離せない。

何だかもの凄い数の立候補者がいるようだが、各種の報道を見るに、石破茂、小泉進次郎が2トップ、3番手として高市早苗が追走し、この3人が軸となって争われるようだ。

金融方面から見れば、証券業界は「高市推し」だろう。

ご本人もバリバリの積極財政派であり、また周囲からもアベノミクスの継承者として見られている。

高市氏が総理総裁になれば、おそらく日銀に半端ないプレッシャーをかけて、何とか金利上昇を抑え込むのだろう。という「憶測」(実装にそうするかどうかは別として)が流れ、株価は上がるかもしれない。

が、そうなれば株価は上がるかもしれないが、円はまた弱くなる(円安)

国民は物価高に苦しんでいるので、それらの是正もされない。

そして、

「アベノミクスってそもそも失敗だったんじゃないの?」

そのような疑問が漂う中での「継続」は、なかなか支持を得られるとも思えないし、また高市氏の「右寄り」な印象は一部のコアなファンからは人気があっても、国民全体には受けにくい。

結果、自民党が大敗すれば、総理でいられなくなる可能性もある。

逆に、我らが保険業界や、銀行業界としては「石破推し」となる。

こちらは緊縮財政派なので、金利正常化や、岸田政権で立ち消えとなった、株で大儲けしている人への「金融所得課税」にも前向き。

金融業界の構図としては、金利が低ければ資金が株式市場に流れるため証券業界を潤うし、金利が高ければ資金が預金や債券(保険は債券で運用する)に流れるので、銀行・保険が喜ぶ。

證券業界と銀行・生保は対立関係にあり、故に「同じ金融」であっても政治に求めるものが異なってくるわけだ。

つまり「金利が上がりそう」な石破氏は銀行・保険からすればありがたい総理ということ。

但し、こちらも「やり過ぎ」が怖い。

ともかく「正論好き」なので、テレビやネットなどでそれを語る姿にはスカッとするが、実際の当事者になった時にはどうなのか?・・・

関係者にそっぽを向かれ、あっという間に手詰まりになりそうな気もする。

で、最後の小泉氏。

立候補会見を見たが、昔より随分と頼もしい印象で、言っていることも力強かった。

会見の中で「雇用を柔軟にするために、解雇規制を緩和する」と言い切ったには驚いた。

おそらくは小泉氏の後ろ盾の菅元総理、更にそのブレーンのデービット・アトキンソン氏あたりの影響だろうが、なかなか難しい問題をサラッと言ったことには驚いた。

そして何より「爽やか」である。

今まで、安倍、菅、岸田と油ギッシュなおじさんが続いてきたので、食後のデザート的な、口の中をさっぱりさせてくれるレモンのソルベ的な清々しさがある。

とは言え、どうしても説得力がない。

言うは易く行うは難し

先の雇用規制緩和、憲法改正の国民投票、選択制夫婦別姓などなど、安倍、菅、岸田が「出来なかったこと」が果たして出来るのか?

せめて過去に重量級の閣僚(内閣官房、財務、外務、経済産業)を一回でも経験し、そこでの実績、安定感を見ていれば・・・とは思ってしまう。

安倍総理だって小泉政権で官房長官をやっていたし、その点、「いきなり総理」というのは少々ギャンブルが過ぎる気もする。

優秀なスタッフは集まりそうだが、誰にでも良い顔をして、結局、「船頭多くして船山に上る」コンボが発動されそうだ。

なお、金融政策については、立候補表明の場では何も語っていなかったので、金融業界にとっては「毒にも薬にも」という感じだろう。

さて、一体だれが次の総理になるのか?

なかなか楽しみであるが、こんなことが「楽しみ」になったのは、私が立派なおじさんになったという証明でもある。

本日のコラムでした。

 

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9月 7th, 2024 by