保険を使った金庫株対策実務


中小企業の事業承継によくある問題として、こんなことがあります。

・創業者は高齢で、そろそろ本格的に事業承継を考えている

・跡取りは長男と決まっている

・他に長女(妹)がいるが、既に結婚し、会社経営とは無縁

・自社株式は次期社長になる長男に相続させたい。対して長女には現金や有価証券を渡したいのだが、どう考えてもバランスが悪い。

 

例として、会社の株式の価値が10億円、現金・有価証券が2億円としましょう。

相続財産は12億円で、通常の相続で言えば、長男、長女はそれぞれが6億円を受け取れることになります(お母様がご存命であれば、配偶者控除などもありますが、ここでは話を単純化するために母はいない、ということにします)

しかし、長男、長女で6億円づつ分けるとなると、

長男 株式6億円

長女 株式4億円+現金・有価証券2億円

という割合になり、実際に経営にあたる長男とは別に長女(妹)が大株主になってしまいます。

兄妹仲が良好であればこれでも良いのですが、不仲であったり、もしくは当初は良好でも長い時間の経過で関係がどのように変化するかは予測出来ません。

中小企業においては、「ただ親族というだけ」で、会社の経営に関係がない人間が全体の40%の株式を握っていることは健全ではありません。

よりはっきり言えば「リスク」です。

また、長女からしても、持っていたところで何の資産性がない(多少の配当はあったとしても)株式はさほどのありがたみがありません。

つまり両者にとって良い形ではないわけです。

 

・遺言書を残す

では、これらの問題を解決するためにはどのような方法があるでしょうか?

その一つは「遺言書を残す」ということです。

株式は長男に、現金・有価証券は長女に、という内容の遺言書を作成し、公正証書としておけば、その効力は法的に保証されます。

しかし、ここにも難しい課題が残ります。

それが「遺留分の侵害」です。

遺留分を簡単に説明すると

「本来受け取れる分の1/2はどんな事情があっても受け取れる(侵害できない)」

というものです。

このケースでは、長女には6億円の権利がありますから、その半分の3億円は遺言書をもってしても「侵害」出来ないわけです。

そうなると長女に対しては、

「本来は6億円だが、会社とお兄ちゃんとために2億円で我慢してくれ」

と説得する必要があり、これに同意してくれれば良いですが、6億円と2億円では相当な差があるため、なかなか「はい、そうですか」とはいかないでしょう。

もしくは、その場では納得していても、後になってから「お兄ちゃんだけズルい」となるケースもあり、そうなれれば泥沼の「争続」になってしまいます。

 

・保険を使って揉めない相続を

2つ目の方法は保険です。

本件の場合、遺言書を残さないのであれば長女には6億円の、遺言書を残すのであれば3億円の相続財産を継ぐ権利があります。

対して、現金・有価証券は2億円ですから、前者であればその差額は4億円、後者であれば1億円です。

これらに関しては「会社の株を会社が買い取って」あげれば良いわけです。

買い取った株式は金庫株となり、実質的には効力がなくなります。

そのための買取資金を法人で加入した保険の保険金で用立てるわけです。

前述の通り、長女としても株式よりは現金の方がありがたいですから、基本的にこれを拒否することはないでしょう。

では、どのような保険があるのでしょうか?

① 変額終身保険

変額終身保険は、終身保険の一種ですが、通常の終身保険より「保険料が安い」という点がメリットです。

株式や債券、REITなどに投資するため、その運用結果によって将来の返戻金や保険金は「額が変わる」のですが、死亡保険金については最低保証がされているので、その最低保証金額を買い取り資金として腹積もりしておけば良いわけです。

例えば年齢70歳の男性で、死亡保険金が1億円の場合、年間の保険料は800万円前後です。(会社によって異なる)

これをかけておけば、死亡時に会社が1億円の保険金を受け取ることが出来るので、それを株式の買い取り資金に充てます。

② 一時払終身保険

こちらはキャッシュリッチ(現金が多くある)の会社向けです。

本来、保険は「月々(もしくは毎年)コツコツ支払う」ものですが、一時払はその名の通り、一括で保険料を支払ってしまう商品です。

1億円の保険金の場合、70歳男性であれば6,000万円くらいを預ければ死亡時には1億円になります。

更にこの商品の場合、「契約時に健康状態を問わない」というタイプもあります。

つまり加入する時に健康状態の告知(保険会社への報告)がないため、血圧が高い、過去にがんを経験している、というような病歴があっても入れます。

但し、「加入2年間は死亡保険金がない」という条件が付きます。

先の例でいえば、6000万円を支払って、仮に2年以内に亡くなった場合は支払った6000万円が返ってくるだけですが、2年を経過すれば1億円の保障が立ち上がり、以後、死亡時には1億円の保険金が用意されます。

 

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ここでは分かりやすい2つの例を挙げましたが、その他にも保険会社各社から相続、事業承継に特化した商品が販売されており、有益な使い方によっては相続をスムーズにし、会社経営の無用なリスクを防ぐことが出来ます。

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10月 27th, 2024 by