長い人生の中では、様々な理由で「休職」を余儀なくされることがある。
怪我、病気、もしくはメンタル的な問題などで、数週間から数ヶ月、長ければ1年単位で仕事を休む。
先輩、後輩、同僚が必死に働いてる中で、自分だけ戦線を離脱しなくてはいけない。
その焦燥感は経験した者でないと分からないことだろう。
過去、何度かそのような方々のファイナンシャルプランニング(以下、FP)の相談を受けてきた。
本日は、その経験を踏まえ、同じような境遇の方の参考になるであろう3つのアドバイスをしたい。
1 治す。ことに注力する
いきなり当たり前のことを言うが、まずは怪我や病気を治さないといけない。
そのためには、余計なことを考えずに治療に専念しないといけないのだが、人間そうは単純に出来ていない。
色々と悩む。
ここでの「悩み」は3つあるように思う。
1つ、身体。本当に治るのか?元に状態に戻るのか?
2つ、仕事。戻った時に自分の居場所はあるのか?
3つ、お金。治療費や生活費、経済的に大丈夫か?
この3つ。考えたところで何か結論が出るものでもない。
身体については、しっかりと治せば元の状態に戻ることが多いが、残念ながら何かしらの後遺障害(もしくは何かしらの違和感など)が残ることもある。
仕事についても、ほとんどのケースで職場は優しく迎え入れてくれる。しかし、稀に冷や飯を食わされることもある。
最後のお金に関しては、日本の社会保障制度は非常に手厚いので、治療費に関しては
「意外とお金がかからなかった」
という感想が多い。
しかし入院しているからと言って、家賃や住宅ローンが免除されるわけではなく、家族がいれば生活費、教育費もかかる。
それらのお金が必要であり、その意味では貯蓄が減っていくことは仕方がないし、むしろ「こういう時のための貯蓄」なのだからそれで良い。と、言うかそれしかない。
このように論点を整理すると、体調と仕事については「8~9割がた大丈夫」であり、お金に関しては「減るのは仕方がない」というところに落ち着く。
また、体調と仕事に関して、仮に大丈夫でない1,2割(後遺症、冷や飯)の方を引いてしまったとしても、病気や怪我と闘いを余儀なくされている「今」よりは、はるかにましだ。
もちろん最悪のケースとしての「死」もあり得るが、もうこれは人知の及ばぬ領域だから諦めるしかない。
つまり「死」という結末を除けば「今が底」であり、ここからは上がるしかないということ。
と、言うことで今から減るのは「お金」だけだ。
2 お金の聖域なき改革
で、そのお金が一筋縄ではいかない。
「そのための貯金」
そうは言っても、実際に銀行の残高が減っていくのは気持ちの良いことではないし、特に病気や怪我で苦しんでいる時は心も弱っているので、輪をかけて憂鬱になる。
病気や怪我が原因で休職している場合、傷病手当金というものを受け取るが、これは
「元の給与の2/3程度」
が保障されている。
しかし、ここで言う元の給与にはボーナス(賞与)を含まないため、実質的な年収で言えば「約半分(50%)程度」になることが多い。
注:但し、税金が免除される(社会保険料は免除されない)ので、手取りベースで見れば60%くらい。
普通の会社員なら、年間の収入から残る金額はせいぜい10~30%(使うお金が70~90%)
実際にはお子さんがいれば「プラスマイナスゼロ」というご家庭も少なくない。
その状態で、収入が半分になれば大赤字。
こんな時に是非やって欲しいが、
「聖域なき改革」
だ。
政治、経済ではよく耳にするフレーズだが、実際にそれがなされたことを目にすることは少ない。
家庭においても同様で「改革」を口にしても、それを実行することは困難が伴う。
だが、こんな時だからこそ思いきってやった方が良い。
スマホ、電気、ガス、水道、インターネット。
ランニングコスト系のものは全て見直して、安いものに切り替える。
家の中で必要のないものは、メルカリ、〇〇オフ系で全て売る。
「禁じ手」と思われる方も多いかもしれないが、習い事、塾系もこの際、手をつけてみても良い。
お子さん本人としても別にやる気もないのに「何となく続けている」ようなものもあるし、もっと安いもの(ネット系の教育サービス)に代替できる可能性もある。
聖域なき、とはつまりこういうことだ。
また、療養が長期に及び、復職後も一定期間の収入減が予想されるようなケース(メンタル系の病気など)では、支出の中で大きな割合を占める住宅ローンに関して「金利が低いところに変える」、「より期間を延ばして月々の負担を減らす」等の処置をしても良い。
なお、このようなコストダウンは私のようなFP(ファイナンシャルプランナー)が得意な分野で、各都道府県のFP協会や自治体などで頻繁に「無料相談会」が実施されているので、そういうところで相談してみるのも良いだろう。
これらの対策をした上でも、日々の生活費を傷病手当金で賄えるほどにコストダウンをすることは難しいが、それでもこれらをやったことで気分はかなりすっきりする。
不安を得体の知れないものとして不安定な気持ちでいるより、目に見えるように「具現化」して対策を取ることで、多少は前向きな気持ちになる。
3 ノルマを作り、それをクリアする
元気な時に会社などから課せられるノルマはストレス以外の何者でもないが、何も出来ない療養の日々を過ごす中での「ノルマ」は重要だ。
何も私が言っているわけではなく、実際にそれらの経験をした方々がそう言っていた。
1日〇〇ページの本を読む、資格の勉強をする、深呼吸を1日に〇回する、毎日〇〇歩は歩く
何でも良い。
「ノルマ=自分との約束」
と定義し、逆風の生活の中でも、それをクリアした自分を認め、褒めてあげる。
また、日々やることを作り、目の前のことに取り組むことで余計なことを考えないで済む。
休職=再び高く跳ぶための準備期間。
とにかくインプットに励むことで、見えてくる新しい景色もあるだろう。
FP論というか怪しい精神論に落ち着いてしまった。いつもの悪い癖だ。
しかし、何事も気の持ちよう。
長い休職を経た方の多くは、数年後に
「あの経験があって本当に良かった。人生の意義が変わった。」
そうおっしゃる。
今は辛くてとてもそうは思えないだろうが、皆が言うのだからきっとそうなのだろう。
そう楽観的に考えて欲しい。
本日のコラムでした。
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