何とも弱い保険業界の政治力 保険料控除拡充の裏で・・・・


弱いなぁ・・・・

保険業界の「政治力」の話。

いわゆる業界団体というものは金融の世界にも複数存在し、銀行であれば全国銀行協会、証券であれば日本証券業協会、そして保険業界にも生命保険協会、日本損害保険協会などがある。

それらの団体は自業界に有利な税制や法律が実現するよう政府や各省庁に働きかけるのだが、同じ金融でも、銀行、証券に比べ、保険業界の力は昔から「劣っている」と言われている。

ここ数年は証券業界がやりたい放題で、NISAやiDeCoなど、国が力を入れている政策はほとんどが「証券関連」だ。

これらの動きについては「証券業界が導いたもの」という面はあるものの、銀行に「塩漬け」されている莫大な預金を何とかして投資させたい、いわゆる「貯蓄から投資」という国の方針に合致していたことが大きい。

端的に言えばアベノミクスの恩恵にあずかったわけだ。

対して同じアベノミクスにて「日銀が国債を買う」という掟破りの手法が「開発」されたため、それまで国債の引き取り手として一定の存在感(発言権)があったはずの銀行、保険業界は相対的にその地位が低下し、冷や飯を食うことになる。

いくらそれぞれの業界団体が、与党や官庁に働きがけをしても、それ自体が国の政策に合致していなければ、なかなか難しいのだろう。

実際、それは政権与党である自民党への各企業(業界)の寄付額にも表れている。

以下は少し前(2020年)の、自民党への企業献金のランキングだ。(四季報より抜粋されたもの)

1 トヨタ自動車  6400万円
2 日立製作所   5000万円
3 キャノン    4000万円
4 日産自動車   3700万円
5 野村HD        3500万円
6 三菱重工業   3300万円
7 大和証券G   3200万円
8 住友化学     3100万円
9 東レ       3000万円
10 パナソニック 2800万円
10 三井物産   2800万円
10 住友正直   2800万円
10 三菱商事   2800万円
14 日本製鉄   2700万円
15 ホンダ    2500万円
15 伊藤忠商事  2500万円
17 日野自動車  2100万円
18 三菱電機   2000万円
18 SUBARU    2000万円
18 丸紅      2000万円
18 三菱UFJ     2000万円
18 三井住友銀   2000万円
18 みずほ銀    2000万円
18 三井不動産   2000万円
18 JR東日本   2000万円
18 JR東海    2000万円

証券業界からは野村HD(5位:3500万円)、大和証券G(7位:3200万円)が入り、銀行業界は3つのメガバンクが揃って2000万円。

もちろんこれはあくまで「自民党」だけに限った献金なので、その他にも派閥や地元の政治家への協力(パーティ券の購入など)などもあるだろう。

特に、昨年話題になった「パーティ券20万円以下は匿名でOK」という特殊ルールもあるため、これらの全体像は闇の中だ。

しかしながら、公表されているランキングだけ見ても、

ああ、証券業界は随分と頑張って献金しているんだな・・・

ということが分かる。

なお、このランキングの中に保険会社は1社も入っていない。(昔はランキングの常連だったが)

このことからも、保険業界の「影響力」が証券、銀行より低いことは容易に想像できるだろう。

が、今回、そんな保険業界が「頑張った」ような形跡が見えた。

2025年度 税制改正にて、2026年より生命保険料控除の枠が拡大されることが見込まれている。

あくまで現時点では「見込み」だが、「税制改正大綱」の載ったということは恐らく何かしらの引き上げはあるだろう。

現時点での案では4万円が上限だった一般生命保険料の控除枠が、6万円に引き上げられるとのこと。

注:引き上げの対象は一般生命保険料のみで、介護医療保険料控除、年金保険料控除は引き続き4万円が上限

「たった2万円」ではあるが、保険業界がかなりしつこく陳情した結果だと思われる。

しかし・・・・

一般生命保険、介護医療、年金合わせて「12万円まで(現行ルール)」というのはそのままで、全体の枠が増えるわけではない。

先に挙げた証券業界のiDeCo(個人型確定拠出年金)などは、掛け金の全額が控除対象となり、更に掛金の限度額の引き上げを検討しているそうで、それらに比べると

保険料控除を4万円から6万円上限に!!
(だけどトータル12万円はそのまま)

というのは随分とショボい・・・

頑張ってくれた業界のお偉い方々には申し訳ないが、ショボい・・・・

もっと政治献金をして、保険関連の控除枠を増やしましょう!!

そう叫びたい気分でもあるが、何だかそれも違うような気もする本日のコラムでした。

 

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1月 19th, 2025 by