北風より太陽な時代


どちらが旅人の上着を脱がせるか?

北風と太陽がそんな勝負をする。

ビュービューと北風が強い風を吹きつけ、旅人の上着を脱がそうとするが、吹けば吹くほど旅人は必死に上着を抑える。

逆に太陽は旅人を暖かく照らす。

すると旅人は上着を脱ぎ始める。

イソップ寓話の中でも有名な「北風と太陽」の話だ。

 

さて、何とも困っている。

珍しく仕事の話。

弊社は保険と不動産を生業としているが、それぞれの分野で「パートナー」が複数いる。

保険であれば損害保険のある専門分野などは外部のスペシャリストと組んでやったり、不動産でも建築や評価算定などは自社では出来ないので、それぞれの専用の会社さんにお願いしたり。

それらの中には、年がら年中お願いする仕事もあれば、年に1回、もしくは数年に1回しか発生しないようなものもあり、当然ながらパートナーさんとの関係も濃淡がある。

で、ここ最近「数年に1回」というような業務が何個が続いており、それぞれの分野のプロに久しぶりに連絡をすることになるのだが、担当者が辞めていたり、偉くなって管理職になっていたりして、そうなると新しい人と仕事をすることになる。

それ自体は仕方がないのだが、その中で

「別に無理してまでやりたくない」

こんな反応が続いていて、それに困っているのだ。

つまり、先方が多忙なため、仕事をお願いしてもなかなか良いレスポンスがないのである。

背景には人手不足がある。

限られたリソースをどう使うか?

どの企業もそれに頭を悩ませており、一昔前なら、こちらが「仕事を振ってあげる」という立場であるため、ある程度の融通を効かせてもらえたのがそうはいかないのである。

「列の最後に並んで下さいねー」という感じの対応で、それだけでなく「待てないなら他所へ行け」というような雰囲気もある。

また、これが社の方針というわけでもなく、現場の担当者が勝手にコントールしているような気配もあり、これも一昔前なら「ふざけんな!!」とばかりにその会社の上層部と交渉をするのだが、今はそれをやっても逆効果と言うか、辞められても困るため会社も現場に強いことが言えない。

こちらとしても下手なことをして現場にヘソを曲げられては、進む仕事も進まなくなってしまう。

仕方がないので列に並ぶのだが、そこでジッと待っているだけでは芸がない。

何とか便宜を図ってもらうため、手を変え品を変えご機嫌を伺う。

もうどちらが客なのか良く分からないが、とにかく褒めて褒めて、お願いしてお願いして、相手の事情に同調し、その過程でこちらの事情を汲んでもらう。

そうなると多少は早くなる。

列に割り込むようなもので、決して品の良い行為ではないのだが、ビジネスは綺麗ごとだけでは済まない。

だが、実際には弊社が持ち込む仕事が「筋が良い」というのが一番の理由だろう。

無理な値引きや、短納期などを求めることはなく、極めて適正な条件、もっと言えば多少は良い条件でオファーしており、更にそれを平身低頭でお願いしてるのだから相手としても「じゃあ、やってやるか」ということになる。

これ、恐らく今後の日本のあらゆるジャンルで同じことが起こるような気がしている。

どの業界でも人手不足は深刻で、労使環境のマインドは「雇ってやる」から「働いてやってやる」に急激にシフトしてきている。

結果、現場の力が強くなり、現場で働く者が「YES」と言わない仕事は処理できなくなってきている。

北風が吹ける余地はなく、太陽なような暖かく寛容な仕事以外はもうダメなのだ。

働く人にとって、これは短期的には良いことだろう。

 

ちなみに冒頭で挙げた北風と太陽にはあまり知られていない後日談がある。

勝負に負けた北風は「今度は旅人の帽子を飛ばす勝負を」と太陽に持ち掛ける。

太陽は再び照らす。

しかし旅人は強い光を嫌って帽子を手放さない。

そこに北風が再び強い風を送ると帽子はあっさり吹き飛んでいった。

北風には北風の教訓がある。

何が言いたいわけでもない。

これはロスジェネ世代として北風しか知らないおじさんのただの愚痴。

本日のコラムでした。

 

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3月 23rd, 2025 by