保険会社に負けない賠償金交渉術(1/3)


保険の仕事をしていると、賠償金の請求に絡むことが多い。

弊社のお客様が事故の被害者となり、加害者に賠償金・慰謝料を求める。

もしくは逆にお客様が加害者となり、弊社でお預かりしている賠償保険でお支払いを行うこともある。

このような場面では被害者が保険会社と賠償金の交渉をすることになるが、相手はプロであり、こちらは素人。

その知識・情報量は天と地ほどの差がある。

そこで今回は、保険会社を相手とって賠償金を請求する際に「負けない」ための交渉術、およびそれに臨むにあたっての心構えについて解説したい。

私の考えでは交渉を上手く進めるためのポイントは3つある。

1 保険会社側のマインドを理解する

2 被害者感情と判例との乖離

3 弁護士を上手く使う

本稿をお読みいただいている方は、恐らく現在進行形で賠償問題に頭を悩ましている方だろうから、実務的な面、感情的な面を含めてそれぞれの項目について3週に分けて解説していきたい。

1 保険会社側のマインドを理解する

まずは敵(保険会社)の内情を知る必要がある。

何かしらの事故(最も多いのは自動車事故)が発生した場合、加害者が加入している保険(自動車保険、生活賠償保険など)から賠償金を支払うのだが、保険会社も請求通りの金額を支払っていては商売が成り立たない。

そのため「少しでも安くしたい」というバイアスが働く。

もちろん「賠償を値切る?!何のための保険なの?」という批判については十分理解できるのだが、とは言え民間企業。

ボランティアをしているわけでもなく、利益を追求する営利団体であるため、「なるべく安く」という行動心理は仕方がない。

また、少々冷たい言い方をすれば保険会社は被害者のためにあるわけではない。

あくまで今まで保険料を支払ってきた契約者(ここで言うところの加害者)のために動いているわけで、その契約者を守るために出来るだけ最小の支出で事を収めようとする。

被害者はまずこの点を深く理解した方が良い。

被害者の中には、保険会社は正義の味方で、公平公正に自分の言い分を聞いてくれる。そう勘違いしている方がいるが、全くの間違い。

保険会社は完全に加害者側であり、被害者のことは1ミリも考えていない。

いや、少々言い過ぎか。

保険会社によって2,3ミリは考えてくれるところもあれば、本当に文字通り1ミリも考えていないところもある。

後者の会社は業界では数社有名なところがあり、流石にここでは名前は出せないが、実際に「払い汚い」事例は枚挙にいとまがない。

何にせよ、こちら側に立って考えてくれることは絶対ないと言うこと。

何とも世知辛い世の中だが、とは言え被害者は

「保険会社は敵」

ということをしっかりと理解した方が良い。

だが感情的になっても仕方がない。

保険会社で賠償を担当する部署にいる社員、特にその中でも怪我、後遺障害などの大きな事故を扱う人はかなり変わった人間が多い。

朝から晩まで被害者から「死ね!!」、「お前じゃ話にならん!!」と罵倒され、時には「こんな事故にあって、小さな子供もいるのに生活していけない・・・」と泣き落としされる。

そんな話を聞き続けて、まともな神経で務まるわけがない。

そのため、保険会社の中でも圧倒的な「キツイ仕事」であり、原則的には優秀な人間が配属されることはない。

中には優秀な若手に対して保険会社の肝である支払い部門を「試練の場として経験させる」ということもあるにはあるが、私の所見ではちょっと問題のあるというか、感受性が欠けている人間が配属されていることが多いような気がする。

そのため、そんな人間には何を言っても無駄で、こちらがより疲れるか、悲しい気持ちになるだけだ。

つまり敵は強大であり、どんな罵詈雑言も意味をなさない。

ではどうすれば良いか?

それは次項「2 被害者感情と判例との乖離」にて述べたい。

第2回「被害者感情と判例との乖離」はコチラ

第3回「弁護士を上手く使う」はコチラ

 

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3月 26th, 2025 by