保険会社に負けない賠償金交渉術(2/3)


さて、前回は賠償における「保険会社のスタンス」と「その裏側」について述べた。

第1回「保険会社が間に入るから」はコチラ

今回は賠償金の支払い基準となる「判例」について解説したい。

2 被害者感情と判例との乖離」

原則的に賠償金の支払いは過去の判例によって決まることが多い。

例えば交通事故であれば過去に数千件という判例が積みあがっており、全く同じ事故はないにせよ「類似」しているものはある。

それらは「判例タイムズ」という弁護士や保険会社向けに出されている書籍にまとめられている。

ここで「過失割合」というものが明示されており、それに従って「どちらがどれくらい悪いか?」という点を決めてから賠償金が決定するのだが、ここで気を付けて欲しいのは、

保険会社が初めから判例を出してくることはない

ということ。

「あなたの事故は過去のこの事故に似ているので、今回の賠償金はこの金額になります」

とは絶対に言わない。

そんな親切なことはしてくれず、まずは判例など無視してかなり安めの提示をしてくる。

その際にも「社内のルールに従って算出すると」などと、もっともらしいことを言ってくるが、大抵はさほどの根拠はない。

つまり、類似判例を見つけるのはこちら(請求者)の仕事ということ。

また、ここでいう「類似」にも見解が分かれる。

自身が被害にあった事故と似ているAという判例と、Bという判例があったとする。

Aの過失割合は「9:1」、Bは「7:3」

当然こちらはAを適用したい。

しかし、保険会社は少しでも支払いを抑えるためにBを適用したい。

ここまでくると話が難しくなってくる。

類似の判例を見つけ、更にその根拠(Aであるという主張)まで考えないといけないとなれば、当然素人には困難な作業である。

そこで弁護士が必要になる。

このような時には、原則的には弁護士を入れた方が良い。

なお、具体的な弁護士との付き合い方については、最終章の「弁護士の使い方」にて述べるので、そちらを参照頂きたい。

なお、これは良く耳にする話だと思うが、保険会社の内部では「弁護士基準」というものが存在し、一般の人が交渉する場合と、弁護士が交渉する場合では初めからレートが違う。

その点でも弁護士を入れた方が話は早いだろう。

これらの作業を経て、賠償金が決まるわけだが、率直に言って心から納得いく賠償金を受け取れることは「まずない」と考えておいた方が良い。

私自身、過去に様々な賠償に絡んできたが「満足した」ということは1件もない。

大抵は「こんなものだろう」という感じ。

過去の判例も、高額の賠償を認めたケースはほとんどなく、何となく「こんなところで」という双方の間をとるようなものが多い。

これは日本特有の「思いやり」とか「お互い様」的な精神が反映されたものだと思われるが、ちょっとした事故でも高額の賠償が認められる欧米などと比べると、法律に対しての出発点がそもそも違うのだと諦めるしかない。

これが残酷な事実だ。

しかし、賠償金交渉をする上で、まずこのことを理解することは極めて重要。

「絶対にやっつけてやる!!」と、あまり意気込んでもあとでがっくりくるだけなので、完全勝利はない、ということを知った上で「より高く」を目指すというマインドを持った方が良い。

植物か野菜を育てているような気分で、時間も手間もかかるが、出来るだけ大きくする。

そう考えてことに臨んで欲しい。

次回は「弁護士を上手く使う」

具体的に弁護士を上手く使う方法を解説したい。

第3回「弁護士を上手く使う」はコチラ

 

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4月 6th, 2025 by