世界最強の大統領を怯ませたのは誰なのか?


ある意味では予想通りに「予測がつかない」相場が続いている。

再び大統領の座についたアメリカのトランプ大統領。

その一挙手一投足に世界の株式、為替、国債が振り回され、市場は大混乱に陥っている。

「関税を大幅に上げる!!」

そう発表した時から株価は急落。

その後の3日間で約1,500兆円もの富が全世界から失われたそうだ。

しかし、そこから急展開。

4月9日。突然、関税の90日間停止を発表。

株価はV字回復し、一時期1ドル130円台まで進んだ円高ドル安も、今日現在(4/27)では143円台まで戻っている。

まったく人騒がせなおっさんだが、この「方針転換」の裏には米国債の「売り」があったとされる。

本日はこの件について解説したい。

まず、大前提の話から。

株が下がると、国債は上がる、金利は下がる。

という現象について。

株価が下落した場合、多くの投資家は米国債を買う。

不安定な株式市場を嫌って、安全性が高い米国債に資金を移すからだ。

株式市場が外洋なら、米国債は言わば「穏やかな湾内」という感じで、嵐が吹き荒れている外海から多くの船が逃げてくる。そうイメージすると分かりやすい。

当然、米国債を欲しがる人が増え、その価格は上がる。

例えば普段「額面1万ドル 利回り4%」の米国債が流通していたとしよう。

1万ドル(日本円で約143万円)で利回り4%ということは、毎年400ドル(約57,000円)の利払いがあるということ。

額面は1万ドルなのだが、これも「欲しい人」が増えれば、結局は米国債も「競り」であるため1万ドルが1万500ドルとかで売れる。

だが「約束された」利払いはあくまで400ドルだ。

1万500ドルで買っても、受け取れるのは毎年400ドルなので、利回りは低下する。

400ドル ÷ 10,500ドル = 0.038(3.8%)

つまり、本来は利回り4%だったものが3.8%に低下してしまうのだが、投資家としては「これも仕方なし」ということになる。

外(株式市場)は大荒れで、それよりはマシだからだ。

そして、米国債の利回りはイコール「金利」でもあるので、

株価が下がる → 債権が上がる(利回り低下) → 金利が下がる

となる。

この一連の流れは市場の自然現象とも言える。

しかし、今回はそうはいかなかった。

米国債が「売られた」からだ。

理由の一つはマージンコール。

多くのファンドは自己資金だけでなく、金融機関からお金を借りて資金を「膨らませて」運用をしているのだが、そのために証拠金というものを積んでいる。

いわば担保だ。

今回のように株式市場が急落した場合には、資産価値が減るため、今まで預けていた担保だけでは足らなくなる。

貸している方の金融機関は「担保(証拠金)が足りないので、新たな担保を出して下さい」と投資家に求める。

これがマージンコール。

これを支払わないと、持っている株などは強制的に売却されてしまい、ファンドを維持できなくなってしまうため、絶対に払わないといけない。

しかし、株価は急落中。

今売れば損をする。

そのため、手持ちの米国債を売って、何とか資金を捻出するという動きが発生する。

一方、先に述べた通り「市場が嵐」の時は米国債を買う人も多く現れるため、普通の嵐(変な言い方だが)であれば、需要(買い)と供給(売り)のバランスでは、やや需要の方が強くなり、米国債の価格は上がる(金利は下がる)

だが、今回は半端な嵐ではなかった。

ふたを開けてみると、需要(買い:安全資産への逃避)より供給(売り:マージンコール対策など)の方が多く、債券価格が下落した。

先の例で言えば、額面1万ドルの米国債が1万ドルでは売れずに9,700ドルとか、9,500ドルとかにディスカウントしないと売れない状態になったわけだ。

書い手からすればお得ではあるものの、繰り返すが、いくらで買っても「利払いは400ドル」

そのため、9500ドルで買った場合の利回りは4.2%程度に上昇する。

一緒に金利も上がる。

今回はこれが発生した。

更に追い打ちをかけたのが4月9日の「東京市場での謎の大量売り」

9日の東京市場において時間外取引(米国市場が閉まっているため)で大量の米国債が売られたのだ。

結果、利回りは4.51%(前日は4.29%)に急上昇。

アメリカの労働者階級を支持母体とするトランプからすれば、これは痛い。

この層からすれば「働きもせず、株で金持ちになっている奴らはけしからん!!」という考えであり、その思考からすれば株価の急落は「良い気味だ」くらいの気分だろう。

むしろトランプの支持を固める。

だが、金利の上昇は住宅ローン、教育ローンなどの負担増につながり、庶民の生活を圧迫する。

トランプが大統領になって生活が苦しくなった・・・

そう批判されるのは絶対に避けたいところであり、トランプ自らが起こした「ショック」の副作用だったとしても、金利上昇は決して許容できないのではないか?

それが故、9日には一部の国・地域への関税の90日間の一時停止を発表したのだろう、と言われている。

なお、トランプを「屈服させた」とされる4月9日の米国債の大量売りは、一部では「世界を救ったヒーロー」とも評されている。

東京市場での売りであったことから、日本の金融機関では?とも言われているが、その正体は未だ不明。

世界最強の権力者である米国大統領をもビビらせたのは誰なのか?

市場には何とも摩訶不思議な魔物が住んでいる。

本日のコラムでした。

 

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4月 27th, 2025 by