ゴールデンウィーク前半、万博、大阪、奈良を2泊3日で旅してきた。
妻は仕事の都合で初日の万博だけ「日帰りで参加」という強硬スケジュールで、2日目以降はこの4月から中学生になった上の娘、小学校3年生の息子、そして私という3人だ。
てっきり娘も妻と一緒に帰るのかと思ったのだが「奈良にも行く」と言う。
そもそも万博は娘の希望で行くことになったので、それに「行く」のは当然だとしても、奈良まで一緒に来るのか・・・
「奈良だよ?お寺と神社ばっかり巡るんだぜ?ホントに来るの?」
そう何度も確認しても、ついてくると言う。
私自身、中学生のころは親と一緒にどこかに行くのが嫌で仕方がなかった。
出来れば家で留守番をして、自由な時間を満喫したかったタイプだったので、この「一緒に行く」という申し出は意外だった。
なお、このように書くと娘と仲が良いような印象を持たれるかもしれないが、全くそんなことはない。
最近ではパパべったりというような奇怪な父娘関係もあるようだが、うちのそれはそんな甘ったるいものではなく、基本私から話しかけてもさしたる反応はないし、娘から何かを話かけてくることも稀だ。
そういう意味では、正直なところ「アイツも来るのか・・・」と、多少鬱陶しくもある。
息子と二人のボーイズクラブ的な旅ならば、さほど気を遣うこともないが、そこに年頃の娘が入ってくることで、色々と配慮しなくてはいけないからだ。
とは言え、断るわけにもいかないので仕方なしに一緒に行くことにした。
で、ここから色々な話が展開し、最終的には「娘との旅も良いものだ」的なオチになるのだろう?と想像されているかもしれないが、実際には事前の予想通り、特に何かがあったわけではない。
時系列で話していこう。
初日の万博。
これは流石に娘自身の希望なので、非常にテンション高く、とても楽しんでいた。
私も「行って良かった」という感想。
各国のパビリオンはそれぞれの国を象徴した凝ったデザインのものが多く、それらが並んでいる通りを歩くだけでも楽しい。
色々と辛らつな批判が目立つが、行けば結構楽しいので、是非足を運んでみて欲しい。
さて妻が去った二日目、「お笑いが見たい」という息子の希望で吉本新喜劇を鑑賞。
二人とも大爆笑していたが、「すんごい楽しかった!!」という子供らしい感想を述べる息子に対して、娘は「まあ、意外と楽しかった」という程度。
「意外とってなんだ?」と多少腹が立つ。
午後、奈良に移動し興福寺、東大寺を鑑賞。

国宝、重文(重要文化財)のオンパレードに、神社仏閣好きの父は大興奮。
息子は多少それに合わせる気持ちがあるのか「ほー」とか「おお!!」とか感嘆の声を上げ、時には仏像と同じポーズをとりおどける。
で娘はと言うと、先人たちが遺してくれた至宝を一瞥するのみで「外で待ってる」とさっさと出て行ってしまい、外に出ればスマホをいじっているという有様。
なお、余談ながら奈良のお寺の拝観料は意外と高く、大人だと1500円~2000円程度。子供もその半額かかる。
もちろんそれだけの価値はあるし、維持・修繕にはお金がかるので、全く問題はないのだが、拝観料を支払ってもわずか数分で出てきてしまうなら、初めから外で待っていれば良いではないか?とも思う。
そこで、興福寺、東大寺以降は「外で待っているなら拝観料の1/2を支給。どうする?」と提案した。
二人とも「考えるまでもない」とばかりに1/2支給を選択し、その金で鹿せんべいを買い、おびただしい鹿たちにもみくちゃにされていた。
これも余談ながら、奈良の鹿は可愛い見た目と異なり狂暴で、せんべいを持っているのにそれを出し渋ると、角で小突いてきたり、噛んできたりするのだが、娘としては「結構楽しかった」らしい。
3日目、最終日は奈良県の南部、飛鳥時代に建立された法隆寺や、古墳時代の巨石遺跡(石舞台、酒船石など)を見て回った。
法隆寺は本当に素晴らしく、1400年もの間、地震、火事、戦乱などに巻き込まれずに在りし日の姿を保ってきたことはまさに「御仏のご加護」だとしか思えない。
不信心な私ですらそう感じた。

ちなみに法隆寺の拝観料は大人2000円、子供1000円。
子供たちは「wait(外で待機)」で1/2の500円ゲットを選択し、父は悠久の時を漂う世界最古の木造建築物を一人で堪能してきた。
お互いにとって良いディールだ。
続いての石舞台は、子供の入館料が100円だったためwaitは50円。
報酬があまりに低額だったのと、流石に待つことに飽きたのか一緒に見ることになった。

子供の頃から何度も写真で見てきた遺跡なので、私は感慨深かったが、子供たちは「登れないなら面白くない」という非常に罰当たりなコメントを残すのみ。
以上で旅は終わり。
さほどの興味も感動も示さず、娘は淡々と旅についてきたが、一体こいつは何が目的で来たのだろうか?・・・・
多少のヒントになるのは食事と小遣いだろう。
もともと良く食べる子だったが、今回の旅では一際よく食っていた。
朝から唐揚げ定食を平らげ、昼食も夕食もがっつり食い、途中でも何だか甘いものを食っていた。
「お前、よく食うな・・・」
まさにこれこそ「成長期」なのだろうと感心した。
そして、私の後をついてくれば小銭が落ちてくる。
我が家では旅のはじめに「小遣い」を渡し、原則、旅の途中はそれを使うように指示している。
都度「これ買って」と言われると「そんなもの要らない!!」、「似たようなもの持ってるだろ!!」と口論になり、お互いの精神衛生上宜しくないので、あくまで自分の判断で使え、使い道については不問、そういうルールになっている。
実際、今回の旅でも行く先々で何だかよく分からない小物を買い込んでいた。
更に前述のようにwait報酬のようなものもあるので意外と稼げる。
そして、その追加資金でさらに買い物、買い食い。
ああ、つまりは好きな物を食べれて好きな物を買える「アルバイト」のようなことか・・・・
そう考えると合点がいく。
そういうことか?
帰りの新幹線、娘にそう問う。
「さあ、どうでしょうか」
スパイが尋問を受けているような無感情な表情でそう答えていた。
でもそれで良い。
彼女には彼女なりの計算があり、つまりはそれが大人になるということだろう。
この父に利用価値があるうちは後ろをついて回れば良い。
いつか自分一人の道を進むその日までは。
本日のコラムでした。
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