御社の強みは?中小企業経営者の本当の「強さ」


うちの強みって何だと思う?

FP(ファイナンシャルプランニング)、保険、不動産が弊社の事業だが、その仕事の中で多くの中堅中小企業の経営者とお会いする。

そんな時、こんな質問を受けることがある。

もちろんその経営者ご本人も自社の強み、弱みを分析しているのだが、外部の第三者の意見が聞きたいのだろう。

そんな時は怒られるのを覚悟の上でこう言う。

「強みは・・・ないですね」

と。

はっきり言えば、中堅中小企業が「中堅中小」であり続ける理由は「強みがないから」ということに尽きる。

要は似たようなライバルが同じ業種内にいて、マーケットを独占出来ないから、中堅もしくは中小で居続けるわけで、明確な「強み」があるのであれば、理論上は大企業になるはずだ。

その観点から言えば、その企業が他社と比較できる点は「より多く売る(売上)」、「より少ないお金で回す(経費)」という2点でしかなく、そのためにはシステムや人材に投資をし、それがしっかり回るように実行していくしかない。

マーケットは限られていて、プレイヤーはたくさんいる。

その中で「より上手く」やった者が相対的に成功をする。

この「上手く」という点はなかなか明文化することが難しい。

たった一つ、もしくは2,3個の要因ではなく、日々のひたむきな努力と地道な改善の結果でしかないが、反面、それらの一つ一つが別に「強い」わけではないからだ。

つまりは当たり前のことを当たり前に「やり続ける」ことが出来る企業だけが残り、敢えて言うならば、それらの陣頭指揮をとる経営者のモチベーションと、それを支える健康な体こそが「強み」だとも言える。

ここまで説明すると大抵の経営者は納得してくれるが、次の一言も決まっていて

「結局は俺かぁ。」

となる。

なお、このような中小企業の成長論の話になると、必ず

誰もやっていない事業や技術(イノベーション)こそが企業を飛躍させる!!

という流れになりがちだが、当然ながらそんなものがポンポン出るほど甘くはない。

本人としては画期的なものを提供しているつもりでも、実際には「魚がいない池で釣りをしている」ことも多々あり、また運よく魚がいても、それが多すぎるとあっという間に大手資本がなだれ込んで来て、血の池と化してしまう。

中堅、中小が狙うべきは「適度に魚がいる池の独占」であり、この塩梅が何とも難しい。

そして、これを「狙い続ける」ことこそが最も困難でもある。

経営者なら誰でも一度や二度は「新しい池」に挑戦する。

しかし、上手くいかない。

お金と時間と気持ちをかけてやったことが失敗するのはかなりしんどいし、こればかりは経験した者でないと分からない。

ビジネス本などで大企業の経営者が

「うちは失敗を許容する文化。若い人にはどんどん失敗して欲しい」

などと綺麗ごとを言っているのを見かけるか、大企業の失敗は全体のコンマ何%の損失で済むが、中小企業の失敗は数十%の損失となることもあり、最悪は倒産してしまう。

これを何度か経験すると

「余計なことをせず、コモディティー化した市場(大きな池)で『上手く』まわす方が効率的に稼げる」

という真理にたどりついてしまう。

ある意味では挑戦を止めた「諦め」の状態だが、経験上、このフェーズに入った企業は強い。

明確な強みなんてない。

ただ愚直にやるべきことをやるだけだ。

そう覚悟が決まった瞬間、BS(貸借対照表)の資産が増えていき、経営者の個人資産も増大する。

自分にはさしたる才能はない。

そう気づいた時が中堅中小企業の経営者としてのスタートなのかもしれない。

自分自身への自戒の念を込めて、最近そう思ったりもする。

本日のコラムでした。

 

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5月 11th, 2025 by