相撲協会 決算から見る白鵬の退職


自主的な退職。

表向きはそうなってはいるが、実質的には協会に追い込まれたようなものだろう。

元白鵬、先代宮城野親方(本稿では白鵬とする)の話。

現役時代から色々と問題があったとは言え、記録ずくめの偉大な横綱への対応としては随分つれないが、先日の退職の記者会見を見るに袂を分かつのも必然のような気もする。

白鵬の目指すところは、よりグローバルに、よりエンターテインメントに、という志向であり、伝統を重んずる「大相撲」からすれば相容れないのだろう。

相撲とは神事であり、国技であり、世のスポーツとは一線を画す。

つまりは「日本人による日本人のためのもの」ということなのだろう。

それが故、外国人の参入も厳しく制限されている(1部屋1人まで)

これも昔は「1部屋2人まで」だったのが、あまりに外国人力士が強すぎるため、2002年に制限を強めている。

はっきり言えば時代遅れ。

世界のスポーツビジネスの潮流として、世界中から一流の選手を集める、ということが当然であり、野球、バスケ、サッカーなどでは外国人に対する制限は相当に緩い。

そのような中にあって、逆に制限を厳しくするというのは、完全に逆行している。

また、近年、日本人の力士志望者が減っており、2024年の新弟子は53人と過去最少。

それらの影響もあり2024年の初場所では力士の総数が45年ぶりに500人台(599人)となり、若貴ブームに沸いた1994年との比較して36%も減っているとのことだ。

このまま「純ジャパニーズ(純ジャパ)戦略」を続けていれば、だれがどう見ても将来の衰退は明らかなのだが、それでも変わらず外国人を制限し、白鵬などの改革派の芽を摘む。

「変わらない、変わりたくない、変われない」

といういかにも日本らしい価値観を体現していると言える。

「さぞかし業績も落ち込んでいるのだろうな」

そう思って、相撲協会の収支関連資料を漁ってみたが、これが逆に驚く結果となった。

以下にその数字を抜粋する。

売上

2024年度 146億円
2023年度 133億円
2022年度 125億円
2021年度   75億円
2020年度 104億円
2019年度 114億円
2018年度 124億円
2017年度 126億円
2016年度 120億円
2015年度 114億円
2014年度   90億円

注:億円以下は切り捨て

コロナ禍である2020年、2021年を除けば売り上げが伸びている。

昨年(2024年)などは、特に相撲が耳目を集めるようなことがあったわけでもなく、またスター力士がいたわけでもない中での前年越えの売上をたたき出したことは素直に凄いと思う。

今回の件で「悪役」とされている現理事長の八角親方。

2015年より理事長を務めており、それ以前の理事長は最長でも6年程度なので、就任10年となる八角親方は異例ではあるが、この数字だけを見れば

「数々の不祥事、コロナを乗り越え、順調に売り上げを伸ばしている名経営者」

と言えなくもない。

本人としても、周りからしても代える理由はないだろう。

また、BS(貸借対照表)を見ても、相撲協会は300億円近い純資産を持っており、財務体質は極めて強い。

一般論として、このような状況での変革は難しい。

だが、10年後は分からない。

日本人力士の数が減り、外国人力士を制限すれば、必然的に「小粒な力士」たちの集まりになり、大相撲ならではの「迫力」も徐々に欠けていくだろう。

果たして興行としての魅力を維持できるか?

対して、協会を去った白鵬は世界中の相撲に類似した競技を集約し、新たな相撲リーグを構想しているそうだ。

しかもそのバックにはあのトヨタの豊田章男氏がいるという。

このあたりの対立軸は既得権益集団 vs ベンチャーという構図であり、何とも面白い。

ちなみに私自身は圧倒的に白鵬びいきだ。

既得権にしがみつく醜い老人たちを、現役時代さながらにやっつけて欲しいと切に願っている。

ああ、結局最後は悪口か・・・・

本日のコラムでした。

 

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6月 14th, 2025 by