7月5日の予言 裏でほくそ笑む人は?


前々から噂は聞いていたが「2025年7月5日 4時18分」に日本に大災害が起こる。らしい。

中学1年の娘の学校ではその話題で持ち切りで、7月5日の朝にはクラスLINEで全員の「安否確認」をするのだという。

話の大本は、とある漫画家が見た夢を記した「予言書」らしく、過去には東日本大震災を言い当てた「実績」もあるそうだ。

この手のものの類似として、我々世代ではノストラダムスの大予言がある。

1999年7月、恐怖の大王が・・・・

というもので、その時が来れば人類の歴史は終わるとされていた。

コンプライアンスという概念すらなかった当時、テレビではこれが真実のように取り上げられていて、私を含めた少年少女を震え上がらせていたのだから、今思えばとんだ笑い話だ。

時を経て、様々なファクトチェックがされた。

・中世のフランスにノストラダムスという医師が実在

・占星術師でもあり、その占いが良く当たったことで、王侯貴族の中に熱狂的な支持者がいた(同時に詐欺師呼ばわりする人たちもいた)

・複数の意味不明な詩を遺しており、後世、それが様々な作家の「解釈」によって「予言書」となった

・日本では五島勉という作家がノストラダムスを紹介し、一大ブームを巻き起こしたが、明らかな改ざん、誤訳、独自解釈などがある

以上のことから「五島氏の創作」であることが判明している。

私自身、小学校、中学校のころはこの大予言を信じきっていたが、1999年にはすでに社会人2年目で多忙を極めていたこともあり、このこともほとんど忘れていた。

そして、周知の通り、恐怖の大王が現れることもなく、人類は無事に1999年の8月を迎えた。

この話がブームだった1980年から1990年代前半。

まだネットはなく、情報を得る手段はテレビ、新聞、書籍・雑誌しかなかったし、そこに書かれていることは「真実」であるとされていた。

だからこそ「ノストラダムス」のような現象が発生したのだろう。

ひるがえって現代。

これだけネットが普及し、一つの情報に対して、様々なチェック、賛否があり、どんなことでも瞬時に丸裸にされてしまう。

例えば冒頭の「7月5日4時18分」についても、ちょっと調べただけで巷で言われていることと違うことが判明した。

この漫画家が見た夢は「2025年7月に大災害が起こる」というもので、7月5日4時18分などとは断言していない。

しかし、夢を見た際に、内容を忘れないようすぐにメモを取る習性があり、この夢を見て、それを記した日が「7月5日4時18分」だったそうで、それと「2025年7月」がごっちゃになって流布した話だそうだ。

また、仮に「2025年7月」に何かが起こったとしても、南海トラフ地震や首都圏直下型地震は常に「いつ発生してもおかしくない」と言われている状態なので、それが2025年7月だったとしても、それは必然でしかない。

実際に当たったとしたら予言としては大したものだが、それもただの偶然だろう。

と、ちょっと検索しただけでもここまでの情報が判明してしまうにも関わらず、多くの人が、しかも子供だけでなく大人も「7月5日」を信じてしまう。

事実、飛行機や新幹線、レンタカーの予約などが一杯で、これは首都圏を逃れる人が多いということを表している。

ネットがなかった昭和、平成初期のノストラダムス現象と同様のことが、令和の世にあっても起こる。

そうなると情報の精度がどうこうという話でもないのだろう。

不安情報を無条件で信じてしまう人はいつの時代でも一定数いる。ということだ。

なお、この騒動。

一番喜んでいるのは損保業界だ。

何でもこの数週間。火災保険と地震保険の新契約がうなぎ登りなのだそうだ。

「やばい!!大災害が来る・・・家の保険に入らないと!!」

そう思った人から問い合わせが相次ぎ、保険会社としては嬉しい悲鳴を上げているとのこと。

まあ、これ自体は悪いことではない。

予言うんぬんは置いておいても、災害はいつ来るか分からない。

それこそが真実であり、それに備えることは極めて大事だからだ。

くだんの漫画家さんには、保険業界を代表してお礼を申し上げる次第である。

本日のコラムでした。

 

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7月 5th, 2025 by