ネットの断末魔・・・誰かためのコンテンツ?


先日、日経ビジネスに非常に興味深い記事を見つけた。

現在、大手の情報サイトや口コミサイトのPV(閲覧数)が大幅に減っているのだそうだ。

例えば旅行サイトとして著名なトリップアドバイザー(米国)では、前年比で50%近くPVが減少しているとのこと。

その理由はAI

何かを調べようとした際、AIエージェントに聞く人の数が増えた。

AIは各サイトから集めた情報を分かりやすく「まとめて」くれる。

一昔前ならユーザーがあちこちのサイトを見て情報を集めていたが、それをAIが代行してくれるため非常に便利だ。

だが、AIは一度見たサイトの情報は忘れない。

そのため何度も閲覧することはないし、その情報を複数のユーザーに与えるため、結果的にサイトのPVは激減する。

「そりゃそうだろうね」

という話なのだが、より深刻なのはAIが「広告を踏まない」ということ。

多くのサイトの収益源が広告であるため、文章だけを見て(さらに完全記憶して)去っていくAIは好まざる客ということになる。

まだ決算上のデータとしては出てきていないが、多くのサイトで広告収入が減っていることが想定される。

その顕著な例がYahoo!ニュースではないだろうか?

最近、Yahoo!ニュースではページ移行時に全面広告が導入されたのだが、これが多くのユーザーの不興を買っている。

全面広告は広告を強制的に見せる手法で、その広告を閉じないと記事が見れない。

つまりユーザーにとっては余計な手間だ。

また広告を閉じるつもりが間違ってその広告を踏んでしまうこともあり、そのためネット広告業界では長く「下の下のやり方」とされていた。

そういう意味では「まさかYahoo、お前もか・・・・」という印象で、裏側を推測するに相当厳しいかもしれない。

Yahooですらこのような状況なので、それ以下の中堅、中小サイトは推して知るべし。

名の通ったサイトでも、最近では広告が激しすぎて、肝心のコンテンツまでたどり着けないようなことも多い。(広告を閉じる「×」印がどこにあるか不明で閉じられない、など)

と同時に広告単価を上げるためか、投資詐欺やアダルト関係の広告も増えた。

まさにネットの断末魔が聞こえるような状況だ。

だが、これらの「AI化」はそれを使いこなすユーザーにとっては有益でもある。

無駄に色々なサイトを見なくてもAIエージェントが必要な情報を集めてくれるので、時間と労力の節約になる。

いくらネットが荒れようが、AIが上澄みをすくい取ってくれるからだ。

一方、コンテンツ制作側からすると、広告収入の減少はコンテンツを作成するインセンティブを減らすことになる。

少なくないコンテンツ制作者がその手を止めてしまえば、結果的にネット上には低レベルな、もしくは、更新されていない古い情報のコンテンツで溢れ、それをAIがいくら見たところで、その「まとめ」はかなり不正確なものになってしまう。

もちろんこれらの話はイタチごっこであり、今後はAIそのものがコンテンツを生成するようになるだろう。

しかし、それすらどこかの人間が「命令」をして作らせるものであり、何のインセンティブもなく、AIに上澄みだけ取られることを覚悟して、見ず知らずの人のために命令を下す人がどれだけいるか?そういう話にもなってくる。

ネットという大海そのものに栄養(有益なコンテンツ)がなくなれば、つまりは上澄みすらなくなってしまう。

いずれにせよ「広告」という黎明期からネットを支えてきた事業モデルが一つの曲がり角を迎えていることは事実。

次の「モデル」が確立するまでにはしばらく時間がかかるだろうが、さてどうなることやら。

本日のコラムでした。

 

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10月 4th, 2025 by