ヒーローより悪役へのシンパシー 小4男子かく語りき


「なんかさぁ、最近、ヒーローが入ってこないんだよねぇ」

小学校4年生の息子がそう言う。

「ほう。何で?」

面白そうな話が始まる予感がし、続きを促した。

「うーん、上手く言えないんだけど、毎回、同じことやっててきりがなくない?」

「むしろ悪役の方が、何でそんなことするのか?って考えちゃうよ」

ここから本人が色々と説明をしていたが、そこは小4。

何を言っているのか分からない部分も多いため、以後、本人の話を「意訳」する。

・悪者は街を破壊したり、人類を変な姿にしちゃったり、やっていることがえげつない

・毎回、違う悪者が出てくるが、毎回、同じヒーローにやられる。やられ方もほぼ一緒

・何が目的でそんなことをしているのか?その動機に興味がある

・むしろヒーローであるなら、悪行の原因となる根本的な問題を解決するべきなのに、毎週、目の前に出てきた悪者をやっつけることしかしない

・それで「良かった、良かった」となるが、それでは来週また同じことが起こるではないか?

 

もちろんこれは、上手く言語化出来ない本人の話を聞いて「多分、こういうことが言いたいのだろうな」と私が推測した部分もあるのだが、ほぼ彼の思いと合致しているだろう。

つまるところ、目の前で起こる問題を「もぐら叩き的」にしか対処しないヒーローに対し、悪者の方が何かしらのポリシーに基づいて行動しているという点では、むしろそっちの方を深堀りしたがっているようだった。

これも成長だろう。

現実社会での「悪」の動機は、金、欲、復讐、孤独など様々だが、私の肌感覚としては90%が「金」だ。

ぶっちゃけお金があれば、処罰される、場合によっては自らの命さえ失くす(死刑)リスクがある犯罪などには手を染めない。

そういう意味では、ほとんどの犯罪の根っこには貧困がある。

だが、ヒーローものに出てくる悪役は破壊行動を繰り返すだけで、金銭を要求することなどしない。

そうなると、そこには何かしらの思想があり、現体制の転覆を目的としていると考えるのが妥当だ。

現実社会であれば、古くは共産主義の革命思想であり、近年では「政府などいらない」というリバタリアニズム(自由市場主義)にあたる。

ではヒーローものにでてくる「悪」にはどうような思想があるのか?

興味本位でそのことをchatGPTに問えば、以下のような5つの「思想」が返ってきた。

1 弱肉強食こそ正しい

強い者が支配するべき、弱者(人間)は淘汰されるべき

2 世界を作り替える

今の人間社会は間違っているから、一度破壊して理想の世界を作る

3 永遠の平和のために自由を奪う

人間は愚か。すぐに争いを起こす。ならば全員を支配すれば平和になる

4 復讐

自分の種族が迫害された

5 楽しければ何でも良い

破壊が楽しい、人が苦しむ姿が見たい

 

5は論外だが、それ以外の4つは共感できる部分もある。

1は人間自体が過去にやってきたことであり、上位種が現れれば、当然我々人間も同じ目にあう。

2も今の世界を「何かが間違っている」と感じる人も多いだろう。

3についてはやや共産主義的な印象を持つが、これもある種の理想論としては分からなくもない。

ドラマの中ではこれらの思想を細かく説明しているわけではないが、息子はそのエッセンスを感じ取ったのか、子供ながらに「別に間違ったことは言ってないよね」という感想を持っているようだった。

端的に言えば、

「やり方(破壊活動)は間違っているけど、主張は分かる。だったらお互い話合えば良いのに・・・・」

ということ。

ここまで理路整然とはしていないものの、これが彼の主張のようだった。

しかし現実社会と同様、ヒーローものでも結局は力でねじ伏せるだけだ。

毎回、「思想の殉教者(悪役)」が現れ、複数のヒーローに倒される。

よりリアルに言えば殺される。

最終話にはボスが処刑され、翌週からまた同じようなストーリーが始まる。

これが繰り返されるだけ。

「お互いの共存を目指すために、協議を進めることに致します」

そんな最終回があっても良い。

その決断と実行が出来る者こそ本物の「ヒーロー」だ。

子供が本当に見たいヒーローものは実はそんな物語なのかもしれない。

悪の側にも思いを馳せる。我が子の成長を実感した出来事だった。

本日のコラムでした。

 

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7月 19th, 2026 by