基礎年金の「底上げ」その裏側に迫る


本日は、昨今話題になっている「基礎年金の底上げ」について解説したい。

底上げ、そこには甘美な響きががあるが、実際にはどうなのだろうか?・・・・

まずは、

基礎年金って何?

ここから行こう。

正式名称は老齢基礎年金と言う。

その名の通り、年をとってからの生活を支える基礎的な年金だ。

だが、この基礎年金。勘違いしている人が多い。

皆さん、こんな意識を持っていないだろうか?

・国民年金加入者は基礎年金のみを受け取る。(いわゆる1階部分)

・厚生年金加入者は基礎年金(1階)と厚生年金(2階)の両方を受け取る

・基礎年金の財源は国民年金保険料で賄われる

私の感覚では、90%の方がこのように考えているのだが、実際には違う。

冷静に考えてみて欲しい。

基礎年金の受給者は、国民年金を収めていた個人事業主だけでなく、会社員も受け取る。

更には会社員の配偶者の専業主婦(3号被保険者)も保険料を支払っていないにも関わらず対象になる。

これだけ多くの人が受け取る基礎年金の財源が国民年金の保険料だけで足りるわけがない。

実際の数字を見てみよう。

厚労省が公表している以下の資料が分かりやすい。(令和2年度実績)

まず左上の1号被保険者(個人事業主など)からの保険料収入が1.3兆円。

それが国年勘定(国民年金勘定:要はお財布)に入る。

この勘定には10.3兆円のお金がたまっているが、そこから国庫負担(税金)の1.8兆円を加え、基礎年金勘定(お財布)に3.3兆円が投入されている。

つまり国年勘定からは1.5兆円(3.3兆円-1.8兆円)が支出されているわけで、保険料収入が1.3兆円なのだから「財布はマイナス」であることが分かる。

対して下の厚生年金。

こちらは保険料収入が37.3兆円もあり、厚年勘定(厚生年金勘定)も219.3兆円ものお金が溜まっている。

この厚年勘定からも21兆円(うち国庫負担が10.5兆円)が基礎年金勘定に拠出されている。

そして、それらがプール(貯蓄)されている基礎年金勘定からは、24.5兆円が実際の基礎年金として支払われているわけだ。

基礎年金勘定単体で見れば、国年勘定から3.3兆円(うち国庫負担1.8兆円)、厚年勘定(うち国庫負担10.5兆円)から21兆円、合計24.3兆円が入ってきて、24.5兆円を支払っているので、0.2兆円ほどマイナスとなっている。

ここから分かることは以下の3つ。

・基礎年金のおおよそ1/2は税金

・基礎年金には厚生年金の多額の積立金が流入している

・国年勘定、基礎年金勘定ともに「財布としては」マイナス

ここで冒頭の「勘違い」だが、多くの人が基礎年金の主な財源は国民年金の保険料であり、「多少税金も入っているんだろうね」くらいの認識でいる。

しかし、実際には給付24.5兆円に対して、国民年金の保険料は1.5兆円ほどで、その割合はわずか6%程度でしかない。

半分は税金で、残りは厚生年金の積立金ということになる。

だが前述の通り会社員も、その妻(3号被保険者)も基礎年金を受け取るわけだから、厚年勘定から基礎年金勘定にお金が流れるのは当たり前の話でもある。

そうなると、会社員(厚生年金加入者)からすれば、こういう疑問が浮かんでくる。

「自分たちの保険料が入っていることは理解できた。でも、自分が払った分が国民年金にしか入っていない人の給付に使われているのではないか?それは不公平ではないか?・・・」

これに対して、明確な答えはない。

そもそも日本の年金は賦課方式と言って、自分が積み立てた分が自分に戻ってくるわけではない。

現役世代の保険料が、「現役」の高齢者を支えているわけで、一旦、基礎年金勘定というブラックボックスに入ってしまえば、それがどう使われているのかはよく分からないのだ。

厚労省の資料を見ても、どういう割合で保険料が使われているのかは判然としない。

ただし、

「国民年金しか払っていない人の給付にかなり使われてるだろうね・・・」

ということは容易に想像できる。

最近のマスコミはとにかく数字が稼げれば何でも良いというスタンスで、今回の件も厚生年金の資金が基礎年金に「初めて」使われるような印象を与えているが、「既に」厚生年金の保険料は基礎年金に流入しているし、「既に」足りない分にも使われている。

今回の「基礎年金底上げ問題」を正確に言うのであれば、

「もっと厚生年金を使います」

「もっと税金を投入します」

というだけで、特に目新しいことはない。

むしろ過度の税金投入は増税と表裏であり、マイナス面の方が大きいようにも思う。

更に、今回はあくまで自民、公明、立憲民主の3党の「合意」だけであり、結論は4年後の「財政検証」の結果を見てから。

財政検証は5年に一度行われる年金の「健康診断」と言われるもので、その結果次第では今回の「合意」など吹き飛んでしまう。(そもそも自民党が政権与党にいるかどうかも怪しいが・・・)

さあ、どうなるだろうか?

結論は4年後だが、私も含めて覚えている人などいないだろう。

何とも「チョロい」国民である。

本日のコラムでした。

 

 

 

 

 

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5月 28th, 2025 by