ルーブル155億の損害?!美術館を丸ごと守る保険とは?


美術品の盗難事件が好きだ。

こう書くと何やら誤解を招きそうだが、子供の頃からこの手の話にワクワクする。

我々の世代は、ルパン三世やキャッツ・アイなど泥棒を主人公としたアニメを目にする機会が多く、もしかしたらその影響かもしれない。

そして彼ら、彼女らがターゲットにしていたのが、いわゆる「お宝」

金銀宝石を散りばめた王冠や、高額な絵画などをいつも狙っていた。

と、こんな書き出しで始まったが、実は2025年は「大盗難の一年」でもあった。

我々、保険業界は「損害」に敏感。

大災害やテロ、盗難などが発生すると、すぐに「損害額どれくらいなんだろう?保険会社どこなんだろう?」などということが気になる。

ある種の職業病だ。

そんな中、2025年は世界中の美術館から様々なものが盗まれ、特に大きな話題を集めたのが、ルーブル美術館。

10月19日、家具運搬用のクレーンを使い、普通の人間では出入りできない高い位置にあった「窓」から、2人の男が館内に降り立つ。

そこから、わずか7分たらずで「ルーブルの至宝」と評されるフランス王室の宝飾品8点を盗難。

表に止めてあったスクーターで逃走した。

美術館の開館時間中、白鳥堂々の犯行だった。

なお、翌週10月25日には実行犯の二人は捕まっているが、盗まれた宝飾品の行方は依然として分かっていない。

世界的なニュースにもなったので覚えておられる方もいるだろう。

その被害額は1億200万ドル。日本円にして160億円だというのだから驚く。

盗まれたルーブルには申し訳ないが、随分と簡単な手口にやられたものだと呆れるしかない。

だが、実は全世界的に同じようなやり方が「流行っている」。

1月、オランダの美術館でも「ドアが爆破」され、7億円相当の価値がある黄金の兜が盗まれているし、12月にもブラジルの美術館に武装した二人組が押し入り、アンリ・マティスの版画などを含む8点を盗んで逃走している。

どれも力任せの荒っぽいやり方だが、シンプルイズベストで、犯罪学的にはかなり有効なのだと言う。

美術館は本来、作品を展示し多くの人に「見てもらう」ことを目的としている。

そのため、建物自体が開放的に作られており、また歴史的建造物が流用されているケースも多い。

ルーブル美術館などはもともとは宮殿だった建物で、門も多く、しかもそれ自体が芸術品のようなもの。

そのため、警備のための施設や装備を配置するにしても自由度が低い。(穴を開けるなどの工事が出来ない。法隆寺に工事が出来ないと同じ)

今回の盗難も「ガレリー・アポロン」というそれ自体が歴史的な価値を持つ窓から侵入されたそうだが、

「まさかそんなところから入ってくるわけがない」(しかも開館中に)

という心理的な裏を突かれたようだ。

更には美術館は収蔵している価値に値するだけの防御力、つまり武装力を持っていない。

常駐の警備員はいても、せいぜい持っているのは警棒と拳銃程度で、そこに自動小銃などを持つ強盗が入ってくれば、応戦することなど出来ないだろう。

そして、前述のように建物が開放的でもあるため、逃げやすい。

要は「防ぎにくい」のである。

そこに数億、数十億の「お宝」が並んでいるのだから、犯罪組織からすれば良いターゲットだ。

それが顕著になったのが2025年ということになる。

なお、ルーブルの至宝群。なんと無保険だったそうだ。

その理由はどこにも書いてないが、推測するに「保険が成立しない」のだと思う。

ルーブルほどのコレクションともなると、その価値は計り知れない。

ルーブルの収蔵品の中ではダ・ヴィンチ作のモナリザが有名だが、同じダ・ヴィンチのサルバトーレ・ムンディが2017年に700億円という美術品の史上最高格で落札されていることから考えても、少なくとも2000億、もしくはそれ以上の価値がありそうだ。

何兆、何十兆円という価値の保険を受けられる会社などないし、かつそれに見合う保険料を一美術館が負担することも出来ない。

リスク量と保険料のバランスが取れないのだ。(保険の不成立)

だが、今後はその流れが変わりつつある。

現時点では美術品を貸し出す際に「借り手側」が保険をかけることはあっても、自館の所蔵物には保険をかけていない。伝統的にそうなのだと言う。

おそらく、どこも収益に苦しんでいるため、保険料を捻出出来ないことが主な原因なのだろうが、そうは言っていられなくなった。

年々、荒っぽい、まるで「強盗」のようなやり方が多くなっているため、どこの美術館も戦々恐々としているのではないか?

そのため「美術館丸ごと保険」のようなものが海外では出始めている。

日本にはまだない。

しかし、個人的には日本は相当危険だと思っている。

文化度が高いのか、それともバブル期に買い漁ったからなのか、日本では地方自治体が運営する小さい美術館でも驚くべき逸品を保有している。

ある東北地方の美術館にルノアールやマティスなどが並んでいて度肝を抜かれたことがあるが、更に驚いたのはそれがノーガード(ガラスにすら入っていない)で飾ってあったこと。

フロアには静寂を強制するための学芸員はいても、警備員の姿はない。

プロが盗もうと思えば、さほど難しくはないのではないか?

現代の強盗は、ルパンやキャッツ・アイのようにスマートではない。(ルパンはたまに強引だったが)

そういう意味では、2026年は日本の美術館でも似たような事件が頻発するような気がしている。

もし、美術品丸ごと保険のようなものが販売されれば、美術に(と言うよりその金額に)造詣が深い私が是非ご提案したい。

各美術館の担当の方、ご連絡をお待ちしております。

本日のコラムでした。

 

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1月 18th, 2026 by