ポスティングの向こう側


先日、ひょんなことからチラシのポスティングをした。

ある知人から事業拡大の相談を受け、ああでもないこうでもないとアイディア出しをしたものの、結局のところ

「近隣にチラシを撒くのが最も効果的では?」

ということになり、スタッフ総出でそれをやることになった。

外部業者に委託をしても良かったのだが、どれほど成果があるか分からないものにコストをかけるより、「まずは自力でやってみよう」という流れになり、行きがかり上、私も協力することに。

チラシは1万枚。

1人1000枚、10人でそれを撒く。

まずはチラシを2つ折りにするのだが、まずそれだけで1時間かかる。

それを終え、私に割り当てられたエリアに移動し、ポスティング開始。

都内のマンションが立ち並ぶエリアだったので、それらを移動しながらチラシを次々と集合ポストに入れていく。

ポストには様々なタイプがあり、入れやすいものもあれば入れにくいものもある。

新築や築浅マンションの場合、郵便受けの入口のプレートのバネが異様に強く、まず指で軽く押してからでないとチラシを入れることが出来ないところが多い。

逆に古い物件ではバネが弱くなっているので、チラシだけをスッと入れることが出来るので楽だ。

最も難物なのがコレ。

後で調べたところNASTAという会社の商品らしいが、まずプレートを手前に跳ね上げる必要がある。(通常の郵便受けは押し込み型で、プレートがポストの内側に開く)

それを指で上に上げて、そこから入れるのだが、更に奥にドミノのような形をした薄いプラスチックが暖簾のように並んでおり(おそらく盗難防止機能)、そこでも抵抗がある。

とにかく入れにくい。

ポスティングの「最大の敵」とも言える。

また、10戸に2,3戸は「郵便物や他のチラシでいっぱい」のポストがあり、空室なのか長期不在なのか、それともただの面倒臭がりなのか・・・

これ以上はチラシ一枚も入らないので、投函を諦めるしかない。

正直こちらは早く終えたいので、そのようなポストが続くと「チッ」と舌打ちしている自分がいる。

1,000枚を1時間20分ほどで終了。

これも後から調べると専門業者の目安が「1時間500枚(マンション密集エリア)」らしいので、1,000枚であれば2時間かかる計算。

つまり我ながら効率良く配布出来たわけだ。

で、やってみた感想だが、はっきり言って超つらい。

他の方の感想も同様だった。

・暑い

・住人に白い目で見られる

実施したのは7月のある日の午前中だったが、それでもすでに30度を超えていて、終始汗だくだった。

また何回か住人の方々にお会いしたが、こちらがやっていることは迷惑行為以外の何物でもなく、軽く頭を下げるしかない。

頭ごなしに怒鳴られたことこそなかったが、やはり相当に白い目で見られる。

「いや、今の姿は世を忍ぶ仮の姿でして、私は本当は会社経営を・・・」

などと自分で自分を慰めるしかない。

 

2つ折りに1時間、配布に1時間20分。

計2時間20分の「アルバイト」だったが、もの凄く考えさせられた。

職業に貴賤はない。

現代社会の共通した認識だが、実際にはそれは綺麗な「建前」でしかない。

保険屋、不動産屋、私の生業が貴賤ランキングのどのあたりにいるのか自分では良く分からないが、世で「最高ランク」とされる弁護士、医師などに比べればさほど高いところではないだろう。

つまり貴賤はないかもしれないが、ランクはある。

さてポスティングは?

はっきり言って申し訳ないが、かなり下だと思う。

大変な仕事ではあるが、ここから何かのスキルを獲得したり、将来の展望があるかと言えば極めて厳しいと言わざるを得ない。

もちろん、学生のアルバイトだったり、人とも話さない仕事でもあるので、それが気楽で良いという人もいるだろう。

しかし、仮に不本意ながらポスティングの仕事しか得られず、それをやっているとしたら、なかなかそこから抜け出すことは難しい。

自身が住むマンションの集合ポストの前で、何度かポスティングをしている方にお会いしたことがあった。

たまたまかもしれないが、私と同世代と思われる中年の男性が多く、つまりは就職氷河期世代。

いわゆるロスジェネだ。

ポスティングの時給は東京エリアだと1200円スタートで、配布スピードが上がれば1400円くらいになるそうだが、1日8時間やっても1万円前後で、月に20日働いても20数万円。

そこから税金などを引かれれば手取りは10万円台になってしまう。

下手をすれば生活保護以下であり、これこそワーキングプアである。

ほんの2時間弱やっただけで偉そうなことを言うつもりはないが、「貧しくなる日本」の一端を垣間見たような気がした。

本日のコラムでした。

 

 

 

 

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7月 27th, 2025 by