フルコミッションは悪か?


昨年の10月に以下のような記事を書いた。

元古巣(P生命)が大変なことになっていた・・・・

その後、次々と続報が出て、結果的には107人のライフプランナー(以下、LP)が503人のお客様から約31億円を不正に受領というもので、正直、この数字は私の想像を超えていた。

この件についてはよほど世間の耳目を集めているのか、ネット上にはその背景や要因を解説しているものが多い。

そして、それらの全てが、

過度なフルコミッション制度が不正を招いた

という論調である。

そこで今回は「フルコミッション」について語りたいと思う。

それは悪なのだろうか?・・・・

それを考察するために、まずは、私の昔話にお付き合いいただきたい。

プルデンシャルに11年在籍していたが、周りには日々の活動費のために貯金を取り崩し、それでも足りず、親兄弟から借金するような人も多くいた。

それでも「一発」当てれば大きなお金が入ってくる世界であるため、先輩やマネジャーも

「事業に先行投資は必要」

と説く。

もちろんそんな甘くはないのだが、年に一人くらいは「実際に一発当てる人」が出てくるのである。

こんな人がいた。Aさんとしよう。

入社4年目でお金はカツカツ。周りからもバカにされていた。

親兄弟どころか消費者金融からも借金し、首が回らない。

ある日、知り合いから誘われ、Aさんはなけなしの金をはたいて、とある異業種交流会に参加。

そこで出会った同じ歳の経営者と意気投合し、数週間後に億単位の契約を預かった。

この点、フルコミには夢がある。

9回裏、2アウト3ボールからの大逆転満塁ホームランだ。

こんな話が実際にあり、また会社もそれを「成功事例」として喧伝するので、周りは「俺も」と思う気持ちになる。

ただし、冷静に考えれば、数千人が血眼になって金脈を探しているのだから、そりゃ「誰か」は何かを見つけるだろう。

はっきり言えば宝くじのようなものだ。

そんな宝くじに当たっただけのLPが、社内の勉強会などで

「あきらめなければ夢はかなう。」

「とにかく動き続けろ!!」

というようなご大層な話をするので、「いつかは俺も」と勘違いし、借金だけが膨れて最後は会社を去るような人間が続出する。

これもフルコミッションのリアルである。

私自身は入社1,2年目はこんな「熱」にあてられていたものの、3年目くらいからは、わりと冷めた目で見ていた。

実際に同期や後輩がボロボロになって辞めていく姿を見て、夢は夢でしかないことも分かってきたし、自分の能力の限界も痛いほど知ったので、まずは地道にコツコツと個人保険を販売し、お客様の信頼を得ること。

そして、その出会いの延長線上に経営者が現れれば、法人保険に挑戦するという姿勢を貫いていた。

そんなスタイルだったので、法人保険の契約を頂いたのは入社5年目くらいだったと思う。

「大きな法人保険を決めるのが恰好良い」

というプル文化の中では、かなり遅咲きの方だろう。

かと言って、個人保険をしっかりとやっていたので、給与も安定していた。

今振り返れば良い先輩に恵まれた。

当時、私の面倒を見てくれていた先輩は、自身は大きな法人保険をバンバン決めていたが、個人保険の重要性も分かっている方で、私にも「一発狙いで大振りするな。とにかく一つ一つの商談を丁寧に」と厳しく指導してくれた。

その方もプルデンシャルの大スターだが、若い私に「俺とお前は違う」とはっきり言ってくれたのはありがたかった。

逆に派手な生活を見せびらかし「お前らも俺を目指せよぉ~」というような人もいたが、私自身は何やら胡散臭いものを感じて、そういう人にはあまり近寄らなかった。

だが、そんなフルコミの世界が私は好きだった。

やったらやった分だけ、やらなければゼロ。

勝ちも負けも全ては自分のせい。

分かりやすいではないか。

 

はっきり言えばプルデンシャルは芸人や役者の世界に近い。

売れれば金と名誉と周囲の羨望、それら全てが手に入る。

会社主催の成績優秀者の表彰会は、とても豪華で、まるで自分がアカデミー俳優にでなった気分にさせてくれる。

さしずめ私などは、テレビには出れないが、舞台はしっかり務める中堅芸人と言ったところだろう。

派手さはないが、生活に困ることはなかったし、年相応以上の貴重な経験もさせてもらった。

しかし、売れなければ、その生活はどん底でみじめなものだ。

 

いや、昔を懐かしんで、興が乗り過ぎた。そろそろ結論を導きたい。

改めて問う。

フルコミッションは悪だろうか?

フルコミッションはただの仕組みであって、それ自体に悪も善もない。

私はそう思う。

だがフルコミが強烈な光だとすれば、それは誰かを煌びやかに飾る一方、目を凝らしても何も見えないほどの深い闇も生む。

プルデンシャルに吸い寄せられた者は、私も含めて蛾のようなものだ。

光を浴びて「蝶のように見える蛾」になるか、それとも暗闇の中で蛾のままで終わるか。それだけのこと。

プルデンシャルは今も昔もそういう会社だし、「強烈な光」がなければ成立しない。

LPが身内から借金をしようか、辞めようが、それは自己責任。

夢を見て、夢に破れた代償は自分で支払うべきであり、それが「蛾」のケジメだ。

しかし、今回、少なくないLPがその代償をお客様に押し付けた。

騙し、嘘をつき、自分の生活のために貴重な貴重なお客様のお金を奪った。

会社も見て見ぬふりをした。

「過度なフルコミッション制度を見直す」

会見でそう言っていた。

プルデンシャルの「光」はもうじき消える。

昔を懐かしむ者からすれば、少し寂しい気もするが、これだけお客様に迷惑をかけたのだから、それも仕方がないだろう。

「強烈なフルコミ」という武器で成長を遂げてきたプルデンシャルが、それを捨て、どこにでもあるようなつまらない保険会社になる。

それが世の中に出来る唯一の贖罪だろう。

本日のコラムでした。

 

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2月 15th, 2026 by