「引きこもり」親の葛藤、兄弟姉妹の苦悩


凄惨な川崎の20人殺傷事件、それに続く元事務次官による息子の刺殺。

どちらも「引きこもり」がキーワードとして報じられている。

ファイナンシャルプランナーとして、様々なご家族のお話を伺った経験から、本日は

引きこもり者の家族

という視点で、この問題に触れたい。

以前、引きこもりの息子さんを持つお母様から保険の相談を受けたことがある。

「バカな親だと思われるかもしれませんが・・・」

と前置きした上で、自分の死後も息子が生きていけるための保険に入りたい。とおっしゃる。

その方自身60代後半。

不動産を含め、結構な資産をお持ちではあったが、それでも息子さんが一生食っていけるほどではない。

そのため「保険で少しでも増やしたい」ということなのだろう。

このようなご要望に対し、息子さんご自身を契約者とした終身年金(一生涯年金が受け取れる)プランをご提案。

お母様も「良いですね」と納得されたのだが、思わぬ問題に突き当たる。

保険契約は必ずご本人にお会いしないといけないのだが、それが「難しい」と言う。

「引きこもり」なので誰にも会わないらしい。

「私が息子に書かせてお渡しするのではダメですか?」

そう言われたが、お断りした。

ルール上NGだし、たとえそれを許容したとしても(バレると懲戒ものだが)、息子さんの状況を考えれば、後々どんなトラブルになるか分からない。

正直なところ、厄介な雰囲気に私の方が腰が引けてしまい、結局,契約はうやむやになってしまった。

断片的にお聞きした話では、就職したものの人間関係の悪化で辞め、自分の部屋に閉じこもって、以来そのままとのこと。

多少の会話はあり、特に暴力等もないので、そこまで重症ではない印象だったが、その「息子さん」は当時30代前半の私より年上だったので、社会復帰は一筋縄ではいかないだろう。

本来、子供に面倒を見てもらうような歳なのに、逆に死後の子供の生活まで心配しなくてはいけない。

不謹慎かもしれないが、このあたりの心情は重い病気や障がいなどを持つお子さんの親御さんと同じような印象を受けた。

引きこもりの子供を持つ「親」にお会いしたのはこの時だけだが、「兄弟姉妹」つまり

「兄が(もしくは弟、姉、妹が)引きこもりなんです」

ということもある。

こちらの方が数は圧倒的に多い。(と言っても10人くらいだが)

同じ家族でも、親と兄弟姉妹では「引きこもり」への考えは大きく違う。

親御さんの場合、「我が子の引きこもり」に対して、

育て方を間違えた

と自問自答し、責任の一端は自分にあると考えている。
(実際はあまり関係ないと思うが)

一方、兄弟姉妹の場合、自分には全く非がないのに

「重荷を背負わされてしまった」

という感覚がある。

特に「将来への不安」は深刻で、親が元気なうちは今のバランスが保てるが、親が動けなくなったり、亡くなった場合、

「アイツ」の面倒は誰が見るのか?

ということが心に重くのしかかる。

引きこもりの兄弟姉妹に対して、感情的には憎しみこそあれ愛情などない場合が多いが、それでも兄弟姉妹の縁は切れない。(法律的にも関係を切る方法はない)

自分が逃げた場合、他の親類に迷惑をかける可能性もあり、かと言って、このご時世、自分の家族だけで精一杯なのに、働かない兄弟姉妹の面倒など見れるわけがない。

この将来への不安が「澱」のように心の奥底に溜まる。

「死んでくれればどれほど楽か」

はっきりとそう言う方もいた。

冷たいようだが、これも偽らざる本音なのだろう。

内閣府の調査では現在「引きこもり状態」にある人は15歳~39歳で54万人、40歳以上で61万人。

計115万人とされる。

その方々にどれほどの兄弟姉妹がいるのかは分からないが、平均一人と仮定すれば、兄弟姉妹が115万人。

更にはその親御さん230万人(115万人×2人)がいる。

合計460万人

日本の人口1億2,600万人に対し、460万人は約4%にあたり、つまり25人に1人は

「引きこもり当事者か、その家族」

ということになる。決して珍しい話ではない。

とは言え、全てのケースで問題が解決出来ないわけでもなく、数年後にお会いすると

「ようやく働き始めた」

などと好転している場合もある。

そして、それらの立役者は兄弟姉妹であることが多い。

「もはや自分の問題。先送りは出来ない」

そう考えた若い世代の方が、世間体を気にする高齢の両親よりも動きが早いのだろう。

家族に合意を取り、自治体やNPOのサポートを受ける段取りを組む。

肉親同士より、プロである第三者(社会福祉士、医師、カウンセラーなど)を入れた方が事態が動くのだろう。

反面、一向に状況が変わらない場合も多く、やはり「引きこもり」は簡単ではない。

115万人とその家族345万人。

もちろん当人が一番苦しいのだろうが、家族の苦しみも、見逃すことが出来ないこの問題の側面と言える。

本日のコラムでした。

 

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6月 7th, 2019 by