一時払終身 市場調整価格を理解しよう!!


保険の商品、特に保険料を一度に支払う一時払系の商品において「市場調整価格」というものがあります。

契約時には必ず「リスクの一つ」として説明を受けるものですが、今一つ分かりにくいため、しっかりと理解していない方が多いように感じます。

本日はこの市場調整価格にフォーカスしたいと思います。

まず教科書的に市場調整価格を述べると、

市場金利に基づき解約時の返戻金が増減する仕組み

となります。

実際の例を見てみましょう。

なお、ここで使われる数字はあくまで本稿のために仮想で設定したものですので、実例ではありません。

A保険会社

ドル建一時払終身保険

積立利率4% 10年固定

保険料1450万円(1ドル145円で換金) → 10万ドル

日本円で1,450万円を支払い、それを1ドル145円でドルに変換。

10万ドルの終身保険となり、以後、4%が10年間保証されて運用されていく商品です。

現在(2025年8月時点)の保険業界では最も「売れ筋」の商品と言って良いでしょう。

返戻金の推移は以下のようになります。

1年目 104,000ドル
2年目 108,000ドル
3年目 112,000ドル
4年目 116,000ドル
5年目 120,000ドル
6年目 124,000ドル
7年目 128,000ドル
8年目 132,000ドル
9年目 136,000ドル
10年目 140,000ドル

そして、設計書ではだいたいこの左右に「市場金利が+3%だった場合」、「市場金利がー3%だった場合」というような仮定の条件での返戻金が記載されています。

一部の数字だけを抜粋するとこんな感じです。

2年目 

+3%    79,400ドル(-24%)
±0%  104,000ドル
-3%   137,000ドル(+30%)

9年目

+3%   132,000ドル(-3%)
±0%  136,000ドル
-3%  140,000ドル(+3%)

2年目に解約をした場合、その時の市場金利が+3%、つまり7%程度であれば解約返戻金は79,400ドルと金利が変わらなかったケースの104,000ドルに比べて24%も減ってしまいます。

元々の元本である10万ドルを大きく割ってしまうので、大損ということになります。

逆にー3%、つまり1%程度であれば返戻金は137,000ドルと元々の積立金の104,000ドルから30%も増え、たった2年間で大きな利益を得られます。

しかし、一体何故こんな現象が起こるのでしょうか?

これを理解するためには「債券市場」を知る必要があります。

債券には様々なものがありますが、代表的なものが国債です。

民間からお金を借りるために、国が発行するものですね。

日本が発行しているものが日本国債、アメリカが発行しているものが米国債です。

発行時に「毎年〇%の利子を渡す」と決まっており、日本では期間が10年のもので1.5%前後、米国債であれば4.2%前後です。

つまりこの国債を買えば、毎年定期的に利子が受け取れ、更に支払った元本は10年後にまるまる戻ってきます。

実は一時払終身という商品はほぼ「国債を買っている」と言えます。

先に挙げたドル建終身保険であれば、保険会社が大量に買い付けた米国債を「小口」で買っているようなものなのです。

保険とは言え、これらの商品に限って言えば保険会社は日本国債や米国債の販売代理店のような立場です。

米国債であれば毎年利子が受け取れますが、保険の場合はそれが貯まっていき返戻金に反映されます。そのため、毎年4%ずつ増えていくわけです。

さて、では途中解約ですが、もし年利4%で買った保険(米国債)を解約する場合、保険会社はその分の債権を市場で手放します。

ではその時の国債の金利が販売時と違っていたらどうでしょうか?

販売時は4%でした。

その時の米国債の利回りが1%(4%マイナス3%)だとします。

米国債が1%というのは相当に低いですが、実際新型コロナが猛威を振るった時などは1%を切っていましたから、あり得ないことではありません。

その時に利回り4%の米国債はどう評価されるでしょうか?

もう「お宝」ですね。

皆が欲しがりますから、当然「競り」のようになりプレミアムが付きます。

そのため、それらが反映され積立金額に+30%上乗せされるわけです。

逆にその時の利回りが7%(4%プラス3%)だったとします。

その状況で4%の債券は「誰もいらない」ですよね?

市場で7%の債券が売っているのですから。

したがってディスカウントして売らざるを得ず、解約返戻金も大幅に減ります。

つまり「市場調整価格」とは「債券の金利リスク」を保険会社ではなく、契約者が持つ仕組みということです。

最後に市場調整価格の「時間軸」についてご説明します。

もう一度、前述の「例」を再掲します。

2年目 

+3%    79,400ドル(-24%)
±0%  104,000ドル
-3%   137,000ドル(+30%)

9年目

+3%   132,000ドル(-3%)
±0%  136,000ドル
-3%  140,000ドル(+3%)

2年目ではプラスもマイナスも大きいですが、9年目では金利による返戻金の増減はプラスマイナス3%程度に抑えられています。

これは「残存期間」が違うからです。

期間が10年間の国債で、それを2年目に手放すとすると残りは8年間。

4%が8年間続くわけですから、その累計は32%です。

1%が8年で8%、7%が8年で56%。

プラスにしてもマイナスにしても、32%との差は大きいです。

そのため、この差が解約返戻金に大きく影響します。

逆に9年目であれば、損損期間は1年。

そうなれば1%、4%、7%と比較しても「たった1年3%」違うだけで、そのため増減も3%程度で済むのです。

つまり長く保有すればするほど金利リスクは軽減されていくということです。

以上、今回は市場調整価格について解説いたしました。

本日のコラムでした。

 

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8月 2nd, 2025 by