熊被害のリスクヘッジとしての保険


熊による被害が深刻だ。

まずは以下のグラフを見て頂きたい。

これは環境省が発表している「クマ類による人身被害について」というデータから抜粋したもので、過去10年間の「件数」、「被害人数」、「死亡者数」をまとめたもの。

年度によってバラつきはあるものの、過去10年の平均では毎年116人が被害にあい、3人前後が亡くなっている。

これに対し、今年度は本稿執筆時(10月末)で死亡12人と、過去最悪だった2023年度の6人の2倍、平均からしても4倍強という悲惨な状況だ。

また農村部だけでなく、市街地の中心部にも熊が出没する様子が連日報道されており、まだまだ予断を許さない。

しかし、このような事態を見越していたのか、遡ること今年(2025年)の4月、既に政府は鳥獣保護管理法を改正していた。

今までは市街地での発砲が実質的に禁止されていたが、この改正によりヒグマ、ツキノワグマ、イノシシによる人的被害が生じる恐れが高いケースでは、自治体が市街地での緊急銃猟を行えるようになった。

しかし、そう言われても自治体側も困る。

以前よりは駆除のハードルが下がったものの、当然ながら職員が駆除出来るわけではない。
(注:狩猟免許を持った職員、いわゆる「ガバメントハンター」も一部にはいるが、現時点では一般的ではない)

必然的に駆除業務を猟友会などにアウトソーシングせざるを得ないが、市街地での発砲により車や建物などに損害を及ぼした場合、その責任は「主体」である自治体が負う。

ここで保険の出番。

東京海上日動が販売を開始した「緊急銃猟時補償費用保険」はこのような場面での損害を補償する。

契約者は自治体となる。

ただし、これらの保険はあくまで物的な損害を補償するものであり、自治体の財務上のリスクヘッジに過ぎない。

しかし、熊による被害で最も深刻なものは人的被害、つまり死亡や傷害だ。

もちろん被害者が通常の生命保険、医療保険、傷害保険などに加入していれば「その理由が熊であっても」保険は有効だが、「熊被害」だけに限った保険は現時点では存在していない。

各社が水面下では商品開発に動いているだろうか、おそらく今後出てくるのは

1日熊保険(ネット保険)

というようなものではないかと思う。

山登りなどの際に1日単位で加入するレジャー保険を「熊バージョン」に仕立て直したような内容で、通常のレジャー保険に熊遭遇時の

・死亡

・怪我

・後遺障がい

・美容整形手術
(熊は顔面を攻撃することが多く、修復手術を必要とするケースがある)

等々について追加の補償を行うような形が想定される。

私の予想では、来年の4月あたりにはどこかの保険会社が販売するような気がしている。

しかし、仮にこれらの保険があったとしても、正直実効性は乏しい。

リスクを感じて、保険まで入るような人はしっかりと熊対策をしているだろうし、また滞在時間も短いため、そもそも熊と遭遇する確率も低い。(ゼロではないにせよ)

実際、被害の多くは熊が出没するようなエリア(都心部と森林部の中間)にお住まいの地域住民であり、そのような方々は日ごろから熊が身近(目撃体験など)であるが故、どうしてもリスクに鈍感になってしまう。

一つの解決策としては、やはり行政がそれなりの補償を行うというものだろう。

何でもかんでも行政のせいにするのは酷だが、熊被害はある種の自然災害と同等であり、長年の対策不足(ハンター育成や駆除の報酬、森林管理など)が影響している面は否めない。

それらの「正統派」な取り組みは今からやるとしても、当座、被害に会われた方には自治体なり、国なりがしっかりと補償しても良いのでは?とも思う。

本日のコラムでした。

 

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11月 3rd, 2025 by