私事で恐縮だが、男性にとってのシンボルであるトーテムポールにデキモノが出来てしまった。
こんな話をすると、「性病」を連想させてしまうが、別に心当たりもなく、ネットで調べると抵抗力が落ちるとそのような症状が出る人ももいるらしい。
43年間生きてきて初めての経験だったが、これも加齢のなせる業。
知り合いのドクターは多いが、場所が場所なだけに流石に恥ずかしい。
見ず知らずの病院の方が気軽と近所の泌尿器科へ行ったが、そこでとんでもないコントに巻き込まれてしまった。
本日はそんなお話。
一応、名前は伏せるがK医師は内科と泌尿器科の看板を掲げている。
「軟膏でも出して貰おう」
そんな気持ちで中に入ると、受付には患者は誰もいない。
昼の12時過ぎ。
多くの企業は昼休みでクリニックにとってはゴールデンタイムのはずだが、患者が1人もいないとはどういうことか?
ただ、この時は「ラッキー、待たなくて済む」くらいにしか思わなかった。
初診であることを告げ、受付で問診表を渡される。
「男のデリゲートゾーンにデキモノ。痛み、痒みはないが、多少違和感あり。」
と見事に簡潔な文章で症状を伝えると、受付の事務員さんから尿検査用のコップと、更に詳細のアンケートのようなものを渡される。
アンケートでは1日の尿の頻度や、夜中トイレに起きる回数などを聞かれるが、一応それに答えると、すぐに診察室に呼ばれた。
中には歳は40代後半。ヒゲ面。中肉中背のK医師。
「宜しくお願いします。」
と挨拶をして、自分の症状を伝えようとすると「それは後で」とたしなめられる。
恥ずかしい部分の話なので、私としても先を急いでしまったようだ。
あちらは「泌尿器のプロ」
プロにはプロの流儀があるのだろう。これは大変な失礼をした。そう反省していると、K医師がこう言う。
「ちょっと尿の回数が多いですね。」
はぁ?・・・と思ったが、ここは静かに頷かざるを得ない。
アンケートでは、1日の排尿の回数の質問に
① 7回以下
② 8~10回
③ 11~15回
④ 16回以上
とあり、私は②に丸をしていた。
「これは頻尿です。」
まるでガンを告知するか如く厳しい表情で私に告げる。
更に夜中にトイレに起きることに関しても指摘された。
「腎臓に問題かな?デキモノとも関連するかもしれない・・・・」
K医師がぶつぶつ言っている。
「患部を見て、エコー検査(超音波検査)を行いますので、そのベッドに寝て下さい。」
はあ?デキモノでエコー検査?腎臓?
疑問を感じたが、仮にK医師の言っていることが正しく、何か病気でも発見されれば、それはそれでありがたいことである。
受付には誰一人患者がいなかったが、もしかしたら埋もれた名医なのかもしれない。
また、今はどこのクリニックも経営が厳しい。
過剰かもしれないが検査をすれば、それは保険点数、すなわち売上に繋がる。
一応は私も小さい会社の経営者。ここは協力しようではないか。
そう思いなおし、文字通り「一肌脱いで」ズボンとパンツをずり下げて、下半身丸出しでベッドに横になった。
手袋をして私のトーテムポールをつまみ観察するK医師。
「確かに赤くなってますね。」
それは見れば誰でも分かる。
「では軟膏を塗ります。」
えっ?今?お前が塗るの?
と思った瞬間、トーテムポール全体にヌルヌルと軟膏を塗りたくる。
医療行為とは分かっていてもなかなか気分が悪い。
「次にエコー検査に入ります。」
とここで、何やら忘れ物をしたらしく、K医師は席をたって診察室を出ていった。
その際、私のトーテムを触った手袋のまま平気で部屋の扉の取っ手を握っていた。
毎回、同じことをしていると思うとこの病院の衛生管理を疑うし、私も先ほど診察室に入る際、その取っ手を握ってしまった。。。
他の患者のトーテム菌も、あの取っ手に?・・・・
そう言えばこの診察室にも本が床に乱雑に積まれていて誠に汚らしい。
そんな時、床に転がる書籍の中からある一冊が目に入る。
「すぐ分かる!!エコー検査実務!!」
・・・・・大丈夫か?コイツ?
急に不安になったが、ここまで来ると逆に楽しくもなってくる。
ほどなくしてK医師が戻り、エコー検査が始まった。
この検査を受けたことのある方であればお分かりかと思うが、ヘラのようなもの(下図参照)にローションをつけてお腹に当てる。
このパーツを「プローブ」と言い、ここから超音波が出るのだが、最大の敵は「脂肪」
超音波は脂肪に遮られやすいので、画像が綺麗に写らない。
だから私のように肥満体型だと、かなり強くゴリゴリと押し付けられ、時には痛みを感じるくらいである。
しかし、K医師のエコーはひたすら優しい。
「ではまず睾丸から行きます。」
腎臓じゃないの?なんで睾丸?と突っ込みそうになったが、ここまで来ればまな板の鯉。
もうどうにもなれ!!と開き直る。
そしてK医師が持つプローブが私のゴールデンボールにそっと触れる。
右、左、右。
何故に右を2回撮ったのか分からないが、その所見は
「左の方が大きいですね。」
とのことだった。
「あれ?この子、左の方がデカいんじゃない?!キャー!!」
内心そう思い、確認のための「2回目」だったのだろう。
肝心の腎臓に移ってもその優しさは変わらず、皮膚の上からピッ、ピッとやるだけ。
その途中にも、ちょいちょいK医師の手が私の股間に触れる。
バッドとボールへの並々ならぬ執着を感じた。
もしかしたら昔は高校球児だったのかもしれない。
そんなことを思っていたところ検査は終了。
薄汚れたタオルでローションと軟膏まみれになった股間周辺をK医師が拭いてくれる。
別の病気を貰ってしまいそうだ。
そして席に戻り向かい合う。
どこかしらK医師の顔が火照っている気がしたが、それは見て見ぬフリをした。
目の前では検査結果の説明が続いていたが、これがまた尋常でないくらい長く、そして本当に何を言っているのか分からない。
専門用語をバリバリ使い「〇〇の可能性がある。」と病気を羅列する。
流石に飽きて来たので、
「で、先生、何が分かったんですか?」
とぶっきら棒に聞いてみると、基本的には何も問題はないが、一点だけ気になることがあると言う。
「この写真を見て下さい。」
目の前にはエコーを写した黒い写真。膀胱らしい。
「先ほど尿検査をしました。その20分後の検査にも関わらず、ここに水が溜まってるでしょ?ちょっと待って下さいね。今、計算しますから」
そう言って電卓を叩く。
「計算上、これは30ccの尿です。」
相変わらず要領を得ない。
「つまり?」
と即すと、得意げな顔で
「残尿です。」
と告げられた。
変態医師から股間をまさぐられ、優しい愛撫のようなエコー検査を経て分かったことは、
「俺の残尿は30cc(排尿20分後。K医師による推測値)」
ということだった。
続いて、保険適用外の〇〇検査を受けた方が良い、とかごちゃごちゃ言っていたが、これ以上病院コントに付き合う気にもなれず、
「軟膏で様子を見ます。」
と、まるでこちらが医師のように決め付けて診察室を後にした。
待合室に戻っても、入ってきた時と同様に患者はいない。
20代と思われる事務のお姉さんと私だけ。
そういえばこのクリニックには看護士すら1人もいないではないか。
思わず聞いてみた。
「あの先生、大丈夫なんですか?」
「さあ(苦笑)」
それが彼女の答えだった。
そして、このコントの参加費用は6,800円。
3割負担でこの値段だから、トータルでは国の保険も含め2万3,000円近いお金が入ることになる。どう考えても「趣味」としか言いようがない仕事の売上にしては上出来だ。
まあ、それは良い。
それよりも、思春期の子供などが行って、あの診察を受けてしまうとトラウマになってしまうのではないかと思い、そちらの方が心配だ。
病院を出てから、このクリニックの書き込みを見ると、「最低のモラル」、「衛生的でない」、「恥をかかされた」、「絶対行ってはいけない」などの罵詈雑言が並んでいて、私が感じたものとほぼ同じだった。
しかし、とんでもない医者もいたものだ。
あれでつぶれないのも不思議だが、私のように下調べもせずに「近所だから」という理由で行ってしまう人間がいるからだろう。
新しい病院へ行くときはせめて口コミくらいは見てから行った方が良い。
そう思わされた出来事だった。皆さんもお気を付けて。
本日のコラムでした。
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