体外受精と生命保険。自分で経験して分かること


厚生労働省の調査によると、2016年に国内で体外受精により生まれた新生児は5万4110人にのぼり、過去最高を記録した。

これは同年に生まれた新生児97万6978人の5.6%にあたり、現代の日本ではおよそ18人に1人が「体外受精」で生まれたきた子供ということになる。

今から15年前の2004年。体外受精による新生児はに18,168人だったことから、当時と比べ「ほぼ3倍」に増えたことになる。

かく言う私も、2人の子供を体外受精で授かった。

新宿のとあるクリニックにかかったが、はじめのドクターとの面談で

「そもそも成功する可能性は高くはない。」

と言われ面食らった。

先生いわく、

・初回よりは2回目、2回目よりは3回目の方が成功率は下がり、7回を超えるとかなり難しくなってくる。

・「何回までやるか?」ということはご夫婦で決めておいた方が良い。

・病院としては7回以上は体への負担も考えお勧めしていないが、それでも僅かな希望を託して、何度もチャレンジする方もいる・・・

非常に物腰の柔らかい先生ではあったが、口から出てくる言葉は体外受精の厳しさを伝えるもので、

「体外受精すればすぐに出来るだろ?」

と軽く考えていた我々夫婦(特に私)は大変なショックを受けた。



実際のところ、体外受精の成功率はそれほど高くはない。

病院によっても違うが、だいたい以下のようなデータが基準とされている。

30歳~35歳 30~40%前後(数回実施した結果、以下同)

36歳~40歳 25~30%前後

40歳以上  1~6%前後

当時、我々夫婦は35歳を超えていたので、上記の例で言えば25~30%。

逆の言い方をすれば、7割以上は失敗するので、先生としても

「あまり良いことばかり考えるな」

と言いたかったのだろう。

うちの場合、何度かの失敗はあったものの、結果的には無事2人の子供を授かることが出来たが、お客様や友人、知人には「諦めた」という方も多く、体感的にもこの確率どおりの気がする。

「5回挑戦したがダメだった」

「3回目の失敗であまりに妻が落ち込むので、一旦休憩している」

そんなお話を伺うと「うちだけ申し訳ない」という気持ちになる。

体外受精は女性の身体に負担がかかり、うまくいかなかった時の精神的な落ち込みは相当なもの。

それらの苦労も分かっているからこそ、経験者からすれば、この「確率」は、数字以上に残酷に感じるのである。



また、体外受精は非常にお金がかかる治療法でもある。

毎回、30~50万円程度の費用が必要で、各都道府県からの助成金(7.5~30万円)はあるものの、

夫婦合算の所得(=給与ではない。控除後の金額)が730万円以下(東京都の場合)

でないと受取ることが出来ない。

お客様や知人でも、これに引っかかり補助金を受取れなかった方が大勢いる。

しかしながら、このルールも730万円ならOKなのに、731万円ならダメということで、何とも納得感がない。

満額とまでは言わなくても、所得に応じて補助金を段階的に減らすような仕組みにすれば良いものを、

少子高齢化が問題!!

と叫ぶわりには行政側の知恵がたりないように感じる。

注:なお、2019年4月より「905万円」以下に緩和されたが、これも906万円ではダメということで、構造的に同じ問題をかかえている。



自分自身もこのような経験をしたので、同じような境遇にいる人の力になりたいと思っているのだが、私の専門である生命保険は体外受精について、

 

何の役にも立たない・・・

 

体外受精は医療保険では支払い対象外であるため、給付金をお支払いすることは出来ないし、逆に加入時に「不妊治療をしている」と告知すると、条件(加入してから3年以内の異常分娩は支払い対象外、など)が付いてしまう。

昨今では体外受精をカバーしたような「不妊治療保険」も販売されていて、一回の体外受精に5~10万円(回数による)ほどの給付が受けられるのだが、保険料もそこそこ高く、結果的には

「自分で貯めているようなもの」

という印象。

保険というよりは体外受精のための「自己積み立て」のようなイメージである。

また出産するとお祝い金なども受け取れるなど、「成功した人」に手厚い仕様になっている。

しかし、経験者からすれば、「逆」の方が良い気がする。

前述の確率からも分かるとおり、全世代を通して7,8割はお子さんに恵まれない。

だからこそ「残念ながらダメだった場合」にこそ保険が有効になり、給付を厚くする。

お子さんを授かった方は、支払った保険料が戻ってこなくても諦められるのではないか?

そんなことを保険会社の担当者を掴まえては話している。




一昔前。

体外受精は海外セレブがやる「未知の治療」というイメージだったが、昨今の晩婚化、出産の高齢化でそれを選ぶことが当たり前になりつつある。

しかし、それとて万能ではなく、多くの苦労と苦悩を伴うわりには徒労に終るほうが多いという事実も。

それでも今後、体外受精による子供が、現在の「18人に1人」がより増えていく可能性は高いだろう。

行政、民間の保険が、もっと積極的に不妊に悩む方々をサポートできる体制が出来ると良い。

経験者として切にそう思っている。

本日のコラムでした。



 

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7月 11th, 2019 by