誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 中編


さて、介護保険のお話、中編です。

前編では、一口に介護保険と言っても、公的な介護保険と民間の介護保険があること、民間の介護保険は公的介護の「補助的な役割」であること、そしてメインである公的介護保険がどのようなものなのか理解することが重要というお話を致しました。

誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 前編

前回は公的介護保険の概要を解説しましたが、今回は民間の介護保険についてです。

これらの商品を理解する上で、下記の3つのポイントを抑えると分かりやすいでしょう。

1 支払条件

どのような状態になれば支払われるのか?

2 保険料と支払金額

いくら払って、いくら貰えるのか?

3 掛け捨て or 貯蓄型

掛け捨てなのか、それとも貯蓄型なのか?

1 支払条件についての考え方

民間の介護保険は各社から数多くの商品が販売されていますが、どの商品も上記の3つのポイントごとに分析していくと分かりやすいかと思います。

1については、前述の通り、民間の介護保険は公的介護保険の補助であるため、原則的には公的介護保険の精度と連携していることが多いです。

「要介護2になったら〇〇万円を支払う」というような形です。

さて、ここで問題です。

A社の商品は「要介護2で払う」、B社の商品は「要介護3で払う」

どちらが条件が良いでしょうか?

前回、解説した通り、要介護の等級(数字)は「症状が重い」ほど数字が大きくなります。

要介護2よりは、要介護3の方が重いということです。

となると、要介護3の手前で、より症状が軽い要介護2で支払われる方が、「条件は良い」ということになります。

なお、最近では要介護1から支払うような商品も出てきてはいますが、まだまだ数は少なく、主流は要介護2です。

では次の問題です。

A社(要介護2)の保険料は毎月3万円、B社(要介護3)の保険料は毎月1万円、どちらも受け取れる金額は毎月10万円(介護が続く限り)としましょう。

この場合、どちらの商品が良いでしょうか?

それを次項で説明したいと思います。

2 保険料と支払金額の考え方

A社は要介護2でも受け取れるので条件は良いのですが、保険料が高い、B社は要介護3にならないと受け取れないので条件は悪いが、保険料は安い。

なかなか難しい問題です。

さて、ここで回答ですが、これは

人による

という非常に曖昧な結論になります。

高くても条件が良い方が、という人もいれば、多少条件が悪くても安い方が良い、という人もいるでしょう。

はっきりしたお答えが出来ず申し訳ございませんが、しかし、保険というものは往々にしてこういうもの、ということを理解して頂きたいのです。

条件が良ければ保険料は高い、条件が悪ければ保険料は安い。

保険会社は必ず自社の利益が出るように保険商品を設計していますので、お買い得な商品というものは存在しません。

これだけは「はっきり」とした事実です。

では何をもって保険を選べば良いのでしょうか?

それを判断するための材料が、いくら支払って、いくら受け取れるか?という情報です。

先の例で比較してみましょう。

65歳で民間介護保険に入り、80歳で介護になったとします。(実際に介護になる中央値は80歳前後です)

65歳から80歳まで15年間保険料を支払っていますので、総支払保険料はA社の場合、

3万円×12ヶ月×15年=540万円

となります。

それで毎月10万円を受け取れるわけですから、54ヵ月受け取れればトントンということです。

54ヵ月、4年半ですね。

介護の平均期間は統計上5年程度なので、実際に「よくあるケース」と言えるでしょう。

次にB社ですが、こちらは要介護3なので、要介護2より受け取れるタイミングが少し遅くなるでしょう。ここでは83歳とします。

B社の総支払保険料は

1万円×12ヶ月×18年=216万円

です。

毎月10万円を受け取れるのですが、22ヵ月(1年10ヵ月)でトントンです。

あくまで筆者の経験上の感想ですが、要介護3になると「結構重いですね」という感じです。

要介護2までは、何とかサポートされながら自分で自分のことが出来る方も多いですが、要介護3になると、かなりの部分をヘルパーさんに助けられないと生活できないような状態です。

前回、公的介護保険の限度額についてご説明いたしましたが、

要介護1 167,650円/月
要介護2 197,050円/月
要介護3 270,480円/月
要介護4 309,380円/月
要介護5 362,170円/月

こちらを見て頂いても分かる通り、要介護2から3は限度額も一気に1.5倍に増えています。

1から2はそこまで金額も変わらない、3から4もそれほど変わらないのに、2から3は増額率がかなり高いのです。

つまりは「かなり大変」ということです。

そのため要介護3まで進むと、そこからの余命はかなり少ないと考える方が自然です。

となると、B社の「要介護3から1年10ヵ月でトントン」という条件と、A社の「要介護2から4年6ヵ月でトントン」という条件は、意外とどちらも変わらないような印象を持ちます。

「要介護2から受け取れる!!」ことは条件だけを見れば良いのですが、総支払保険料と受取金額を考えると、「要介護3から」とそこまで違いはないのかもしれません。

もちろん、これらは個人差があり、人によっては要介護2での生活期間が長い方もいれば(その分、多く給付される)、要介護2はあっと言う間に通り過ぎて、要介護3になってから長い方もいるでしょう。

但し、「いくら払って、いくら受け取れるのか?」というリターンを全体の平均で見れば、どちらも変わらないとうことで、保険会社はこのあたりは統計を駆使して商品を設計しているのです。

3 掛け捨て or 貯蓄型の考え方

最後は少し切り口が変わります。

民間の介護保険には、大きく分けて掛け捨てタイプのものと、貯蓄型タイプのものの2種類があります。

なお、先ほど解説したA社(要介護2 3万円/月)、B社(要介護3 1万円/月)はどちらも掛け捨てタイプでの話です。

これらの掛け捨てタイプは「介護になったら払う」というもので、逆に言えば「介護にならなければ払わない」というものです。

詳しくは後述しますが、当然ながら全員が介護になるわけではありません。

そのため、契約者の中には「介護にならずに亡くなり、保険料は全て無駄になった」という人が一定数存在するわけです。

対して貯蓄型タイプの保険は支払条件に「介護 or 死亡」となっているものがほとんどです。

そのため、介護にならずとも死亡すれば保険金が受け取れるので、損することはありません。

あくまでイメージですが、以下のような商品が多いです。

・1,000万円を一括で預ける

・要介護2になったら一括金や分割金で1,000万円を超える金額を受け取れる

・介護にならずに死亡したら、死亡時に元本の1,000万円が多少増えて戻ってくる(1,050万円など)

注:実際には多種多少な商品が販売されており、外貨や株などに連動するものもある。

この掛け捨てタイプと、貯蓄型タイプは、同じ民間の介護保険商品に分類されてはいますが、基本的には別物です。

貯蓄型タイプのものは「本来受け取れるはずの運用益(1,000万円を預ければ、年間10万円程度の運用益がある)」を「介護の保障」に置き換えているだけであり、かつ介護になって受け取るお金は基本的には「自分のお金」ですから、多少得をすることがあっても、そこまで大きなものではありません。

「損はしないよね」というのが最大のメリットです。

対して、掛け捨てタイプの民間の介護保険は、介護になればプラス、介護にならなければマイナスという分かりやすい内容です。

「掛け捨てと著特型があるんだね」

という程度に理解しておいて下さい。

今回は民間の介護保険について、商品の分析、考え方を解説致しました。

それでは次回はいよいよ「介護保険の真実(後編)」です。

民間の介護保険はそもそも必要なのか?

という点について述べていきたいと思います。

誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 後編

 

筆者紹介

1級FP技能士・宅建士 加藤 圭祐

あおばコンサル代表(みかづきナビ運営会社)

相続、介護、老後の資産運用に関するご相談は

infp@mikazuki-navi.jp

までご連絡下さい。

 

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします


4月 7th, 2024 by