先日、ゴールデンウイークの真っ只中に、7歳の息子と香川・徳島を2泊3日で旅してきた。
新6年生になる上の娘は受験を控え、春休みになっても毎日塾通い。
また、それをサポートする妻も日々浮沈する成績に一喜一憂し「勉強しなさい!!」と「やればできるじゃない!!」をローテションで繰り返しては、終始イライラされておられる。
中学受験生の母はまことに大変だ。
そんな状況で最も割を食うのは下の息子。
「嗚呼!!春休みなのにどこも行けない!!なんと暇な・・・僕チンは不幸だ!!」
まるでシェイクスピア劇のように大仰に騒ぐ。
そして、その横には家庭の中で最も暇なこの父が・・・
「あんた達、2人でどっか行ってきなさいよ」
妻がそう言う。
言外には「いても邪魔だから」という一文が透けて見えるが、まあ良い。
ここは一肌脱ごうではないか。
そう決意し、飛行機のチケットを抑えようとしたが、流石に大型連休中の思い付き。
沖縄や北海道などは軒並み満席で、全く空きがない。(かつ空いていても異常に高い)
そうだ!!こんな時は四国だ!!
過去、何度か四国に行っているが、食べ物は美味しいし、自然、寺社仏閣、子供向けの遊園地パークなどコンテンツも豊富。
なのに何故か人気はなく、飛行機もホテルも安い。
(沖縄、北海道に比べて、という意味。四国の方々すいません)
というわけで調べてみると、飛行機もホテルもレンタカーもサクッと取れた。
そして数日後、我々は香川県 高松空港に降り立ったのである・・・・
たくましく育て!!その1 バカ過ぎる・・・
11時過ぎに空港に着き、外に出ると薄曇りだった。
レンタカーに乗り込み、
「さて、まずはうどんだ。」
父がそう言うと、息子は間髪入れずにこう言う。
「僕チン、ラーメンが良い」
「いや、香川に来たら、食べ物はうどんしかない」
「えー、だってあそこにラーメン屋さんあるじゃん」
「あれもうどん屋だ。中に入るとうどんが出てくる」
「えっ!!じゃあ、あれは?(ファミレス)ハンバーグの写真が載ってるよ」
「ああ、あれは良く出来てるなぁ、でもあれもうどん屋だ」
「あれは?(ココイチ)あれは?(吉野家)」
いちいち聞いてきてくるので、うるさくてかなわないが「全てうどん屋。法律で決まってる。」と煙に巻き、目当ての店へ。
まつばら(食べログ)
「うどんかぁ~」店に入ってもブツブツ言っていたが、いざ着丼すると・・・・
「うん、これは旨い!!」
そう言い、私の分にも箸を伸ばす。
「だろ?だから法律で決まってんだよ。香川ではうどんしか出しちゃいけないって」
「なるほどぉ。でも、僕、毎回うどんだと飽きちゃう・・・」
「大丈夫だ。今日中には『国境』を超えて徳島県に入る。そこでは何を食っても自由だ」
「ああ、良かったぁ、徳島が自由の国で」
本気で安堵する7歳 男子。
普段、この手の話は「ウソに決まってるでしょ」と妻が訂正するが、今日はそんなストッパーがいない。
車に乗ると、今度は「もう、うどんから出た?」、「あっ、またうどん屋さんあった・・・こりゃ、まだうどんから出てないな・・」と、終始、国越えを気にしていた。
7歳とはこんなにもバカ(正直)なのかと、むしろ感心した。
たくましく育て!!その2 何で?何で?の大疑問
旅行中、とにかく「何で?」「何で?」と全ての疑問をぶつけてくる。
1日目の午後はイルカの調教師体験、2日目の朝は船に乗り鳴門海峡の渦潮を見に行ったのだが、息子にとっては全てが「謎」
何でイルカは哺乳類なんだ?
何で人間の言うことを聞くんだ?
何でこんな渦が出来るんだ?
何で他の場所には渦が出来ないんだ?
などなど、誰かれ構わず聞きまくる。
ちなみにイルカが哺乳類なのは、元々は「偶蹄類(カバなど)」の分類されていたある種(メソニクス)が、敵やライバルが少ない水中でも生きていけるように「進化」したからだそうで、その点、元から海の中にいた魚とは成り立ちが異なる。(イルカの飼育スタッフ談)
また、渦潮については、鳴門海峡の中心部が深く、陸地近くが極端に浅いことから「早い本流」と「両岸の緩やかな流れ」が同時におこり、その「速度差」により緩やかな流れが本流に巻き込まれることで渦潮が発生するそうだ(ガイドブックより抜粋)
また、規模で言えば鳴門の渦潮が世界で一番大きいとのこと。
こんなこと息子が聞かなければ、大人の私は疑問にすら思わない。
イルカは哺乳類だし、鳴門には渦潮がある。それが当たり前だからだ。
また「何でイルカは人間の言うことを聞くの?」という質問。
スタッフの方は「イルカは賢い。だから人間の指示が分かる。」と答えていたが、息子が聞いていることの本質からはズレている。息子も釈然としない顔をしていた。
本人の質問の主旨を代弁すれば、何故イルカは海で自由に泳ぎ回らず、ここで人間の言うことを聞いて生活しているのか?ということであり、その答えは「人間のエゴ」だ。
施設を運営している事業体や、町おこしを狙う自治体、そしてそこで働く全ての従業員の生活のために、このイルカ達は「囲われている」わけで、金を払っている私たち二人もそれに加担している。
調教師体験が終わり、海辺を歩きながら車に戻る途中、そのことを話すと「じゃあイルカさんたち可哀想じゃん」と言う。
だが飼い慣らされたイルカは、大海で生きる術を持たず、また仮に自然に順応出来たしても、そこには過酷な生存競争が待つ。
「どっちが良いかは分からないな」
そう答えるしかなかった。
子供の何で?は時に大人以上の鋭さを持つ。
たくましく育て!!その3 少しずつ、少しずつ
今回の旅行、初日の朝8時から3日目の夜20時に帰宅するまで、合計60時間。
息子と2人でこれだけ長い間、一緒にいることは今までなかった。
以前、このブログでも書いたが、我が息子はかなり「ヘボい」
常にママにべったりで、すぐ泣くし、根性もない。
子どもなんてそんなもんだし、私もそんなもんだったのだが、それでも「こいつこんなんで大丈夫なのかな?」と不安になることある。
特に父親と息子という同性同士の場合、社会の厳しさを知る父としては、どうしても息子を辛口に見てしまう。
だが、今回の旅行。
すぐに甘えられる母親も、文句を言いながら何かと世話を焼いてくれる姉もいない。
同行するのは厳しく、何も手を貸してくれない、そしてちょっぴり嘘つきのこの父だけだ。
本人としても「この旅はヤバい」そう思っていたふしがあり、そのせいなのかいつもより一回り、二回りもたくましく見えた。
まず、「自分の荷物は自分で持て」と、結構重めのリュックサックを背負せていたのだが、いつもなら「重い!!ママ持ってて」などと言うのに、今回は文句も言わずに担いでいた。
多分、「こいつ(父)に言っても無駄だろう」と分かっていたのだろう。
また、2日目の渦潮見学の後、香川に戻り丸亀にあるレオマワールドという、なかなかシュールな遊園地に行ったのだが、そこにジェットコースターがあった。
いつもなら怖がりの息子は絶対に乗らない。
試しに「乗ったらアイスだ」そう誘ってみたところ、熟考の末「チャンレンジする」と言う。
レオマワールドのジェットコースターの怖さは「中の上」という程度だったが、初めて乗った子供にとっては相当なものだっただろう。
最後のコーナーを曲がり、発着場に戻る時、横を見ると、何とか涙をこらえながらじっと前を見ていた。
「おお、泣かなったなぁ。凄いじゃん」
「無く暇もないくらい怖かった。もう二度と乗らない。アイス食わせろ」
ブルブル震えながらそう言っていた。
ジェットコースターに乗れた。
たったそれだけだが、父にとっては感動する出来事だった。
なお、本人的には、何かの壁を超えたのか、その後、バードフライヤーという地上59M上空でグルグル回るブランコのような絶叫アトラクションにハマり、何度も付き合わされる羽目に。ちなみに絶叫系には強い父だが回転系には弱く、気持ち悪くなっている私を息子は楽しそうに眺めていた・・・
ママと一緒に!!ネーネと一緒に!!
そんなことばかり言っていた息子だが少しずつ、少しずつだが、逞しくなっている。
こんな感じで旅も終盤。
最終日は早朝に金比羅さんを詣り、香川のうどんを3店ハシゴし、帰路についた。
長田 in 香の香(食べログ)
宮川製麺所(食べログ)
本格手打 もり家(食べログ)
夜20時。無事帰宅し、横では息子がママと姉に自分の冒険を熱く語っている。
イルカが可愛いかったが、ちょっとかわいそうだったこと、渦潮が凄かったこと、香川にはうどんしかないこと、金毘羅さんの階段がきつかったこと。
父からは、ジェットコースターに乗った勇気、そして旅中、とても頼りになったことを付け加えた。
「エヘン、エヘン」
少しだけ誇らし気な顔がそう言っているようだった。
旅は少年をちょっとだけ大人にする。
昔読んだ小説の一節を思い出した。
息子が「少年」でいる時間など、あと数年だろう。
その時間を慈しみながら、また二人で旅に出たいと思う。
本日のコラムでした。
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