アメリカの本質を映し出す「FATCA」のお話


「こりゃ勝ったな」

間一髪で狙撃を免れ、血を流しながら力強く拳を挙げるトランプを写した写真。

見た瞬間そう思った。

大統領選に関係のない日本人ですらそう感じた「力」があの写真にはある。

そして、アメリカ人はそういうのが大好きだ。

ふと思い出した。

2001年に発生したアメリカ同時多発テロ(9.11)

その直後、倒壊したビルの瓦礫の山に立ち、メガホンを片手に皆を鼓舞するブッシュ大統領(息子)を写した写真。

その強いリーダー像に「全米が感動」し、90%超という驚異の支持率を叩き出す。

その後、「大量破壊兵器がある」と主張しイラク戦争に突入したものの、結局、そんな兵器は見つからず、中東をムチャクチャにしたことを覚えていらっしゃる方も多いだろう。

「アメリカって、たまにやるよね。凄い横暴なこと・・・」

そんなところだ。

さて、前置きが長くなった。

本日はFATCA(ファトカ)の話。

Foreign Account Tax Compliance Actの頭文字を取ったもので、直訳すると「外国口座税務コンプラアンス法」とでもなる。

アメリカから見て「外国(日本など)」に住むアメリカ人が

・しっかりと税務申告をしているか?

・脱税してないか?

をチェックするためのルールで、当然、アメリカの法律だ。

自国より税率の低い国に資産を移すことで節税を行うことを「資産フライト」と言い、昨今、どの税務当局も頭を悩ませている。

日本でも海外財産調書というものがあり、海外に保有する資産が「5,000万円超」の人を対象として報告義務を課しているのである。(違反すると1年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金)

このFACTA、アメリカ国内の話なのだが、実は日本の金融機関にも相当な影響がある。

保険、証券、銀行などで新規取引を行う場合、ほとんどの申込書類に、

「あなたアメリカ人ですか?」

という質問が入っていて、横に「FACTAに関するもの」という注意書きがあるのだ。

もしアメリカ人が日本の金融サービスを利用した場合、このFACTAにチェックをする。

金融機関はそれをもって「米国籍」と認識し、その取引に関する情報を米国内国歳入庁(IRS:日本の国税庁)に報告しなくてはいけない。

ふと冷静に考える。

これって凄いことじゃない?

アメリカの税金のために、日本の金融機関が、何十万、何百万という取引全てで「FACTA」をチェックしているのだ。

金融庁いわく

「アメリカにお願いされているから」

ということだが、もし他の国からも「お願い」されたら、それにも対応するのだろうか?

そうなったら金融関係の書類には

あなたはアメリカ人ですか?

あなたはイギリス人ですか?

あなたはモンゴル人ですか?

あなたは、あなたは・・・

と並ぶことになるが。

逆に日本の税務当局がアメリカに同様のことをお願いしたとして、米国の金融機関が対応してくれるものだろうか?・・・・

とてもそうとは思えない。

「お願い」ではなく「命令」なのだ。

なお、申込書のFACTAの項目をお客様が間違えてチェックしてしまうと、申込書を取り直しになったり、訂正の書類を書かないといけない羽目になり、現場としては非常に迷惑。

そんなわけで金融業界にいると、アメリカという国の傲慢さ、身勝手さをまざまざと見せつけられることが多い。

だがアメリカはやっぱり怖い。

キレたら手が付けられない単細胞が一番ヤバい。

 

だからこそ今回の大統領選も、あの写真一枚で「一気にトランプ」となる。そう思ったのだが、意外や意外、そうでもないらしい。

失言キングのバイデン大統領が撤退し、ハリス副大統領が後継候補となったことで状況が一転。

支持率ではややトランプ優位らしいが、その差は「バイデン」の頃よりは縮まり、ほぼ拮抗しているそうだ。

流石のアメリカ人も「1枚の写真だけで決めちゃうのもヤバいよね・・・」と気付いたのかもしれない。

ついでに

「自分たちの都合でさ、海外の金融機関に迷惑かけちゃダメだよね」

と悔い改めて欲しいが、まあそれは無理だろう。

どっちが勝っても「勝手さ」は変わらない。

本日のコラムでした。

 

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7月 28th, 2024 by