息子を助手に土地調査in茨城


断りにくい筋(先輩とか親戚とか)から、

「絶対金にならないけど、絶対引受けないといけない案件」

というものが来ることがある。

どんな人でも経験があるだろう。

「茨城県 鉾田に親が買った土地がある。それを売りたい。」

そんなご相談を頂いたが、不動産というのは地場産業のようなもので、相場観、利便性、ニーズ、それらはそこに住んでいないと分からない。

だからこそ、その土地のことはその土地の不動産会社に任せた方が良い。

「地元の不動産屋さんに任せた方が良いですよ」

面倒だから、ということではなく、本心からそうアドバイスしたが、

「いや、お前に任せたい。地元の不動産屋の選別も任す」

と大変ありがたいお言葉を頂く。

営業冥利に尽きる。これは一肌脱がねばならない。

と言うことで色々資料を預かったのだが、な、なるほど・・・・

そもそも地番しか分からず、ご本人も親御さんもその土地がどこに(住所)あるのか分からないとのこと。

バブルの頃に「確実に上がる」と言われ購入した際、地元の不動産屋の案内で一度行ったきり。

「何か川のそばで、近くに小学校があって、海まで3キロくらいだった」

そんな貴重な証言もあったが、何の参考にもならない。

なお、一般の方には馴染みがないが、土地や建物には市区町村が管理する「住所」と、法務局が管理する「地番」の2つがある。

同じ土地でも二つの表記があり、基本的にこの2つはリンクしていない。

また「住所→地番」の変換はネットで出来るのだが、その逆「地番→住所」を調べるのは意外と面倒で、法務局や国会図書館に備え付けられている資料か、現地の市区町村にある「地番図」というものを見るしかない。

謄本などの資料を見ても色々と不穏な表記があり、これは一筋縄ではいかない。

「もう、現地行くしかねーな」

とにかく、こういう時には地元の役所に行くのが一番早い。

役所に行けば住所も分かる。

現地を訪れるなら、簡易な計測もしたい。

こういう時に役に立つのが・・・・

助手の息子(8歳)だ

計測というのは一人ではなかなか難しい。

メジャーで計測するにしても一人でやっていると始点から終点までメジャーを「ピンと張る」ことすら出来ない。

始点で「これ持ってろ!!そこを動くな!!」という指示を守ってくれるだけでありがたい。

弊社のような零細企業では、この役目を務める人間にも事欠くので、この手の計測には子供たちが動員されることになる。

昔は上の娘がやっていたが、今は塾で忙しので、最近では二代目の息子が活躍しているのだ。

ちょうど夏休み。

「おい、今から茨城行くぞ!!仕事を手伝え!!」

「何?それ面白いの?」

「面白くはない。だがオヤツ付き、道中、ニンテンドースイッチやり放題だ!!」

「それは良いですね」

ニヤリと息子。

無事、業務委託契約締結。

鉾田市は茨城県の首都水戸市の下に位置し、市の西側に霞ヶ浦、東側に太平洋、そして市の中央に北浦湖を抱える「水の都」だ。

東京から車で1時間半。

意外と近い。

「なかなか良いところじゃないか。」

「田舎だね。」

「まあ、そうだな。」

「で、何しに来たの?」

「土地の調査だ」

「僕は何するの?」

「距離を測る手伝い。それとその土地に巣食っている大蛇を始末してもらう。」

「大蛇って何?」

「ぶっとい蛇だ。」

「全然ヤダ!!蛇怖すぎる!!」

そんなアホな会話をしているうちに鉾田市役所到着。

鉾田市の名産はメロンだそうで(産出額で市区町村全国一位)市役所の入り口では、推定直径2メーターと思われるメロンのオブジェの取り付け工事中。

何と素晴らしい税金の使い方だろう。

区役所の窓口で200円を支払い、当該エリアの地番図を取り寄せる。

10分後。

窓口に表れた担当者の顔色は冴えない。

申し訳なさそうに地番図をこちらに差し出す。

「境界未確定地です・・・」

多分そうだろうとは思っていたが、やっぱりそうだった。

つまり隣の土地との境界が確定していないため、正確にはどこからどこまでが自分の土地なのか分からないということ。

境界未確定の場合、原則、売れないし、何も建てられない。

要は「使い物にならない」ということだ。

鉾田くんだりまで来て、200円を支払い絶望的な話を聞く。

地番図には虫眼鏡で見ないとわからないくらい小さな字で、狭い土地の中に多くの地番が書き込まれており、つまりはそれだけ多くの権利者がいるのに、未だに未整理ということ。

この土地を活用するためには、隣地の所有者に現地まで来てもらい、境界を「確定(杭を打つ)」させる必要があるのだが、そもそも30年以上前に販売された土地。

その際の登記に掲載されている住所から引越ししていたり、既に死亡していたり・・・

今となっては所有者たちと連絡を取ることもままならないだろう。

土地の図面を見ても、ざっと10人以上の隣地権利者がいて、今からこれらの人たちを探し出すのは不可能だ。

とは言え、ここまで来たのだから一応現地を訪れてみた。(市役所から車で20分)

完全な森。

しかも当該の土地はこの森の一番奥にある。

背丈の小さな助手に森の中に入るよう命じたが、大蛇トークが効いたのかビビッて入ろうとしない。

そして実際に大蛇がいそうでもある。

それに嚙まれても面倒なので撤退することにした。

「これが本当の骨折り損のくたびれ儲けだよ・・・」

オヤツを食べながら、ずっとゲームをやっていただけの助手がそうぼやく。

「仕事の90%はそんなもんだ」

「じゃあそうじゃない10%の仕事だけやれば良いじゃん」

「どれが10%なのか分からないから難しいし、楽しいんだ」

「ふーん」

何とも腑に落ちない顔をしていた。

だが父にとっては、無駄な仕事ではあったが、それなりに楽しい夏休みの1日ではあった。

まっ、そんなもんだ。

本日のコラムでした。

 

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8月 3rd, 2024 by