最高税率90%?!体験者から聞いた昭和21年 地獄の財産税のお話


実は過去の日本で最高税率90%の「財産税」という課税がされたことはご存知だろうか?

ちなみに私は10年ほど前、ゴルフを通じて知り合ったご老人の方からお聞きした。

これが実行されたのは昭和21年3月3日。

日本人にとって3月3日は「桃の節句」であり、本来、女の子の健やかな成長を願って各家庭でご馳走をふるまう習わしだが、この年の3月3日は「財産税」が課税された日として戦中世代には記憶されている。

背景は以下の通り。(諸説あるが、ここでは先の高齢者の話を採用する)

前年の昭和20年8月15日、日本は太平洋戦争に負け、国内は疲弊していた。

そこに乗り込んできたのがGHQ。

だが国土もボロボロなら、財政もボロボロで、何をやるにしても金がない。

そのために「国民の金」を捲き上げる必要があった。

そのために「1回こっきり」で超高率の課税を行う。

それが財産税だ。

昭和21年3月3日時点で保有している資産に対し、最高税率90%の課税を行う。

なお、本税制は累進課税方式となっており、税率は以下の通り(wikipediaから抜粋)

課税価格 税率
10万円超-11万円以下 25%
11万円超-12万円以下 30%
12万円超-13万円以下 35%
13万円超-15万円以下 40%
15万円超-17万円以下 45%
17万円超-20万円以下 50%
20万円超-30万円以下 55%
30万円超-50万円以下 60%
50万円超-100万円以下 65%
100万円超-150万円以下 70%
150万円超-300万円以下 75%
300万円超-500万円以下 80%
500万円超-1,500万円以下 85%
1,500万円超 90%

 

昭和21年の大卒国家公務員の初任給が540円。

現在では20万円くらいなので、物価は約370倍ほど違う。

そこから逆算すると、課税がスタートする10万円超(25%)は現在価値で「約3,700万円」ほどとなるのだが、ここで言う「資産」には不動産も含まれるので、当時としても「それなりの数」が対象になったと思われる。

さらにそこから税率は上がり100万円(現在価値で言えば約3.7億円)超には70%を適用。

地主などは相当痛い目にあったようだ。

最高税率90%の適用は1,500万円超、今なら55億円を超えた分ということになり、流石にここまでくると対象となるのは当時、幅をきかせていた財閥系の資産家だけだろうが、とにかく凄まじい課税を行ったわけだ。

「GHQとしては『お前ら戦争で負けたんだから、財産を全部差し出せ!!』ってことなんだろうな。3月3日っていうのは金持ちに対する嫌がらせだろう。」

このお話をしてくださった方のご実家も、とある地方の名士だったそうだが、相当な財産を取られたとのことだった。

なお、財産税、この方にとっては苦い思い出だが、反面、一般市民からはGHQに拍手喝采だったようだ。

今ほど豊かではない時代。

「自分には関係ない」という方も多かったのだろう。

むしろ「偉そうにしていた金持ちが貧乏になる」という点にある種のカタルシスを感じていたのかもしれない。

ちなみに、今までは実際に財産税を食らった方の体験談を元に説明してきたが、これらを補足すると、この強引な施策の裏には国債の償還の問題がある。

当時、ものすごい量の戦争国債を発行し、それらを買っていたのは国内の金融機関(つまりは国民の預金)と一部の海外投資家だったが、敗戦国日本としてはそれらの返済が出来ない。

しかし、海外投資家に金を返せねば日本はデフォルトとなるため、「国の再建」を目指す日本政府としてもGHQとしてもそれだけは避けたい。(一度デフォルトを起こすと、しばらく国債が発行出来ないから)

せめて国内は泣いてもらおう・・・・

そういう理由から預金=国債に90%の財産税を課税し、国債の償還を「チャラ」にしてしまったのだ。

なお、この財産税をやる「前段階」として、新円切替えも実施している。

「今持っている古いお金は使えなくなるぞ!!新しいお金に替えてやるから、まずは銀行に持ってきて預金しろ!!」

と宣言し、市中の金を集めたところで預金封鎖。

その上で財産税を実行している。

「いざとなったらそういうことをやる国だよ。日本は」

10年以上前、鰻屋さんで聞いたご老人の言葉を鮮明に覚えている。

最近、大量の赤字国債発行に対し「国の借金(国債)は国民の財産(貸付金)だから問題ない!!」というような主張を耳にすることも多いが、つい80年前にはそんな借金を「なかったこと」にされた歴史もあるのだ。

ああ、そういえば紙幣も切り替わるらしいね・・・

本日のコラムでした。

 

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9月 30th, 2023 by