会社員にとって会社の経費というのは「第二のお財布」のようなものです。
お客様との飲み会、ゴルフ、社内の飲み会、出張
これらの経費をどれくら使えるのか?ということは、すなわちその会社での肩書きや実績に直結することが少なくありません。
もちろん
「経費には厳しく、上も下も一切使えない」
という会社もありますが、それでも幹部クラスになれば話は別で、一般社員にはばれないところで意外と使っているものです。
大きな声では言えないまでも、
会社の金を使って遊ぶ
ことは会社員としての密やかな楽しみであり、第二のお財布を分厚くすることは出世のモチベーションにも繋がります。
しかし、この経費。考え方を変えれば巧妙なトリックと言えなくもありません。
多くの会社を訪問した経験で言うと、経費と給与には相関関係があります。
大別すると、下記の4パターンに分けられます。
タイプ1 給与も経費もウハウハ
地位に応じて給与も経費の権限も上がる
タイプ2 給与は?経費はウハウハ
地位に応じた給与はイマイチ上がらない。しかし経費の権限は上がる
タイプ3 給与はUP、経費はNG
地位に応じて給与は上がる。しかし経費に関しては厳しい
タイプ4 給与も経費も。。。。
地位が上がっても給与も経費の権限も上がらない
まず、タイプ1はその会社の業界自体がバブル状態で、
「何だか分からないほど儲かる」
という状態のところが多いです。
昔の投資銀行や、2,3年前の太陽光関連など、一過性のものが多いため長続きしません。
逆にタイプ4は、会社そのものが儲かっておらず
「無い袖は振れない」
という状態です。
日本で最も多いのはタイプ2でしょう。
きちんと利益を出している上場企業、中小企業などはほとんどこのカテゴリーに属します。
偉くなればそれなりに給与は上がるけど、それ以上に会社のお金(経費)を使えるようになる。ということです。
給与の差も新入社員と部長クラスで、おおよそ2~3倍以内に抑えられています。
タイプ3は主に外資系。
成果に合わせて高い報酬を支払う代わりに、会社の経費には厳しく、必要なコストは
「自分で負担しなさい」
という考え方です。
そのため、重要顧客への接待や贈答品などは自腹であることも珍しくありません。
反面、給与は最低ランクと最高ランクで5~10倍の差がつくこともあります。
ここまでお話するとお気づきの方もいらしゃるかもしれませんが、タイプ2とタイプ3は会社から見たキャッシュアウトとしては差はありません。
給与で報いるか、経費で報いるかだけの差です。
例えば、タイプ2のA社の部長は年収1000万円。年間経費は500万円としましょう。
それに対し、タイプ3のB社の部長は年収1500万円。年間経費は0です。
給与だけで見れば、A社の比べB社は1.5倍の水準です。
しかし、会社としては1500万円のキャッシュアウトであることは変わりありません。
では、受け手側、つまり社員側の立場で立って考えるとどうでしょうか?
どちらも1500万円の収入があるように思えますが、実は違います。
給与として受け取っているB社の部長は高率の税金と社会保険料に多くを取られますが、A社の部長の500万円は無税。つまり丸々使えるわけです。
そのため傍目には、A社の部長の方が羽振り良く見えます。
また、
「会社の金なら良いけど、自分の金なら嫌だ」
という心理もありB社の部長の方が意外と堅実だったりします。
一番、分かりやすいのは夜の女性関係です。
本当に好きな人は自分の金でも行くのでしょうが、
「自分の金ならアホらしくて行かない」
という人は結構多いです。
反面、A社の部長は「どうせ自分の金ではない」という心理もありますから、大盤振る舞いします。
そういう人は夜の商売の方から人気がありますから、良く声がかかるようになり、魔のサイクルに入るわけです。
A社のスタイルは結局のところ、
「本来は給与で貰えるものを、経費というご褒美に置き換えられているだけ」
なのですが、意外と自分では気づかないもの。
会社のお金で得をしている気になっていても、巡りめぐれば給与が抑えられていることの裏返しなのです。
このような話をして、
「経費を使いたいですか?それとも経費ゼロでその分を給与に上乗せして欲しいですか?」
と問うと、ほとんどの人が後者を選びます。
そりゃ、自分のお金になった方が嬉しいですからね。
とは言え、この二つのタイプは会社の歴史や文化などもあり、一概にどちらが良いといえるものではありません。
タイプ2は「皆でワイワイがやがや」、「偉い人間が金を出す」という仲間意識が熟成されやすく、タイプ3は「自分は自分、人は人」という雰囲気になりがちなことも事実です。
しかし、私のように長い間、色々な人の人生を見るような仕事をしていると、タイプ2の弊害も感じます。
それは、経費大盤振る舞いの悪い習慣が身についてしまって
「引退後にキツイ」
ということです。
仕事柄、「昔は偉かった」というおじさんに会うこともありますが、飲み会、ゴルフ、社用車、タクシーなどを取り上げられることは、
思っているよりシンドイ
と口を揃えます。
会社から与えられた玩具がなくなり、かと言って給与水準はそれほど高くはありませんから、現役時代と同じ生活をするだけの貯蓄はありません。
はっきり言えば、身の丈以上の良い生活をしていただけで、ご本人もそのことは分かっていますが、それでも生活レベルを下げることは誰にとっても辛いのです。
「シンデレラと一緒。魔法がとけてただのハゲオヤジになっちゃった」
ある方がおっしゃったこの言葉には苦笑するしかありません。
大勢を連れて飲み歩く。
高級ゴルフコースでお客さんを接待する。
会社で偉くなれば楽しい経験も出来ます。
しかし、それ誰のお金ですか?
タダより高いものはありません。
本日のコラムでした。
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします