金融所得税は「1億円の壁」を壊せるか?


「1億円の壁」

岸田「新」総理が会見で言った言葉が、にわかに脚光を浴びている。

本来、高所得者であるほど税率が「高い」はずだが、年収1億円を超えると、不思議と税率が減る。そのことを指して「1億円の壁」と言うらしい。

その理由は単純。

株式譲渡で利益を得た人の割合が増えるからだ。

多くの方がご存知の通り、株式売買の利益には一律20%(所得税15%+住民税5%)の税金がかかる。

他の収入と「分離(関係ない)」することから「分離課税」と呼ばれる。

しかし、給与所得には、その所得金額に応じて15~55%(所得税5~45%+住民税10%)が課税。

そのため、

・給与で1億円もらっている人(税率55%)

と、

・株式売買で1億円の利益を得ている人(税率20%)

では、税負担が異なる。

どう考えても後者の方が有利。

1億円を超えると株式売買で利益を出している人が増えるのだろう。

そのため、年収1億円をピークに税負担率は低下していく。

実際の財務省のデータでも、年収1億円の所得税の平均税率は27.9%であり、これが年収50億円になると16.1%と10%以上も低下している。

年収1億円での27.9%という数字は、給与所得者の45%と株式利益者の15%(所得税のみ)が「混ざった数字」である。

そこで、ざっと計算をしてみると以下のような構成だと、所得税の平均が27.9%となる。

・給与所得で1億円 43%
・株式売買で1億円 57%

なお、当然ながら「給与7,000万円+株式利益3,000万円」で合計1億円というハイブリッド型の方も多いだろうから、単純に「1億円プレイヤーの57%が株で儲けている人」ということではないが、それでも「年収1億円」という層を全体として俯瞰してみれば、その収入源の6割近くが「株」であることは、ほぼ間違いないだろう。

しかし、これが年収50億円となると、その所得税は16.1%と、株の譲渡益15%とほぼ同じ。

つまり、99%が「株」の売買益ということになる。

 

そこで、こういう話になる。

株式譲渡の税率が低すぎるのではないか?

つまり、金融所得税を導入し、株式譲渡益により高率の税金をかけるべきだ、という議論である。

これには2つの側面がある。

1つは昨今の「格差ブーム」に乗っかったもので、

地道に働いている(給与所得者)の税金より、株を転がしている奴の税金の方が安いなんてズルい!!

という感情的なものからくる、課税強化論である。

実際には給与所得の課税は、控除などの仕組みがあるため、額面に対して「20%」の税金を負担している人はかなり少ない。

各々の控除の額によっても変わってくるが、恐らく年収1700万円くらいで「実質的に20%負担」という感じで、それくらいの収入を得ているのは全体の1%弱。

対して、株式譲渡は容赦なく「利益の20%」であるから、実際にはそこまで「ズル」くもないのだが、それでも金持ちがより金持ちになるのは許せない、という感情が先立っているのだろう。

もう1つは、世界的な課税ブーム。

どこの国もコロナで大盤振る舞いをしたため、その手当てに四苦八苦している。

また、お金をばらまいた結果、株式市場が過熱。

そのため

「じゃあ、そこで儲けた人から貰いましょうかね」

という単純な話になる。

アメリカでも富裕層を対象に、現行の譲渡益20%から40%への引き上げを目指していて、流石に40%は難しいかもしれないが、30%くらいにはなるかもしれない。

なお、フランスは既に30%(分離課税、総合課税も選択可能)、ドイツも26%(分離課税)なので、両国とも日本より高い。

「金持ちズルい!!」という民意?、そして、他の国も上げているという背景。

「分厚い中間層の再構築」

を目指す岸田内閣としては、手を付けやすいところだろう。

税率を上げるのか?それとも総合課税にするのか?そのあたりの詳細はまだ分からないが、個人的には「やるだろうな」と思っている。

また、これもごくごく個人的な話だが、過去の株式売却損も「たんまり」あるので、税率が上がっても、私にはしばらく関係ない。

更に、年収1億円なんて縁がないので、そんな壁が壊れようが、壊れまいが、知ったこっちゃない。

そういう意味では、やれやれ岸田、フレフレ岸田、という感じで、私もまた「民意」にのまれている1人と言える。

本日のコラムでした。

 

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10月 9th, 2021 by