着物、骨董の二束三文。やっぱり金、残すなら金


母が施設に入ったため、母が利用していたマンションの一室が空いた。

主を失った部屋には大量の物が・・・

着物、骨董、美術品、絵画、食器、植木、などなど。

「私が死んだら好きに処分して」

母はそう言っていたが、ちょっと待てと。

それはつまり存命中は部屋をそのままにしておくということで、正直なところかなり勿体ない。(ちなみに私が持っている物件だ)

貸せばそれなりの金額になるので、母の望みを聞き流し、早々に片づけに手を付けることにした。

一度は施設に入った母に一時帰宅してもらい「これはいるのか?いらないのか?」と判断をしてもらう。

「生きてるうちに人生の整理をするみたいで嫌だ」

そう泣き言を言っていたが、使わない部屋を空けておくほどの余裕は我が家にはない。

このような時、物自体の良し悪しに人間の感情が入るため、なかなか厄介だ。

「それはお父さんが30万円で作った〇〇織の帯だからあなたが使いなさい」

なるほどねー、うん。まったく要らない・・・

帯?俺が帯巻いてるところ温泉以外で見たことあるの?ねーだろ?

と、こんな会話をやり取りしないといけないものが10も20も出てくる。

「これは〇〇織だから」、「また〇〇織かよ!!〇〇織のファンクラブかよ!!」、「これは〇〇先生のお弟子さんの絵だから(日本画)」、「弟子かよ!!」

結果、荷物は1/3ほどになったが、今度は要らないものを処分しなくてはいけない。

分野ごとに様々な買取業者を呼んだ。

で、ここで結論だが、もうホントに二束三文にしかならない。

ざっと挙げてみよう。

・毛皮(購入時 300万円)  1500円
・着物(購入時 相当高い)  20枚ほどがまとめて7000円
・絵画(購入時 500万円)   7枚まとめて8000円
・冷蔵庫(購入時 5万円)    3000円
・洗濯機(購入時 2万円)    2000円
・こけし(購入時 不明)   500円

だが、買ってくれるだけまだマシで、7割は買取不可。

100万円以上だったという和箪笥、父が買った骨董(壺7個)、着物も半分くらいは値が付かず、無料でも引き取ってくれないという悲しい扱いを受けていた。

なお、絵画の中では「〇〇先生の弟子(日本画)」の作が一番高く3,000円ほど。

オークションに出せば2万円程度で売れるらしい。

確かに検索すると、同じ画家の同じような構図のものが、メルカリなどで1,2万円程度で出てはいたが、数か月も売れ残っていたし、額縁を含めて結構デカいので送料もかかる。

保管場所や自分でやる手間を考えれば3,000円でも御の字というところだ。

驚いたのは「こけし」

昔から家にはあり、それが一番無価値だと思っていたのだが、聞けばやや名のある作家の作らしく、これもマーケットでは3000円ほどで取引されているとのことだった。そのため500円。

 

とは言え、あらかじめ想像はしてはいたが、ものすごい下落率だ。

毛皮も着物も、安いなんてもんじゃない。

買った時の1000分の1くらいの価値しかないわけだ。

確かに、どちらも着てる人が少ないので、結局は「ニーズがない」ということなのだろう。

しかし、この中でどの業者も目の色を変えて

「売って下さい!!良い値で買いますから!!」

と言ってきたものがある。

それがこれ。

母の実家の家紋を18金でかたどった根付(キーホルダー)で、約9グラム。

母も、自分の母(私の祖母)から受継いだもので、鑑定士の話では鎖まで金でできており「非常に良いものです」とのことだった。

現在の金の価格は1グラムで約1万円。

これは18金(24金ではない)なので、取引価格はその75%となるため、グラム7500円。

9gなら約7万円ほどになる。

ちなみに祖母がこの根付を作ったのは1985年ごろだそうで、そのころの金の相場は1グラム2500円前後だから、9グラムで23,500円。

もちろん、そこに工賃などが乗るので実際にはもっと高いお金を払ったのだろうが、長い年月を経てもなお、その価値はほとんど減損していないことになる。

戦中、戦後を生きた祖母が残したこの根付が、華々しいバブル期を過ごした父と母が残した物より「高い」という事実。

ああ、やっぱり金だよねー

ちなみにこの家紋は笹竜胆(ささりんどう)というものらしく、一目見てその意匠を気に入ったので、後片づけのギャラとして私がありがたく頂戴した。

将来、私が死んだ時にいくらになっているのか?

その時になって、うちの子供たちもこう思うだろう。

何だかんだ言って金だな

と。

本日のコラムでした。

 

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12月 2nd, 2023 by