さて、3回目、後編です。
誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 前編
誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 中編
本稿では民間の介護保険の必要性について述べたいと思います。
前回、中編にて民間の介護保険には掛け捨てと貯蓄型の2つがある、との解説しましたが、「非必要性」という点においては、この両者(掛け捨て、貯蓄型)で考え方が全く異なります。
先に結論めいたことを言ってしまえば、
・掛け捨て型は原則、必要ない
・貯蓄型は全く無駄ではないので「やるならやれば」
という感じです。
では、その詳細を述べていきます。
・掛け捨ての民間介護保険について
まずは「必要ない」と一刀両断してしまった掛け捨ての介護保険からです。
なお、本題に入る前に、まずは一見関係のない死亡保障の話をさせて下さい。
話が横道に逸れてしまうのですが、非常に重要なことなので、暫しお付き合い頂ければ幸いです。
若い頃、まだ子どもが小さく、自分が死んでしまったら家族が大変。
だからこそ、死亡時に何千万円という保険金が受け取れる保険に入ります。
一般的には「掛け捨て(定期保険)」に入る方が多いでしょう。
保険料はわずか数千円です。
商品や、年齢、性別によっても異なりますが、保険金5,000万円が出るもので、毎月の負担(保険料)は5,6千円前後でしょう。
さて、何故、こんなにも保険金が大きいのに、こんなにも保険料が安いのでしょうか?
それは
発生確率が低いから
です。
30歳の男性がいて、60歳までに亡くなる人は約2人です。
つまり、2人に支払う保険金(5,000万円)は、他の98人が支払った保険料からまかなわれているわけです。
「死」という貧乏くじを誰が引くのかは分からない。
だが確率論からして2/100でそれは「引かれる」
そんな可哀想な2人を、生き残った98に人で支える。
これが保険の原理原則です。
さて、では民間の介護保険の話に戻しましょう。
では、介護の発生確率はどれほどなのでしょうか?
様々な統計データを見ると、おおよそ男性の3人に1人、女性の2人の1人が人生の最終盤で介護を必要としています。
男性の方が少ないのは、女性に比べてその手前(介護に至るまでに)でがん、脳、心臓などで亡くなってしまうからです。
なお、更に補足すると介護を必要とする方の中で、認知症は5~7割と言われています。
(こちらは統計データによって、かなりブレがある)
つまり、100人の男女がいたら、介護や認知症のリスクは以下の通りとなります。
・男性 100人
介護 33人 うち認知症 16人~23人
・女性 100人
介護 50人 うち認知症 25人~35人
このデータを見て「確率が高いと思いますか?それとも低いと思いますか?」そう聞かれたら、いかがでしょうか?
特に女性の50人(50%)に関しては、ほとんどの人が「そんな高いの・・・」と思われるかもしれません。
先ほど、若い頃に入る死亡保障のお話を致しました。
運悪く早逝した2人を、残り98人で支える、だからこそ保険料は安い。そんな構図でした。
しかし、それに比べると介護保険は「確率」がかなり高いです。
男性の場合、33人の介護を残り67人で支える。
女性の場合、50人の介護を残り50人で支える。
こういう構造です。
そうなると、当然ながら保険料は高くなります。
発生確率が高いからです。
特に女性の場合「介護になる可能性が高い(50%)」のですが、裏を返せば「介護にならない可能性も高い(50%)」とも言えます。
介護を必要とする1人を、介護にならない1人が支えるという状態なので、いわば丁半博打のようなもの。
実例を見てみましょう。
介護状態になった時(要介護3)に一時金を受け取れる。そんな商品があります。
500万円を受け取れる、という内容の商品に60歳 女性が加入すると、毎月の保険料は1万円程度です。(保険会社によっても異なりますが、おおよそ1万円前後のことが多いです。)
年間12万円、仮に80歳まで20年間支払うと、総支払額は240万円になります。
確かに要介護3以上になれば、これが倍(240万円→500万円)になって戻ってくる可能性もありますが、逆にゼロになることもあり得るわけです。
確かに介護は心配ですが、なる可能性も、ならない可能性も高いのに、それに対して高額の保険料を支払うことは合理的なのでしょうか?
私はそうは思いません。
そのため冒頭で「必要ない」と述べたわけです。
では実際にはどうしたら良いのでしょうか?
簡単な話、自分で貯めておけば良いのです。
まずは介護にどの程度のお金がかかるのか、ということをしっかりと理解し、その金額をよけておけば良いだけです。
誰も教えてくれない介護保険の「真実」を大解説 前編
前編でも詳細を解説した通り、普通の介護であれば、統計上、介護期間は5年から最長10年、毎年70万円~100万円程度がかかるので、350万円(70×5年)~1,000万円(100×10年)程度のお金を用意しておけば、お金が尽きる前にお迎えが来ます。
実際に介護の心配が出てくるのは50代後半から60代後半くらいですが、50代であればまだ収入もあるので、それらの中から、「介護貯金」を始めても良いでしょう。
保険料だと思って毎月一定額を積立て、インデックス型の投資信託や、アメリカ債券などに投資をするドル建保険なども選択肢にいれるべきです。(以下、参照下さい)
株式市場 大暴落 素人は「いつ」「何を」買うべきか?
今、ドル建保険に入るべきか?やめるべきか?
70代後半を介護時期の「ターゲット」とすれば、60代後半でもまだ10年の運用期間があります。
資金を2倍にするまではいかなくても、1.5倍くらいは十分狙えるはずです。
そして介護になればそれを使えば良いし、もし「末期がんであと〇年」などと言われれば、最後の贅沢で自分の好きなことに使えば良いのではないでしょうか?
掛け捨ての民間介護保険に入るくらいなら、自分で用意しよう。
それが本稿の主旨です。
・貯蓄型の民間介護保険について
最後に貯蓄型の商品ですが、これは一時金を預けて、
・要介護になったら介護年金を払う
・死後には残ったお金を遺族に払う
というような内容のものが多いです。
例えば、1000万円を預けて、要介護2以上になれば毎年100万円を生きている限りずっと(介護が15年続けば1,500万円受け取れる)、もし10年以内に亡くなれば、残金を払う、というような感じです。
ただし、介護が10年以上続くようなことは稀なので、大抵の場合は1,000万円に「多少イロがついて」戻ってくるだけで終わることが多いです。
これは持っているお金を「介護のために預けておく」という性質ですが、ある意味では「介護にならないと使えない」というカギを自分で付けてしまうような行為でもあります。
そのため、個人的には「手元に持っておいて運用すれば良いのに」とは思いますが、損をするような話でもないので(別の方法での増やす機会を損失していますが)、「やるならお好きにどうぞ」というスタンスです。少なくとも弊社ではお勧めしてません。
・最後に・・・・
さて、前、中、後編と続いてきた介護保険の話ですが、ここまでお読み頂ければ、かなり理解度は深まったかと思います。
介護は発生確率が高いため「保険との相性が悪い」というのが私の感想です。
また、私自身も父と母の介護を経験していますので、介護に対して「お金だけの問題ではない」という実感があります。
もちろん、全くお金がないのも困ってしまうのですが、それよりは家族のサポート体制であったり、本人のマインド(感謝をする人が、いつも文句ばかり言っているか、等)が重要です。
また、「快適な介護」というのは、あるようでないと言いますか・・・結局のところ、最後の最後は何をしても辛い、というのが現実で、お金があったところで、解決できることは少ないです。
であるならば、介護になるかならないか、その時、自分がどのような状態か、そんな「考えても仕方がないこと」は考えずに今を楽しむ。
出るか、出ないか分からないお化けに怯えるより、身体が元気なうちにやりたいことをやる。
但し、本当に何も考えていないと、野垂れ死にのような形になってしまうので、やれること(多少のお金を準備しておく)はやっておく。
それが正解なのではないか?そう思っております。
歳をとると、介護や病気など、将来の不安が増しますが、ファイナンシャルプランニングの力でそれらの心配を取り除いていきたい。それが私の願いです。
介護、相続、老後の運用、ファナンシャルプランニングなどのご用命がございましたら、
info@mikazuki-navi.jp
までご連絡下さい。
1級FP技能士・宅建士 加藤 圭祐(あおばコンサル代表)
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