今、ドル建保険に入るべきか?やめるべきか?


貯蓄系の保険商品(終身保険や年金保険)では、円建の商品に比べ、ドル商品の方が利率が高い。

しかし、歴史的な円安ドル高・・・・

今、ドル建の商品に入るのは良いの?悪いの?

最近(2024年3月時点)よく寄せられるお問合せです。

正直なところ「こうするべき」という絶対的な解はありませんが、本日は検討をする上でのポイントを整理したいと思います。

 

1 利率とは何だ?

まず基本的なところで、そもそも、利率とは何なのか?その点を解説したいと思います。

結論から言えば、利率は国債の利回りと深い関係があります。

例えばA社のドル建終身保険の利率が3%だとします。

このような時、A社は想定される販売量に応じて、国債を買います。

何よりも安全性が重要視される保険商品では、株などの投機性の高い運用は認められておらず、原則的に最も安全な「債券」での運用を行うからです。

ドル建終身保険の場合には、ドルで運用するため米国債です。

米国債はアメリカ政府が発行するもので、毎年一定の金利が支給されます。

100万ドル(1.5億円)の国債を買って、その利率が4%だとすれば、毎年4万ドル(600万円)の利子を受け取れるわけです。

毎年4%ですから、この米国債を25年間保有していれば、トータルで受け取れる利子は、支払った100万ドルと同額になります(4万ドル×25年=100万ドル)

かつ、満期の際には、この100万ドルは元本がまるまる返ってくるので、それまで受け取った利子を含めれば「2倍になった」わけです。

これが米国債を使った運用です。(実際にはこんな単純ではなく、保険会社は頻繁に米国債の売り買いを繰り返し、より高い利益を上げます)

つまり、米国債が4%であれば、保険会社側は「25年で倍になるな」と計算が出来るわけです。

そして、これを「細かくして売っている」のが各個人に販売されるドル建終身保険です。

保険会社としては先が読めているので「2倍になる」という範囲の中で、

・それぞれの契約者の保険金をどれくらいにするか?

・将来の解約返戻金をどの程度にするか?

・自社の利益をどの程度確保するか?

ということを決めるわけです。

最後の「自社の利益」については、各社で判断が分かれるため、それが結果として各保険会社の利率の違い、保険料の違いに反映されます。

「利益を多めにしたい」という会社は利率も低めで、保険料も高く、「薄利多売で行く」という会社は利率も高めで、保険料も安くなります。

以上、ご説明してきた通り、ドル建の商品の利率はその時々の米国債に利回り(利子)に影響を受けます。

例えばコロナ禍の時などは、景気対策で米国債の利回りが1%を割り込んでしまうこともあれば(金利を下げて人々がお金を「借りやすく」する→家などを買う人が増え、景気が上昇する)、昨今のようにインフレ対策として4%台になることもあるわけです。(金利を上げることで、消費を冷ます)

言ってみれば、米国債がドル建商品の「原材料」のようなもので、良い材料が手に入れば良い商品が、そうでなければそこそこの商品しか作れないということです。

その点、今は米国債の利回りが非常に高いため、「良い材料、良い商品」の時期と言えます。

 

2 利率の為替の相関関係

次に利率と為替の関係についてです。

まず、この大原則を知って下さい。

それは、

利率が上がれば為替は下がる(円安ドル高)

ということです。

このことは「億万長者の気持ち」になってみると理解しやすいでしょう。

例えば、あなたが1000億円の資産を持っていたとします。

プライベートジェットで世界を飛び回るような生活を送っているので、正直、為替などはほとんど気にせずに暮らしています。

そんな時、日本の国債の利回りが1%で、米国債が4%だったとします。

さて、どちらに投資をするでしょうか?

もちろん米国債です。

放っておいても毎年4%の利息が手に入るのですから、当然の判断です。

そうなると、自分が持っている円資産をドルに換えて投資をすることになりますので「円を売って、ドルに換える」という行動が発生します。

世界中のお金持ちや、投資家(ファンドなど)が同じようなことをするため、円は売られ、ドルは買われ、結果的に「円安ドル高」になるのです。

これはマーケットの大原則です。

過去、リーマンショック後に利率4%台で、かつ、1ドル80円という「高利率。超円高」という状態が発生したこともありますが、これはリーマン前の高利回りの商品が残っていた、という特殊事情を背景にした「例外」であり、再現性はありません。

今後、同じようなことはないかと思われます。

 

3 利率を重視した方がベター

ここまでお読み頂き、ドル建商品への理解もかなり深まったのではないでしょうか?

その上で申し上げれば、やはり為替の動向よりは「利率」を重視した方が良いということです。

言い換えれば、

利率が高ければ、為替が高い(円安ドル高)のは仕方がない

ということです。

また、為替は日々動きますが、利率は一度契約してしまえば変わりません。

注:一部、利率も変動する商品もありますが、これも最低保証がされていて、利率が高い時に契約すれば最低保証の利率は高いです。

そのため、出来るだけ「高い利率」で契約することが肝心で、その点、今は良いタイミングと言えます。

また、為替に関しても高い時(1ドル150円など)もあれば、安い時(1ドル110円など)もあるので、今現時点のドルが高いからと言っても、その価格が永遠に続くわけではありません。

ドル建の保険は毎月、もしくは毎年支払っていくので、ドルを買うタイミングも分散されます。

これらを「ドルコスト平均法」と言います。

これも実際の例を見てみましょう。

ドル建保険に入る上で、一番怖いのは「より一層の円安」でしょう。

将来、1ドル200円というような超円高な状態です。

今後、5年間で、以下のようなレートで保険料を支払ったとします。

1年目 150円
2年目 160円
3年目 170円
4年目 185円
5年目 200円

この場合、1ドルの平均取得単価は173円です。

マーケットでは1ドル200円ですから、「割安」でドルを買えていたことになります。

逆に「円高」のストーリーも見てみます。

1ドル100円になった場合です。

5年間の推移は以下のようなものです。

1年目 150円
2年目 140円
3年目 130円
4年目 115円
5年目 100円

こちらの平均所得単価は1ドル127円です。

対してマーケットでは100円ですから、随分と割高でドルを買っていることになります。

しかし、これももう少し長い時間軸で見れば変わります。

8年目まで伸ばし「少し円安に振れた」というシミレーションです。

1年目 150円
2年目 140円
3年目 130円
4年目 115円
5年目 100円
6年目 110円
7年目 115円
8年目 120円

この時の取得単価は1ドル122.5円

マーケットの120円よりは高いですが、それでも5年目の時よりは、その差は縮まっていることが分かります。

その理由は5年目以降、安い価格でドルを買ったことで、全体の単価が下がったことです。

以上、ここまで見てきたように、ドルコスト平均法は時間を長くかければかけるほどドルの価値を「平均化」し、市場価格に近付ける性質を持っています。

そのため、やや乱暴に言えば

「為替なんてあまり考えない方が良い。どうせ平均化されるか」

というのが20年間保険に携わってきた私の実感でもあります。

但し、ドル建の保険では保険料がドルベースで、それを毎月のレートで日本円に換算して計算するものが多いので、1ドル150円と、1ドル200円では毎月の負担額が異なってきます。

100ドル=15,000円で入ったつもりが、100ドル=20,000円になれば、家計の負担となります。

そのため、加入する時の保険料は「今より円安ドル高が進んでも払える」という程度に設定しておくことが重要です。

以上、本日のコラムでした。

ドル建保険にご興味がある方は

info@mikazuki-navi.jp

までお問合せ下さい。

 

 

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3月 8th, 2024 by