「田舎暮らしはお金がかからない」のウソ・ホント


生活の拠点を地方に移し、自然の中で子供たちをのびのびと育てる。

そんな田舎生活。

憧れている人は多いですが、仕事や子供の教育のことなどを考えると、それらを実現することを簡単なことではありません。

しかし、このコロナ禍により「出社は週1,2でOK」というような体制を整備する企業が増加したことで、

出来なくもないのでは?

というように考える方が増えているようです。

実際、最近そのような相談を数件受けました。

しかし、お話を伺っていると「田舎暮らし」への思い込みがあるようにも感じます。

それが、

「田舎暮らしにはお金がかからない」

ということです。




しかし、これには誤解もあります。

と言うのも、弊社のお客様で既に地方に移住をされた方が何人かおり、そのような「先輩」たちのファイナンシャルプランニング表(一生涯の収支計画)を作ったことがありますが、その結果として

出ていくお金は意外と減らない

という結論になることが多いのです。

普段の生活費については、流石に東京などの都市部より安く済みますが、逆に田舎暮らしならではコストが結構かかるようです。

「田舎暮らし」の下がるコスト、上がるコストをざっと並べてみましょう。

◇ 下がるコスト

住宅費

これは当然下がります。

家賃、月数万円で、

「都会では信じられないくらいの大きい家」

に住めるとのお話もよくお聞きします。

また自治体の移住支援プログラムなどもあり、一定期間「ほぼタダ」で住めるような制度がある場合もあります。

但し、原則、一軒家であるため、それらの修繕費用などが4,5年おきにまとめてかかってきます。それらのコストを軽減するためには、日ごろから多少のメンテナンスは自分でDIYをするくらいのマメさが必要です。

 

教育費(高校まで)

都心部では中学受験を志望し、小学校4年生程度から進学塾などに通うケースが多いですが、地方では私立校より公立校の方がレベルが高いとされます。

塾に通うようなこともありますが、それでも進学先が公立なので、私立校に比べ圧倒的に授業料が安く済みます。




食費

これも皆さん誤解しがちな項目です。

食費は下がると言えば下がりますが、スーパーで並ぶものの値段がそこまで安いわけではありませんし、中には「都心より高い」ような物もあるようです。

但し、都心部にいる頃より、外食する機会(余計な付き合い)が減るので、その分はかなりのコストダウンにつながります。

また、移住者を扱ったテレビなどで、

「地元の友達から野菜とか色々貰えるので食費がかからない」

などという描写を見かけますが、実際には自分から進んで地域のコミュニティに入っていき、そのような生産者さんと「知り合い」になる努力が必要で、交流も努力もせずに、いきなり知らない人が何かをくれることはありません。

なお、地方には確かに人柄が良い方が多いそうですが、それでも変わった方もいるので、そのような人々と上手くやっていくコミュニケーション力が重要、ということは皆さんが口を揃えます。

注:実際、弊社のお客様でもコミュニケーション力が高い方が多いように感じます。

 

◆ 上がるコスト




自動車

車がないと生活できないので、必須アイテムとなります。

しかも1台だけだと意外と不便で、2台持ちも多い様子。

駐車場代などはかかりませんが、車体本体、保険、車検などの維持費がかかり、また、使用頻度が「都心に住んでいたころの比ではない」ので、車がヘタるのも早いとのこと。

また、寒いエリアでは冬季のタイヤ交換などもあり、

「とにかくお金がかかる・・・・」

という意見が多いです。支出の大きな部分を占めます。

ガス・水道料金

電気代は全国どこでもそれほどの差はありませんが、ガス、水道代金は都心部より確実に高いところが多いです。

地方では都市ガスが整備されていないところも多く、その場合、プロパンガスに頼らざるをえません。

業者間での競争があるところであれば、そこまで高額になりませんが、エリアによっては配給網の関係で「その業者しかいない」というようなところもあり、ほぼ言い値のような価格でガスを購入しないといけないことも。

注:プロパンガスの料金は業者が自由に決めて良い。

そのような時には、都市部の3倍、4倍の料金を払うことも珍しくありません。

特に寒冷地では冬の暖房費が4万、5万になることもあるようです。

そして、水道代。

これは自治体によって千差万別で、財政が厳しく、人口減にあえぐ地域では、ガス同様に都心部の3倍以上というところもあります。

なお、どこの地方も、水道代に関しては今後も上昇傾向が続く見込みで、特に北海道、東北では、自治体一つのカバーエリアが広い上(水道管の距離が長い)、それに対する人口が少ないので、かなり高額になる傾向があります。

そのため、2040年ごろには、一般的な家庭の使用量(20m3/月)で、2万円近い料金になることが予測されている自治体も。




通勤費

フリーで仕事をしているような人なら別ですが、会社員の場合、リモート勤務にかなり理解のある会社でも、月に数回程度は「出社」しないといけません。

新幹線などを使う場合、1回の往復で1万、2万になることもありますが、だいたいの企業で通勤手当の上限(7万円など)が決まっており、たいていはそれをオーバーしてしまうことが多いようです。

それらは純粋な持ち出しとなります。

教育費(大学)

高校までの教育費は安いですが、大学は逆にお金がかかります。

地域に通える大学が少ないため、お子さんが都会に出て、一人暮らしをすることになる可能性が高いからです。

学費にプラスして、ある程度の援助が必要となります。

もちろん、「家賃、生活費くらい自分で何とかしろ!!」というご家庭もありますが、結果アルバイト漬けとなって、勉強が手につかないのもかわいそう。

月5万円程度の仕送りで、4年間の合計は240万円(5万円×12ヶ月×4年)。

これが月10万円なら480万円と「学費以上」の出費となります。
(女の子の場合、10万円程度であることも珍しくない)

これらの費用がかなりの負担となります。

まとめますと「田舎の生活」には以下のような特徴があります。

1 住宅費のマイナス分を、車や光熱費が「食ってしまう」
  しかし、それでも毎月の支出は都心部での生活より少なく済む

2 車や家関連などで「数年に一度」の大きな出費がある

3 高校までの教育費は安く抑えられるが、大学の費用は高額
(自宅からの通学が難しいため)

シミレーションの経験則では、これらのプラスマイナスを計算すると、60歳くらいまでの総コストは「都心に比べて1,2割は減るかなぁ」という感じです。

もちろん自給自足のような生活をするのであれば、コストを大きく抑えることも可能ですが、快適な生活をしながら、高い教育水準を求める場合、それなりのお金が必要ということです。

このようなことから地方への移住に関しては、過度に「生活費が軽減できる」とは思わず、

「都心部より『ちょっと安いお金』で豊かな生活が送れる」

という程度で考えておく方が良いかもしれません。

地方への移住を検討されている方で、具体的なシミレーションなどが必要な方はいつでもご連絡下さい。

本日のコラムでした。




 

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8月 27th, 2020 by