医師・歯科医師賠償責任保険
聞きなれない保険ですが、医師や歯科医師は必ず入っている保険です。
医療に関する事故で患者さんに何かしらの損害を与えてしまった場合、その賠償額を保障してくれます。
本日は、この保険に関するウソ、ホントについて解説したいと思います。
医療ミスにより患者さんに後遺症が残ってしまった。賠償金額1億円
こんな場面で保険が役に立つ、と思っている先生が多いですが、実際の支払事例は、
・患者のご家族が病院の廊下(清掃後で濡れていた)で転倒し、骨折
・入院中の患者が階段から転倒し、後遺障害
・配膳用のカートが患者と激突し、怪我を負った
など、医療行為そのものによるものではなく病院の施設が原因のものが圧倒的に多いです。
医療の現場では、患者さんが「医療ミスだ!!」と言ってくる場面は珍しくありませんが、本当にそうなのか?ということは極めて立証が難しく、
セオリー通りの治療だったが患者さんの個別の事情(体調や薬との相性)によるもの
であることが多いのです。
そもそもが医療に絶対はなく、医師は神ではありません。
1000人中、999人はこの治療法で上手く行く
というようなものでも、稀に運悪く1人に異常が起こることもあります。
先生「患者さんから訴えられたから、対応して欲しい」
保険「何かミスがあったんですか?」
先生「いや、一般的な治療で、治療後にこういうこともある、と説明してあったんだけど、患者さんが感情的になってしまってね。。。。」
このようなケースは医療ミスではなく、あくまで「治療後の予後が良くない」ということですから、そもそも賠償責任がありません。
そして賠償責任がない場合には賠償責任保険は対象外です。
この「賠償責任があるのか?ないのか?」という点は非常に重要で、保険会社側でも過去の判例や、医療訴訟専門の弁護士の見解を考慮し決定します。
場合によっては先生ご自身が
「私の医療ミスってことで良いから支払ってよ」
と言っても、保険会社側が
「先生は間違ってません。責任はありませんよ」
と妙な話になることもあるのです。
賠償責任保険が患者さんからのクレームに何でもかんでも対応できるわけではない、ということは覚えておいた方が良いでしょう。
次に重要なポイントはいざ賠償責任が発生した時に、誰が交渉するのか?ということです。
多くの先生が保険会社が交渉してくれると思っていますが、これは間違いです。
あくまで交渉するのは先生ご本人であって、保険会社は関与しません。
自動車保険であれば保険会社が事後の交渉を行いますが、賠償保険は違います。(と言うより、基本的には自動車保険「だけ」が保険会社が交渉を行ってくれる保険です。)
しかし、多くの場合、先生は交渉には不慣れで、かつ通常のお仕事もあるので、ご自身で行うことは難しいのが現状です。
ここでは弁護士が重要な役割をはたします。
顧問弁護士や医療訴訟に強い弁護士に任せることで、ご自身は矢面には立たない、というのが一般的です。
そして、これらの弁護士費用は賠償保険の支払対象ですから、保険会社が負担してくれます。(賠償責任がある場合に限る)
このようなお話をしますと多くの先生が
「トラブッたら何でもかんでも解決してくれると思ってたのに。。。。。」
と残念がります。
ご自身の責任で最悪の事故を起こしてしまった場合に賠償責任が役に立つことは明白ですが、実際には賠償責任保険だけでは解決出来ないトラブルが多いのが現状です。
では、このようなトラブルを避けるためにはどのようなことを実施すれば良いのでしょうか?
多くのクリニックの先生からお伺いしたお話を下記にまとめます。
1 予約を守る
予約制のクリニックで、予約をせずに「なるべく早く診て欲しい」という飛び込みの患者さんが、後々トラブルになるケースが多い。と聞きます。
予約が空いているなら診てあげたい。というの人情ですが「予約なし」の人には注意して対応するべきかもしれません。
2 要注意患者用のシフトを敷く
異様に怒りっぽい人、一般レベルを超えて不潔な人、スタッフとのコミュニケーションに問題がある人。このような方が来院した時には、すぐに責任者に一報を入れ、慎重に対応する専用シフトを敷いているクリニックもあります。
説明をいつもより丁寧に行う。1人のスタッフが専用で付き添う。など、個別の対応を行っています。
また歯科クリニックの場合、数十万、数百万円の治療(自由診療)を大した質問もせずに「それ、やって下さい。」と安易に言う患者さんにも要注意。という先生は多いです。
金払いが良い、というのはありがたいことですが、逆にトラブルになる可能性もあるわけです。
「一度考えてからの方が良いですよ」とあえて間を置くようにする、など独自のルールを設けている場合もあります。
3 直感を信じる
単純なことですが、意外と大事です。
診察にあたる先生はもちろん、受付、看護師さんなど、各分野の方々に「直感を信じてOK」と日頃から言っておくことが重要です。
トラブルになった後に、受付の方が「あの人、おかしいと思ってた。。。」という話はかなり多いです。
受付の方には尊大な態度、先生には妙に低姿勢、というのがクレームを入れてくる患者さんに多く見られるパターンでもあります。(もちろん終始尊大な人も多い)
先生方は忙しいので、受付の方や看護師さんからすると「変な報告をして違ったら嫌だな。。。。」という心理があります。
しかし日頃から
「なんかこの人違和感があるな思ったら遠慮せずに報告して下さい。それはプラスなことです。」
と言っておけば、早めに情報が上がってきて、無用なトラブルを避けることが出来ます。
とは言え、このような施策をしていても、どうしてもトラブルになることもあります。
そして、実際のトラブルが起こってしまった後は私の専門分野です。
このような時、初期対応で先生方にこれだけは守って下さい。とお話していることがあります。それは
熱くならない。安易に謝らない。即答しない。弁護士を通す
ということです。
そもそもが専門家である先生からすればこの手のクレームはムチャクチャなことが多いので、これに論理で応じようとする先生が多いですがこれは間違いです。
特に感情的に熱くなることは厳禁です。
それが目的で、わざと失礼な態度をとる確信犯もいます。
また会話の内容はICレコーダーで録音されている、と考えて下さい。
売り言葉に買い言葉で汚い言葉を使ってしまい、それをネットにでも上げられた最悪です。
まずは、相手の話を聞くことだけに集中し、メモを取る。出来れば相手の許可を得て、こちら側でもICレコーダーで録音する(スマホでも良い)
相手は言質をとりたいので、「どうするんだ?」「謝罪はないのか?」と迫ってきますが、絶対にここで何かを言ってはいけません。謝罪するにしても
「ご気分を害してしまったことに関しては申し訳ない。」
「ただご指摘の件に関しては、現時点では何も言えない。」
を繰り返して下さい。
そして、絶対にその場で解決しようとしないことです。
先生によっては「金額も大したことないし、こちらに責任がないとも言えない。支払って丸く収まるなら」と思う方もいらっしゃいます。また、それで収束するケースがあることも事実です。
しかし、しつこく繰り返し要求されたり、仲間が同じ手口でやってくることもあるので、お勧めは出来ません。
また保険会社と相談せずに示談にした場合、その全額が支払われるとは限りません。
ここでも過去の判例によって、「妥当と認められた金額」が適用されます。
例えば、先生が「50万円で示談にした」と申告しても、過去の判例で20万円程度のものであれば、保険会社からも20万円しか支払われないのです。
このようなこともあるので、初回はあくまで毅然とした態度で「顧問弁護士と相談します。」と言うべきです。
その上で我々のような保険担当者、そして弁護士に相談し、弁護士に交渉を移した方が無難です。
また、知り合いの弁護士がいない場合には、賠償責任保険を引き受けている損害保険会社に相談をして下さい。医療トラブルに強い弁護士を紹介してくれます。
弊社で販売している三井住友海上でも対応してくれますが、他の会社でも同様のサポート体制はあるようです。(賠償保険そのものより、こちらの方が助かった。という意見が実は多い)
さて、本日は医師、歯科医師の賠償責任保険についてお話させて頂きました。
弊社のお客様にはドクターが多いですが、皆さん本当に忙しく、そして勉強熱心です。
良質な医療を提供したい。
そう考えて日々頑張っておられますが、お仕事がお体に関することである以上、100%の結果を約束することは難しく、また専門性が高いが故に患者さんとの、知識差、温度差が生じることは仕方がない部分があります。
そして昨今は患者側の「権利意識」が強いため、医療に関するトラブルが増えています。
みかづきナビでは頑張っている先生方が本業だけに邁進できるよう、保険を販売するだけでなく、様々なサービスをご提供しています。
何かお困りのことがございましたらいつでもご連絡下さい。
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