レンタカーの保険の話。
実は、今から1,2年前のレンタカーの保険の内容が「著しく低下」していた時期があった。
ある地方都市に出張した際、現地の足としてレンタカーを借りたのだが、その保険の内容に思わず二度見してしまった。
「基本補償の内容」
とあったラミネート加工されたA4用紙には、以下の記載が。
対人補償 無制限
対物補償 3,000万円
車両補償 なし
対人は良いとしても、対物の上限は3,000万円まで。
そして電柱にぶつけてしまった、カーブで車を傷付けてしまった、もしくは当て逃げなどで使える車両補償は「なし」
つまり、これらが発生した時には、全額自己負担となるとのこと。
これらをアップグレードするには、補償オプションを契約する必要があり、それでようやく、
対人補償 無制限
対物補償 無制限
車両補償 時価額
となる。
なお、これでも対物と車両には免責5万円が設けられており、万が一の事故の際には、借主がその負担をする。だが、これは通常のことで、今まではこのプランが「一般的」とされていた。
この免責(5万円負担)を無くすための保険が「免責額補償制度」で、CDW(COLLISION DAMAGE WAIVER)と呼ばれている。
また、これとは別に、事故が発生した場合、その修理期間中、その車を貸すこと出来ないため、借り主はその休業補償を負う。
これをNOC(ノンオペレーションチャージ)と呼び、店舗まで自力で帰ってこれる場合は2万円、そうでない場合は5万円を請求されるのだが、こちらも更に保険料を追加することで、その支払いを免れることが出来る。
免責額補償制度(CDW)がだいたい1日1,100円。
ノンオペレーションチャージ(NOC)がだいたい1日500円~800円くらいだろうか。
なお、余談ながら、CDWとNOCに関しては、正確に言うと保険会社が提供している「保険」ではない。
支払う保険金もわずか数万円程度と低リスクなので、各レンタカー会社が自己の責任で引き受けている。
ちなみに、ある大手レンタカー会社の担当者に聞くと「ムチャクチャ儲かる」そうで、実はレンタカー本体より利益率が高いそうだ。
以上、話を整理すると、レンタカーの保険には以下の3つがある。
通常版
対人補償 無制限
対物補償 無制限(免責5万円)
車両補償 時価額(免責5万円)
NOC 2~5万円
誰かの物を壊して(対物)、自分の車も壊れ(車両)、更には自力で店舗まで帰ってこれない場合、5+5+5で最大15万円を負うことになる。
CDW付(1,100円/日)
対人補償 無制限
対物補償 無制限(免責なし)
車両補償 時価額(免責なし)
NOC 2~5万円
事故による自己負担はなし。だが、NOC 2~5万円が必要。
CDW(1,100円/日)+NOC(500~800円/日)
対人補償 無制限
対物補償 無制限(免責なし)
車両補償 時価額(免責なし)
NOC なし
自己負担は一切なし。
つまり、私が当初申し込んでいたものは「通常版をダウングレード」したものらしく、窓口の担当者に聞くと、
ネットのレンタカー比較サイト専用のプラン
とのことだった。
安値競争の結果、削るところがなくなり、補償内容を落としたプランを「開発」したのだろう。
対人は無制限、対物の上限は3,000万円となっているが、確かに対物3,000万円を超えることは「滅多にない」
玉突き事故で、平均単価500万円の車を6台「全損」させないと3,000万円にはいかないし、事故の相手がフェラーリ、マクラーレンなどでも1台だけで3000万円を超えることは稀だろう。
だが、絶対に上限を超えないわけではないし、第一、相手のいない事故、つまり自損事故の場合、車両補償がないので、それは全て自己責任となる。
仮に事故を起こした場合、場合によっては数十から数百万円の負担が発生することになり、この内容では結構危ない。
私は保険のプロなので、そのことが分かるが(当然、通常版までアップグレードした)、一般の方はちゃんと理解出来るのだろうか?
「これ、結構トラブらない?」
レンタカー屋さんの窓口の女性にそう聞くと、一瞬困惑した表情を浮かべていたが、急に声が小さくなり
「うちの支店では幸い大した事故は起きてないんですけど、全国的には色々問題が起こってるみたいです・・・」
とのことだった。
特に若い方などは、「保険?要らない、要らない」などと言い、はなから聞く気もない人も多く、しかも運転技術も未熟なので事故を起こす。結果、多額の請求が発生し、払え!!払えない・・という押し問答に発展するそうだ。
もちろんオプションを付けなかったのは自分。100%自分のせいだ。
だが、本当に「自己責任」だけで済む話だろうか?
安値競争の挙句「保険」という一番大事な部分を削っているレンタカー会社や、それを見逃している比較サイトに責任はないのだろうか?
そう思っていたところ、やはりこの「ダウングレード版」のせいで、様々なトラブルが表面化しているようで、その一部がマスコミで記事などにもなった。
そのせいだろうか。ある時から、このプランが一斉に消え、今では対人、対物無制限、車両補償 時価額が標準となっている。(以前に戻った)
比較サイト側が規制をかけたのかもしれない。
だが、それでも一部でまだ存在するらしい。
特に「その地方だけにしかない」ような小規模のレンタカー会社の場合、レンタル料で大手に対抗するために、コストダウン策として保険の内容をいじっていることもある。
レンタカーを借りる時、もちろん料金も大事だが、もし事故でも起こせば大事。
そんな時の頼みの綱こそ保険であり、その綱が「すぐ切れるようなもの」では本末転倒だろう。
「レンタカー会社なのだから、ちゃんとしてるはずだ」
そう思い込んでいると、痛い目を見ることになるかもしれない。
そうならないためにも、契約の度に補償内容をしっかりと確認して頂きたい。
本日のコラムでした。
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