謝ったら死んじゃう病なの?黒田バズーカ砲の功罪


「デフレではなくなった」

黒田日銀総裁の退任会見での弁。

何とも上手い表現だ。

たしかに現在、円安と資源高によって、日本経済は今まで経験したことのないインフレに見舞われており、その点では「デフレではない」

だが、本来目指したはずの

経済成長、給与上昇を伴う物価上昇率2%

という崇高な目標は達成出来ておらず、つまり10年間続いた「異次元の金融緩和(黒田バズーカ)」はどう見ても失敗だった。

たまたま任期ギリギリで神風的(でも多くの国民のとっては不幸な)な「インフレ」が発生しているだけで、それがなければ今でもデフレが続いていただろう。

このインフレが実は相当厄介で、実態としては

せっせと貯めた金を海外に巻き上げられている

という感じである。

10年間続いた異次元緩和で企業の内部留保は

2010年 300兆円 → 2021年500兆円(+200兆円)

家計の平均貯蓄額も1世帯あたり

2012年 1,658万円 → 2021年1,880万円(+222万円)

日本には約5340万の「世帯」があり、その平均が「222万円」増えたということは、単純な掛け算で約118兆円増えたことになる。

つまり黒田バズーカは合計318兆円という途方もなく大きな「埋蔵金」を生み出したことになるのだが、現在の円安&資源高によってこれらはどんどん海外に流出している。

結果、毎月2兆円とか3兆円という巨額の貿易赤字を出しているのだが、何故かテレビなどで大きく報道されることはない。

ものすごく乱暴な計算だが、2023年1月の貿易赤字3.4兆円(過去最大)が続けば、1年で41兆円もの赤字となり、7,8年で企業、個人の埋蔵金を使い切り「黒田前」に戻ってしまう。

「せっせとお金を刷って貯めたのに、海外からモノやエネルギーを買うのに全部使っちゃったよ・・・」

ということにもなりかねず、非常に残念な状況だ。

だが一方で、

黒田バズ―カがなければ、日本はもっとひどいことになっていた

という論調もあり、これも確かにそうだろうなとは思う。

その点、功罪両方があったが、退任の会見でも、ご自身の「功」ばかりを強調されていて、「罪」に関しては一切認めない。

この人、謝ったら死んじゃうのかな?

そんな感じだ。

だがあまりに長い間「異次元」の緩和を続け、そして何も出口を示さないままやりっぱなしの、しっぱなしで退場したことに関しては、個人的には失望している。

もちろんこれには、債券運用が主体の生保業界が黒田バズーカにより大打撃を受け、その関係者として苦しんだ自分の個人的なスタンスも影響しているのは言うまでもない。

退任会見も極めて冷ややかな目で見ていた。

奇しくも同日、政府から「緊急事態宣言には感染防止に効果があった」というコメントがなされた。

これも「はあ?」という感じだ。

初回の緊急事態宣言はある程度仕方がなかったとは言え、その後、ちょっと困ると「宣言」を連発し、経済を低迷させたことは今となっては明らかであり、こちらも功罪の「罪」の方が多いように思う。

黒田バズーカ、緊急事態宣言

どちらもかなり際どい「禁じ手」であり、本来ならメリット・デメリットをしっかり検証するべきなのに、どちらも「あれで良かった」と言い切ってしまう愚かさ。

民間企業であれば、成功、失敗を検証し、その経験を生かすというPDCAがあるが、日銀にも国にもそんなものは一切ないらしい。

まあ、謝ったら死んじゃうのだろうから仕方ないか・・・

人の振り見て我が振り直せ。

自身も悪いことは悪いと認め、素直に反省するようにしよう。

それが、黒田元総裁が最後に教えてくれたことである。

本日のコラムでした。

 

 

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4月 8th, 2023 by