山肌剥がして太陽光パネル並べて、そして誰も責任を取らない日本


本ブログでも何度かお話をしているが、弊社は鹿児島に太陽光発電設備を保有している。

と、言っても大規模に整備された中の一区画だけで、当時、懇意にしていた業者から声をかけて頂いたので、半分お付き合いで買ったようなもの。

1kw 44円という固定価格で20年間買い取りが決定していたので、投資としてはなかなか良い。

2,000万円で購入して20年間の収入予想は4500万円程度という感じ。

毎年、保険や整備費用、税金がかかるので、丸々儲かるわけではないが、それでも悪い話ではない。

だが最近、その収益が急激に悪化している。

その理由が「代理制御調整金」

この仕組み自体は相当複雑なのだが、簡単に言えば

電気を捨てるためのコスト

という感じだ。

太陽光は当然ながら太陽が出ている昼間しか発電出来ない。

かつ、各施設がどれだけ発電するかもコントロール出来ない。

そのため、瞬間的にものすごい量の電気が発電され、それが一気に流れると送電網がパンクしてしまい最悪「ブラックアウト」と呼ばれる大規模停電を起こしてしまうのだ。

それを防ぐため、電気を送電網の随所で「制御」、つまり捨てる作業が必要となり、その作業を「代理」でやってもらうためのコストが先の「代理制御調整金」ということになる。

太陽光発電設備は、せっせと電気を作って流すのに、電力会社側でそれを捨てる。

当然、その分は買い取ってもらえず、更にその作業の手間賃まで取られるというもの。

このルール、以前から大規模な発電設備には適用されていたが、今年に入ってから「50kw以下」という弊社が持っているような小規模の発電設備にも適用されるようになった。

実際の数字で表すと、だいたい5月から9月くらいまでは例年、毎月20万円前後の「売電収入」があったが、今年はおおよそ半分になっている。

特に太陽光発電設備が多く設置されている九州地方の「捨てる量」が半端じゃなく、他の電力会社が1割程度のところ、九州電力は3,4割となっているようだ。

なお、このこと自体に恨みを言うつもりはない。

まず「投資」なのだから、途中のトラブルや収益性の悪化は当然起こり得ることで、これは自己責任だ。

正直なところ「20年間買取」と宣言しておきながら、実質的にそれを反故にされたことに多少の怒りもあるが、システム上、送電網に高負荷をかける太陽光の電気を「捨てる」必要があることは理解出来る。

そもそも日本の太陽光は、東日本大震災による原発アレルギーからスタートしており、当時の民主党政権が強引に推し進めたもの。

高単価の買取価格を電力会社に押し付け、対して福島であれだけの原発事故を起こした電力会社も何も言えず、そんな「ひずみ」の中で制度が始まったため、制度開始から10年が経過して、色々な面で「不具合」が出てきているのだろう。

だが素朴にこう思う。

一体、何やってんだよ・・・・

と。

再生エネルギーに舵を切るなら、それはそれで覚悟を決めてやらないといけない。

だが、前述の通り、太陽光、風力などは発電量が不安定であるため、発電した電気を無駄にしないためには大容量の蓄電池設備が必要。

だが、その整備はほとんどされていない。

発電の主軸を「原発に」という勢力の影響があるのかもしれない。

私自身も、実際問題として原発の再稼働は必要だと思う。

で、結局、何も決まらず火力発電に頼り、海外から大量のLNG(液化天然ガス)を購入。

ご存知の通り昨今の円安と戦争でその価格は高騰し、結果、電気料金がバカ高くなっている。

そして、足元では太陽光の電気を捨てる。

もうわけがわからない。

政治家、官僚、電力会社、誰も「10年後」すら予測せずに仕事をしているのだろうか?

10年前、太陽光発電設備を購入した時、一度だけ現地に赴いた。

山肌を開墾し、斜面に太陽光が並ぶ光景を見た時、一抹の後悔があった。

本来、ここには森が広がっていたはずで、それを剥ぎ、パネルを並べることが果たして本当に「エコ」なのか?と。

もちろん、それに「投資」した私が言うのもおこがましいことも重々承知しているが・・・

先に述べたように、太陽光に投資をした人たちは、今後、制御調整金によって収益が悪化する。

中には高額の借金をしている人もいるので、破産する人も出てくるだろう。

そうなると設置された設備はどうなるのだろうか?

恐らく大量の太陽光パネルが放置され、朽ち果てていく。

山の中に、森の中に。

そして誰も責任は取らない。

本日のコラムでした。

 

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9月 9th, 2023 by