改めて知って欲しい地震保険のリアル


悲劇としか言いようがない。

能登半島地震の被害が当初の予想を超えて広がっている。

原因の1つは発生時刻。

元旦の夕刻という普段は離れて暮らす家族が集まる時間帯に起きた地震であり、タイミングが悪かった。

もちろん自然災害には悪意も善意もない。

だからこそ運命としか言いようがないのだが、それでも神様はあまりに残酷だ。

もう1つは直下型であったこと。

地震から数日経ち、専門家による今回の地震の分析情報が伝わってきているが、断層が「ズレる」直下型だったこと、かつ、それは未知の断層だった。

直下型は海溝型に比べ、範囲は狭いものの、その対象地域に甚大な被害をもたらす。

今回も、人家が多いエリアでの直下型であったため、かなり多くの建物が倒壊した。

話は横道に逸れるが、このような地震が発生した際に耳にする「活断層」について触れたい。

日本には「これは活断層です」と認定されている主要活断層というものが114か所存在する。

地震本部 主要活断層

こららは政府 地震調査研究推進本部、通称「地震本部」が公表しているもので、地質学的な調査や、空中から疑似的な地震波を発信してみて、それに対する地層の反応などを観察して決定しているのだが、実際のところ「分かりやすいもの」だけをリストアップしているだけで、これ以外にも未知の活断層が2000ヵ所から、3万ヵ所ほど存在すると言われている。

この数の振れ幅からも分かる通り、その実態はほとんど分かっていない。

不謹慎な例えではあるが、セブンイレブンの店舗が2万店であることを思えば、我が国にはそれ以上の活断層が埋まっている可能性があり、我々はそんな大地に暮らしているのだ。

それらがいつ爆発して、その時、我々はどこにいるのか?

この国に住む以上、このリスクは許容せざるを得ない。

「これは保険業界のミスリードが招いたことなのではないか?」

今回の地震、保険屋の視点から見てそう思うことがあった。

それは石川県の地震保険の加入率の低さ。

石川県の地震保険の世帯加入率は30.2%と、全国平均35.0%より低い。

なお、一部マスコミなどで石川県の地震保険加入率が64.7%と、こちらも全国平均69.4%より低いと報じられているものがあるが、こちらは火災保険への地震保険の「付保率」を指している。

地震保険はそれ単体では提供されておらず、火災保険のオプションとしてしか入ることが出来ないため、そもそも火災保険に入っていることが前提条件となる。

つまり、64.7%は「火災保険に入っている人のうち地震保険に入っている人の割合」であり、先の30.2%は火災保険に入っていない世帯も含め、全世帯の中での地震保険の加入率となる。

後者の方がよりリアルな加入率と言えるが、このことから推測するに、地震で被害を受けた家の10軒のうち3軒しか地震保険に入っていなかった、ということになる。

その一つの要因は「保険料の安さ」ではないか?

地震保険の保険料は地域や建物構造などによって変わるが、石川県などの日本海側は総じて保険料が安い。

逆に南海トラフなどが危惧されている太平洋側は高く、この2つを比較すると3倍以上の保険料の差がある。

保険料が安いのだから「入っておこう」と考える方もいれば、むしろそのことに「発生確率が低いのだろう」と安心感を覚える方もいる。

これらの保険料は地震本部の統計データや、家屋の密集度合などを元に決定しているのだが、冒頭でも述べた通り、活断層の情報などは未知の領域であるため、必ずしも

保険料の安さ=地震が起きない

ということではない。

保険料の安さが、誤った「お墨付き」になってしまっていたのではないか?そうも思う。

そしてもう一つ。

地震時の火災だ。

火災保険で払われると思っている方が多いが、通常の火災保険では対象外となっており、これも地震保険が付いていないと払われない。

今回も朝市で有名な輪島市内で大規模な火災が発生。

地震発生後のパニック状態の時には、道路なども寸断されているため、消防車が現場に駆け付けることが出来ず、地震そのものの倒壊より、火災の被害の方が多かったが、あのようなケースでは火災保険単体ではダメなのだ。

毎回、地震が起こる度に相当数のトラブルが発生しているのだが、このことは意外と知られておらず、損害保険業界側からの周知徹底がなされていないように思う。

 

もちろん地震によってお亡くなりになった方々が大勢いるため、その事実の前では家のことなど「どうでも良い」という意見もあるだろうが、それでも生き残った方々の人生は続いていくし、新しい生活の中において家の再建は大きな課題だ。

その時に地震保険の保険料があるのとないのでは大きな違いだろう。

今回のことを他山の石とせず、私自身、改めて地震保険の重要性を伝えていきたい。

地震によって命を失った方々に心から哀悼の意を表すると共に、大勢の被災者の方々が一刻も早く元の生活に戻れることを祈ってやまない。

本日のコラムでした。

 

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1月 12th, 2024 by