大谷選手の年棒から学ぶ「現在価値」の基本


MLBの大谷選手の巨額契約。

10年 7億ドル 日本円に換算すると約1,000億円となりますが、そのうち97%は「後払い」とのことです。

選手としても規格外ですが、お金への執着のなさも規格外です。

ここで話題になったのが「現在価値」です。

将来受け取る970億円は、今どれほどの価値があるのか?

大谷選手に比べ、外野のなんと下世話なこと。

もちろん私も含めてです。

しかし、「現在価値」という考え方を理解することは、運用の基本である「金利」や「複利」を理解する上でも重要です。

まずは簡単な例を挙げてみます。

ある人から以下のような2つの提案を受けたとします。

今、100万円をあげる。

もし、今受け取らないなら1年後に101万円をあげる。

いかがでしょう。

あなたはどちらを選びますか?

このケースでは、全員が目の前の100万円を選ぶと思います。

しかし、これが110万円だったとしたらどうでしょうか?

それなりの数が「1年後で良い」と答えるかもしれません。

さて、ここで重要なことは、

現在の100万円と、1年後の100万円は同じ価値ではない

ということです。

では、現在の100万円は、1年後の「いくら」と等しいのでしょうか。

ある人は「103万円」と答えるかもしれませんし、ある人は「120万円」とおっしゃるかもしれません。

こればかりはその人の感覚であるため絶対的な正解はないのですが、金融やFP(ファイナンシャルプランンニグ)の世界では一応「公式ルール」があります。

それはそのタイミングでの「市場金利を使って計算する」ということです。

市場金利とは、その国で発行されている国債(10年もの国債)の利回りイコールで、例えば現在(2023年12月)の日本国債の利回りは0.6%前後です。

今100万円を受け取り、そのお金で国債を買った場合、1年後には100万6,000円になります。

国債というのは最も安全な投資方法であり、ほぼノーリスク。

つまり、100万円を元手に1年で100万6,000円にすることは「誰でも」できることと言えます。

このことから「今」の100万円は、1年後の100万6,000円と「価値が等しい」と言えるわけです。

今の100万円 = 1年後の100万6,000円(100.6%)

では別の質問です。

1年後の100万円は現在いくらの価値があるのでしょうか?

これを求めるには、100万円を1.006で割ればよいのです。

その結果は99万4,035円です。

99万4,035円を0.6%で運用すれば、1年後に100万円になるからです。

なお、これらの計算は年数が長くなった場合には、複利で計算することが一般的です。

そのため、期間が長くなればなるほど、現在価値は下がっていきます。

以上のことから「現在価値の算出」には金利と時間が関係していることがお分かり頂けたと思います。

ちなみに、この「現在価値」という考え方ですが、日本人の中でも60代以上の方々はとてもよく理解されていますが、それ以下の世代はほとんど分かっていない、というより「ピンと来ない」という方がほとんどです。

その理由はデフレ。

長らく低金利が続き、物価が上がらないこの国では、実質的な貨幣価値がほぼ固定(物によっては下落)されていたため、若い世代では

今の100万円は10年後も100万円の価値がある

というのが実感なのでしょう。

逆にバブルを経験した方は「毎年物価が上がる」という世の中で青春を過ごしてきたので、肌感覚で現在価値や将来価値を理解しています。

つまり「お金は使わないと腐る(目減りする)」ということを知っているのかもしれません。

ちなみに現在のアメリカ。

空前のインフレを抑えようと、金利を上げ続けた結果(利上げ)米国債の利回りは4%前後で推移しています。

これは過去10年を見てもかなり高い水準です。

そのため、大谷選手の年棒の「現在価値」を算出する記事では、どれも4%を基準に計算をしているようで、それらのシミレーションによると、1,000億円の現在価値は約560億円となるそうです。

もちろんご本人はそんなこと微塵も気にしていないでしょうが、我々はそうもいきません。

日本でもジワジワとインフレが進行しており、お金の価値は確実に「目減り」しています。

自分の資産の価値を保つためにも、現在価値と将来価値くらいは理解し、「自分は〇%の運用を目指す!!」と運用方針を決めらる程度の金融リテラシーは持ちたいものですね。

本日のコラムでした。

 

 

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12月 22nd, 2023 by