父は認知症 悟りの境地はウンコ臭とともに。。。。


「ボケてる人は幸せだよ。」

在宅医療を専門として、何百人という認知症患者を看取ってきたあるドクターから聞いた話。

私には85歳になる父がおり、10年前から認知症を患っている。

自分で事業を営んでいた昭和一桁生まれの父はとにかく気が短く、花火自身がライター持って歩いているような人だった。

小さい頃からもの凄い恐い親父で、子供に手が出るなんて当たり前。

父のストロングスタイルは家族に対してだけではなく、レストランで店員の態度が悪かったらキレ、満員電車で肩がぶつかってはキレ。社会全般にもその鋭い牙を向けていた。

そんな男がボケる。

当初は、

「あのオヤジが。。。。。」

とショックを受けるが、2,3年も経てばボケてる状態が普通になる。

「うちの父、若い頃は夜の街でブイブイ言わせていましたが、今は紙おむつでウンコブリブリしています。」

こんな冗談を言っても家族間では笑いになるが、他人に言うと

笑っていいものか、悪いものか。。。

という微妙な反応が返ってきて、ボケという問題がいかにセンシティブなことなのか分かる。

ボケると子供に戻る。と言われる。

好きなものしか食べない。

食べ物をほおばる。

同じことを何度も言う。

うちの3歳の娘とほぼ同じ行動パターンで、最近では娘の方がやや上回っている感がある。

娘の成長曲線と父の退化曲線。その二つが交わり、そして離れていく。

そんな父を見て、私は率直に思う。

俺なら死にたい。と

こんな醜態さらして生きるのは、昔の在りし日の父なら「まっぴらゴメンだね!!殺してくれ!!」と言うだろうし、私自身も将来こうなるのは絶対いやだ。

娘の子供。つまり自分にとっては孫にあたる人物の成長曲線と交わる前には死んでしまいたい。

それが男のプライドだと思う。



そんな話をある在宅医療の先生にしたところ、冒頭のことを言われた。

「周りの家族は大変だけど、本人は幸せだよ。全てから解き放たれるんだから。」

これがそこらへんの訳知り顔の奴に言われたのであれば、「貴様に何が分かる!!」と父から受け継いだ一子相伝の恫喝を見せつけてやるところだが、数百人の認知症患者を見てきた人に言われると「それも一理あるのかも。。。」と思わざるおえない。

そう思えば、確かに父は幸せそうだ。

マロンパンという意味不明な菓子パンをこよなく愛し、毎日食べる。

時にはマロンパン愛が強過ぎてコンビニで万引きしてしまい、母が謝りに行くという大変困った面もあるが、それも周りが大変なだけで、マロンパンをゲットした父本人は幸せそうだ。

「ご飯何時?ご飯何時?」

と3分おきに聞き、メトロノームを聞き続けるような不快感を周囲にもたらすが、「6時だよ!!」と答えれば、それはそれで満足そうにうなづく。

そして待ち続けたご飯が出てくれば、とても美味しそうにほおばっている。

「そうか、オヤジは幸せなのか。。。。」

お金や人からの評価。プライド。そして自身の生死。それらから開放された状態を「悟り」と言うなら、まさに父こそ悟りを開いた状態。まさに我が家のブッタである。

まだ何も背負っていない3歳の娘と同じく、全ての荷物をおろした父も日々幸せなのかもしれない。

そう思えばボケも悪いものではないような気がする。

が、我が家のブッタはウンコブリブリで少々臭い。

悟りはウンコ臭と共に。である。

しかし、どんな解釈をしても私はボケる前に死にたい。ブッタになる前に仏になりたい。

ウンコを巻き散らかして、この世でそこまでの修行はしたくない。と思う。

これもまた本音である。

 

注:文章中で「ボケる」という言葉を用いております。人によっては差別的な印象をうけるかもしれませんが、身内に認知症の患者がいる者としての日頃の率直な感想をダイレクトにつづりたく、あえてそのような表現を使っております。ご理解の程宜しくお願い致します。



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7月 22nd, 2016 by