下請けにIT保険は必要ない、は本当か?


知り合いのITベンダーの経営者から、

「IT賠償保険って入った方が良いの?」

というようなご相談を頂くことがあります。

当然ながら、保険料が負担出来るのであれば加入しておいた方がベターなのですが、あいにくIT賠償保険の保険料はそれほど安くはありません。

そのため、加入をためらっている経営者が多いように感じます。

結局のところ「本当に必要か?実際に役に立つのか?」という点で納得感がないのでしょう。



なお「入らない」理由はおおむね以下の3つに集約されます。

1 自社が事業者ではない(下請け的な立場)

2 顧客との関係性

3 契約書の賠償上限要項

1については、自社自身がサービスやソフトウェアを提供している(事業者)のではなく、あくまで、顧客からの依頼でそのシステムの一部を開発や運用を請け負っているだけで(理由1)

仮に個人情報漏洩などの事故が発生しても、賠償責任が発生するのは事業を行っている顧客であり、自分たちは関係ない、という考えです。

また、仮にその事故の一因が自社にあったとしても、顧客とは長年の信頼関係があり、賠償という話にまではならないだろう、という思惑(理由2)

更には請負契約書などで、多くの場合「賠償する場合は請負金額まで」というような「上限」を設けています。(理由3)

そのため、仮にトラブルが発生しても、社長が謝れば済むことが多いし、それでも駄目なら請負金額を返却すれば良い、と考えておられるようです。

実際のところ、過去のトラブル例などをお聞きしても、ほとんが「謝罪+次回の仕事を多少ディスカウント」で済んでいることが多く、賠償請求までされることには

「ピンと来ない」

という方が多いのかもしれません。

私も保険の世界に来る前はIT業界で働いていたので、これらの「やらない理由」に関しては、納得出来る部分があります。

ITと言っても、現場は意外と泥臭く、ある程度のトラブルであれば何となく「頭を下げてシャンシャン」で済んでしまうことが多いからです。



では「やっぱりIT賠償保険は必要ないのか?」と言うと、それも違います。

IT賠償保険は「謝って済まないレベル」のトラブルの時に力を発揮するからです。

過去に発生しなかったからと言って、今後も発生しないわけではありません。

些細なミスで、大規模な顧客情報流出が発生したり、あまり考えたくはないですが自社の社員が「悪意」を持って顧客の情報を盗むこともあります。

そのような時、エンドユーザーに対して一義的には事業者が責任を取りますが、その裏では必ず下請け業者にも賠償を求めてきます。

下請けだからと言って責任がない、というのは甘い考えです。

また、トラブルの規模が大きくなると、現場だけの話ではなくなり、顧客側も法務部などが出てきて、今までの人間関係は一切通用しなくなります。

実際に大きなトラブルを経験した経営者のお話を聞いたことがありますが、

「ITのことを一切知らない法務部の社員から、杓子定規に責任論をまくしたてられて、ほとほと参った。」

と言っていました。

このような場面で、今まで付き合いのあるシステム部の人が庇ってくれるのか、と言えばそんなこともなく、あちらも会社員。追い込まれれば自己の保身が大事ということでしょう。

なお、このような時にも前述の「賠償は請負金額まで」という条項は有効ではありますが、ここまで関係がこじれては、この顧客から今後の仕事が発注されることはありません。

請負代金を返金するだけではなく、今後の仕事も来ない。

自社の売上に占める割合が小さい顧客であればまだ良いですが、その割合が大きい「重要顧客」の場合にはかなりのダメージを負ってしまいます。

このような時、保険会社が賠償金を肩代わりしてくれるのは大きいでしょう。



また、意外と見落とされがちなのが「訴訟費用」です。

このような賠償請求の裁判では「相手にカマすため」に、かなりふっかけた金額を要求することが多く、ウン億円という請求をしてくることがあります。

もちろん「請負金額まで」という条項があるので、大抵の場合、その範囲で決着するのですが、いくら請求するのかは相手の自由。半分は嫌がらせです。

そして、この請求金額と実際の賠償金額の「差額」に罠があります。

と言うのも弁護士の報酬は、

「請求金額から、いくら安くしたか?」

ということで決まることが多いからです。

例えば、請負金額が5,000万円、請求金額が3億円。

裁判の結果、完全にこちら側にも否があり「請負金額上限範囲の3,000万円を払う」となったとします。

そうなると、自社側の弁護士は「3億円を3,000万円に値切った」ということが成績となり、その差額の2億7,000万円の数%が弁護士報酬となります。

仮に10%だとすると2,700万円。

支払い合計は3,000+2,700で5,700万円。

「これなら、初めからバンザイして5,000万円全額返金した方が安く済んだ」

という、何ともわけの分からない状況となるわけです。

私はこれを弁護士業界の「マッチポンプ」と呼んでいますが、実際に似たような事例は沢山あります。

このようなケースでIT賠償保険に加入していれば、賠償金の5,000万円はもちろん、訴訟に関する費用も全額負担してくれます。

注:ただし保険会社の規定が適用されるので、2,700万円ではありません。これは保険会社と弁護士が事前に協議し、報酬を決定します。

以上述べてきたようにIT賠償保険は「頻繁に出番のある」ようなものではありませんが「超ド級のトラブル」の時に会社を守ってくれるのです。

ご興味ございます方は、以下のフォームからお問い合わせ下さい。

IT業界に精通した弊社が、業務内容を精査した上で、無理なく負担できるプランをご提案させて頂きます。

 

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1月 16th, 2021 by