保険業界のセールスマンの「優秀さ」を表すものに「MDRT」というものがある。
正式名称、ミリオン・ダラー・ラウンド・テーブル。
1927年、アメリカで全米生命保険外務員協会の副会長であったポール・クラークの呼びかけで始まったもので、年間成績100万ドル以上のセールスマンだけが加入出来るという組織。
英語を直訳すれば「100万ドル以上の人が囲むテーブル」ということで、何とも金満な名前である。
ちなみにこの「年間成績100万ドル以上」という基準について、以前から疑問に感じていた。
イメージで言えば「報酬100万ドル」だが、100万ドルはおおよそ1億円。
現代であればそれくらいの報酬を得る保険セールスはいるが、この会が発足したのは1927年(昭和2年)の話である。
1927年のアメリカのGDP(国内総生産)が1000億ドル(10兆円)で、現在のそれが20兆ドル(2000兆円)。単純に200倍の違いがある。
GDPと物価が直接リンクするわけではないだろうが、それでも貨幣価値を考えれば、当時の100万ドルは現代で言えば1億ドル~2億ドル(100億円~200億円)程度と推測され、保険のセールスの報酬としてあり得ない。
そのため、おそらくは「保険金」換算ではないだろうか?と思っている。
保険の場合、僅か数千円の「保険料」でも数千万円の「保険金」となることも多いので、仮に当時の100万ドル(1億円)が今の1億ドル(100億円)だとしても、優秀な営業マンであれば1年でそれくらいの成績を出す人もいたかもしれない(それでも相当なものだが・・・)
なお、このあたりはMDRTの関係者に聞いても明快な回答を得たことがなく、
「何にせよ当時のトッププレイヤーってことだろ?」
とはぐらかされている。
このあたり、保険セールスの集団だけあって適当である。
このMDRTが全世界に広がり、現代では「保険セールスのトップ組織」として君臨しているのだが、日本の場合、
・保険料収入
・手数料
・年収
などで基準があり、どれか一つでもクリアすれば入会資格を得ることが出来る。
毎年基準が変わるのだが、何となく年収1,500万円以上くらいになると、MDRTに入れるという感じ。
そういう意味では全くもって「ミリオン・ダラー」の集まりではなく、何ともいい加減なものだが、会員数はおおよそ6,000人前後となっており、保険の営業マンは国内に約100万人いることを考えると、登録者数はわずか0.6%に過ぎない。
そういう意味では狭き門ではある。
ちなみに私の前職の保険会社は、このMDRT活動にかなり力を入れており、私が入社した当時、
「MDRTにあらずは人にあらず」
というような風潮だった(今は違うらしい)
その会社では入社1年目、2年目は「研修中」という扱いで、給与の上限が決まっているため仕組み上、MDRTに入会することはかなり難しい。
そのため「3年目でMDRT入会」が一つのステータスとなっている。
ちなみに、私も3年目でギリギリ入会。
入会すると名刺に「MDRT資格保有者」という文字と、MDRTのロゴが印刷できる。
お客様などでごく稀にそのロゴに気づいてくれる方もいて、
「えっ?MDRT会員なんですか?優秀なんですねぇ」
などと褒めてくれるので鼻が高く、このあたり自尊心の高い保険営業マンのプライドを上手くくすぐっている。
その後、「絶不調のある年」を除き、毎年入会していたので、多分今までに7回くらい登録しているはずだ。
なお、10回入会すると終身会員(一生涯資格が保証される)になれるのだが、あと3回というところで私は退職し、独立してしまった。
ただし、私のように代理店経営者になっても、今度は「代理店分会」というものが存在し、そちらで入会することも出来る。
そのため、独立後も保険会社から
「MDRT、クリアしてますけど、どうします?」
と連絡を頂くのだが、毎回丁重にお断りしている。
あと3回入会すれば終身会員。
何故、入らないのか?
それは・・・
面倒くさい
からだ。
MDRTに参加すると、勉強会、懇親会などがあり、それが保険業界内での「最先端」の情報交換の場となっている。
そのメリットはわかるのだが、どうもね。ああいうサークル的なものは・・・
根っからの一匹狼である私には馴染まない。
前職の時も、初めの1回、2回は喜んでいたが、「ああ、俺、こういう会、苦手だわ・・・」と気づいてしまってからモチベーション急落。
ある時(確か4回目くらい)、意を決して
「登録しない」
と宣言したことがあるが、支社長や先輩などから、
「登録しなかったら殺す」
と凄まれて、強制的に登録させられた。
また会費も結構高い。
確か年間15万円くらいだったと思うが、年数回の研修会をやるだけのわりには結構な金額である。
「絶対、幹部の飲み代だろ・・・」
と思っていたが、実際、数年前、「資金の利用が不透明だ」とかそんな理由で内紛を起こし、会が分裂する危機もあった。
と、私はMDRTに対して、こんなスタンスなので起業してからは一度も参加していないし、実際、私と同じような感想を持ち、資格はあるが登録していない、という人はかなり多い。
まあ、何が言いたいのかと言うと、
「基準はクリアしている」
というスカシっ屁のような自慢と、そして
「でも、登録しないぜぇ」
と、強制的に参加させられた昔の恨みを晴らしたいだけの、本日のコラムでした。
注:私に合わないだけで、MDRT自体は素晴らしい団体です。
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