キッザニアに感じるどうしようもない違和感 うるさいおっさんの独り言


子供が様々な職業を体験できるキッザニア。

全てが子供サイズに縮小された街の中で、様々な仕事をし、独自通貨「キッゾ」を得る。

そして、稼いだキッゾは街の中にあるデパートでの買い物や、体験教室的なものの利用料として使用することが出来るので、その体験を通じ、子供たちは「仕事」、「通貨」、「経済」を学ぶ、というコンセプトだ。

我が家でも、3年前に行ったことがあるのだが、何というか・・・上手く言えないのだが、強烈な「違和感」を感じて、もう一度行こうとは思わなった。

が、先日、ひょんなことから無料招待券を頂き「タダなら行くか」と、二人の子供を連れて再訪問。

子供たちのテンションは最高潮だったのだが、私には別の目的がある。

前回感じた「違和感」

その正体を突き止めたい。

「このオッサン、うるせーこと言ってるな・・・」

既にそんな声も聞こえてくるが、まあ、良い。

キッザニアの違和感、それを通じ「仕事とはなんぞや?」そんな本質が見えてくるかもしれない。しばしお付き合い頂きたい。



日曜15:50。長い列を並び、ようやくキッザニアの入場ゲートをくぐる。

事前のネットの情報によると、

・森永のハイチュウ作り

・ピザーラのピザ作り

が1、2の人気を誇る「仕事」だそうで、開園してすぐに予約で埋まってしまうそうだ。

特にハイチュウに関しては「出来たてホカホカの温かい状態」で食べられるのはここだけで、普段からハイチュウをこよなく愛す子供たちも「是非やりたい」と言う。

親子で小走りしながら森永のお菓子工場の前まで行くと、既に行列していたが、何とか20時過ぎからの最終組の予約をゲット。

しかし、時間はまだ16時なので、ハイチュウが始まる20時までは別の仕事をしなくてはいけない。

娘と妻、息子と私の二手に分かれ、新たな職を探すことになった。

街中をブラブラしながらたどり着いたのが朝日新聞。

報道カメラマンを募集していた。

「朝日か。。。」

多少、複雑な思いはあったものの、息子は乗り気。

小ぶりに作られた子供用カメラ(このあたりの芸の細かさについてはキッザニアは凄い)を手に街を取材し、新聞記事を作成。

その後も、パイロット(ANA)、日本の良さを英語でPRする動画に出演するタレント(ECC:何故か蕎麦職人の格好)、マジシャン(キッザニア提供)、鉄道作業員(東京メトロ)と、職を転々とした。

そして、最後のお菓子工場にて、念願のハイチュウを作り終了。

なお、話題の「出来たてハイチュウ」

父も一粒もらって食べてみたが、何のことはない。

単に生暖かいだけで、市販のものを「電子レンジ10秒」で同じものが出来るだろう。

しかし、子供たちは大満足で、大変楽しい一日だったようだ。

コンテンツとしてのキッザニアは極めて完成度が高い。

 

で、違和感。

前回、今回と2回訪問し、その正体は朧げに見えた。

一言で言えば、極度に仕事を美化し過ぎた虚構に「悪酔い」するという感じ。

本当の仕事には、苦労、苦痛が付きもので、その点、原則的にはキツくてつまらないものだ。

だが、ごくごく稀に、困難な仕事を成し遂げたり、誰かに感謝されたり、そんな瞬間、仕事の楽しさ、そして喜びを感じることがある。

それは長い長い坂道を登ったすえに見ることが出来る絶景のようなもの。

キッザニアの「仕事」はそれらの苦労、苦痛を全て省略し「絶景」だけを見せてくれる。

まるで上澄みのように。

実社会には、作ったハイチュウをお土産として持たせ、更に給与を支払ってくれる「お菓子工場」は存在しない。

学生自体、某社のお菓子工場で日雇い労働をしたことがあるが、私に割り当てられた仕事はベルトコンベアをオーブンで囲ったような設備の隙間に立ち、焼き上がってくるクッキーの中から、形の悪い不良品を長い棒で取り除くというものだった。

灼熱の中、ひたすらクッキーを眺める時間の長さ。

しかも製造過程が優秀なのか、不良品はほとんどない。が、ないわけでもない。

本当にたまにくる。そしてそれを見逃すと、次のチェックポイントに立つ先輩バイトにどやされる。

途中1時間の休憩をはさみ8時間。日給7500円。

キツかった。金を稼ぐ大変さを学んだ。

しかし、「この国」のお菓子工場では子供たちにハイチュウを作らせ、それを配り、更には「仕事」だと言ってギャラを払う。

こんなもん仕事じゃない。

だが所詮は金を払って体験するアトラクション。

楽しいだけで良い。


世の中には様々な仕事があることを知り、コスプレに身を包んで「ごっこ遊び」に熱中する。

それだけで良い。

だからこそキッザニアを批判するつもりは一切ない。

コンテンツビジネスとして、極めて良く出来ているし、その世界観の作り込みの緻密さには毎回、感心する。

だけどなんだろうか・・・

これをもって「仕事を学ぶ!!」という施設側のメッセージに乗れないと言うか・・・

ディズニーランドは良いのだ。完全な夢だから。

だがキッザニアには夢の街に巧妙な現実が、しかも誤った現実が入り込む。

各スポンサー企業から派遣されている社員たちは、自分たちの仕事がいかにキツくて辛いかを知っている。

それを知らないふりをし、仕事の上澄みだけを子供たちに教え、それが仕事だと言う。

皆がグルになった虚構の社会と、その社会に踏み入れたことで、強制的にその先棒を担がされる自分。

それこそ違和感の原因だろう。

 

帰り道。

息子に「どの仕事が一番楽しかったか?」と問うた。

ステージの上でマジックを披露した「マジシャン」が最も楽しかったそうだ。

逆に「一番きつかったのは?」という質問には「地下鉄作業員」と。

線路を交換するという仕事で、レールも工具も実際に使われているものを使用する。

傍目から見ても、ボルトとナットを組み立てる地味な作業の繰り返し。

また本物の工具を使うため、指導員の安全管理も結構厳しい。

「あれはキツかった」

息子はそう言っていたが、多分、それが一番「仕事」に近い。

だが、それは言わぬが華。

今知らなくても、いつかは知るだろう。

本日のコラムでした。

 

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3月 17th, 2022 by